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青春ど真ん中〜ラーメン屋さんで逢った高校生の話〜

 今日は、水曜日。会社は、有給休暇を取って休んだ。
朝から運動をして、汗をかきお風呂に入ってお昼は、地元でお気に入りの辛旨系のラーメンを食べに行く。とても良い休日だ。ん?待てよ。以前、現役弁護士で芸人のこたけ正義感さんがネタの中で、「平日とは、休日以外のこと」と法律で定められていると言っていたような言っていなかったような。つまり今日は、水曜日で本来休日では無い。から「とても良い平日」だ。に換えておいた方がいいかなとか思っていたらラーメン屋さんに到着。お店自体は大きくなくカウンターとテーブル合わせて10人座れるぐらい。
 時刻は午後の1時をまわったところ。
 お店の前に自転車が2台停まっている。よく見ると2台とも学校名が入ったステッカーが貼ってある。店内に入ると私の他に男子高校生の2人組が居てラーメンを食べてたのね。なるほど学校が早く終わって食べに来たんだななんてどうでも良いことを思いながら食券機の前に立つ。何にしようかな、と迷うこともなくいつも注文する辛旨のラーメンを注文する。「麺中盛りでお願いします」と言って店員さんに食券を渡す。
ちなみにここのラーメン屋さんには、すごく愛想の良い学生寮の母的な店員さんがいる。アルバイトかパートさんだろうけど、仕事に対する姿勢というか、ホスピタリティがとにかくすごい。お店の中にいる人の食券を預かって、こだわり(野菜の量やにんにくの有無など)を訊くのはもちろんで満席の時に外で待っている人にも声をかけに来てくれる。それを一人でこなすのだから凄いを通り越してなんと表現して良いか。
 話しは逸れたが、食券を渡し、カウンターに腰掛ける。待っている間、さっきの高校生の話し声が耳に入ってくる。
「それだったら浅草じゃね?」
「浅草なら花屋敷あるし、食べ歩きできるし、スカイツリーで全員で写真撮ったら最高じゃん」
何の会話かわからなかったけど、青春ということだけは、わかって何だか心があたたかくなった。ちなみに私の高校時代にそんな青春がなかったことだけはここに報告しておこう。
 私のラーメンももう少しかなと思っていると、寮の母さんが、満面の笑顔でカウンターの上に置いてくれた。
「いただきます」心の中で呟き、まずはスープから。う〜ん何とも言えない絶妙な辛さと旨さのバランス、ただ辛いだけじゃなくて、旨さもしっかり感じる。最高の平日だぁと思いながら今度は、麺をすする。麺は中太麺で辛旨のスープによく絡む。ほんと新宿のキャッチぐらい絡んでくる。うまい〜と一人で思っているとぞろぞろと家族連れと女性の2人組が入店。店内は、満席に近い状態に。良いタイミングで入れたことに嬉しさを覚えながらまた麺をすする。ん。美味しい。
 すると背後から急に大きな声がして、店内に響き渡った
「ごちそうさまでしたー!」
「ごちそうさまでしたー美味しかったです!また来まーす!」
 さっきの男子高校生2人組だった。
男子高校生がお店の扉を閉めると店内がざわついていた。
「いい子たちだねー」
「なんていい子たちなんだろう」
そんな声が聞こえて来た。
私は、「ごちそうさまでしたー」と男子高校生が発した時、目の前の厨房にいた寮母さんの顔を見ていた。私にラーメンを提供して来た時と同じかそれ以上の笑顔で、「ありがとうございましたー」「また来てください!」と言った光景が今もまぶたの裏に浮かぶ。
いつからだろう。高校生だからできるのか?高校生だから恥ずかしさが無いのか?違う、美味しいものを素直に美味しいと言うこと、それを相手に伝えること。伝えないことの方がよっぽど恥ずかしい。勉強ができる。スポーツが得意だ。それはそれで立派なことだけど、それよりの大切なことを高校生が教えてくれた気がした。
 私はこのラーメン屋さんにまた行くだろう。今日はいつも以上に心を込めていうんだ。
「ごちそうさまでした」
 それでは、また!
 

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