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HSPという名の魔法が解けるまで 〜双極性障害の頭の中 26

みなさん、こんにちは。
双極性障害2型(双極症)のフツーの会社員、パピヨンです。

私はかつて、“信仰”とも呼べるほど『HSP』にハマっていた時期がありました。
その頃の話と、魔法が解けた今の考えを記しておこうと思います。


HSPの洗礼

私が初めてHSPという言葉の洗礼を受けたのは6年前に遡ります。
授けたのは当時通い詰めていたヨガの講師の先生です。
私は先生に“精神疾患持ち”であること、音にナーバスな“感覚過敏”であることを事前のヒアリングで伝えていました。

ある日のレッスンの後、自身もHSP且つエンパス(人並みはずれた共感力を持つ人)であると自称する先生から言われたのです。

「パピヨンさん、HSPって知ってますか?」

「し、知らないです…なんですか?それ」と戸惑う私に、

「パピヨンさんは、きっとHSPだと思いますよ」

と、突然の洗礼を授かりました。
そして、かの有名な『繊細さん』の本を渡されたのです。



世界の謎が解けた!

『繊細さん』の本を借りた私は、その日のうちに一気に読破し、悟りを得ました。

“これこそが世界の答えだ!!”

きっと同じ体験をした人はたくさんいるのではないでしょうか?

私の困りごと、生きづらさ、他人には気づいてもらえないことが全て書かれている。
何ということだ!!

“これはみんなに広めなければいけない”

盛大にHSP信仰の洗礼を受けた私は、布教活動を始めてしまうのです。

今思い出すと、かなりイタイ…。
妹にも『繊細さん』の本を買い与え、会社の同僚や友人達に、

「HSPっていうのがあってね!」

ことあるごとに自身がHSPである事を自称し、HSPとは何たるか?を解説して回っていました。



HSPは素晴らしい??

巷にもちらほらHSPを語る人や記事が出始め、いつの間にか『タイプ別HSP』なるものの分類まで出てきました。
あまつさえ、『HSPに向いている職業』や『HSPが他の人より優れている点』まで語られ始めました。

むむむ???

何の職業で働こうが余計なお世話だ。
やりたい事をやればいい。
ましてやHSPが優れているですと??
本当に??
ただ困っているだけで何も変わらないんですが。

世間のHSPブームが加熱するにつれ、だんだんと疑問が湧いていきました。



HSPは医学用語ではない

今思うとものすごく恥ずかしいのですが、私は精神科の主治医に「HSPだって言われたんですけど」と相談してしまいました。

主治医は苦笑いしながら、
「HSPというのは医学用語ではないので。ちゃんと医学的に診断していますし、治療していかないと」と諭されてしまいました。

きっとこの頃、主治医は私以外にもHSPを病気のように語る患者の話をたくさん聞かされていたのでしょう。
日本中の精神科医が悩まされていたかもしれません。

主治医の“HSPは医学用語では無い”という説教が決め手となり、巷の妙なブームも相まって、私にかけられたHSPの魔法は解けたのでした。



HSPは悪だったのか?

魔法は解けましたが、HSPという考え方が悪だったとは思っていません。
いままで漠然としていたものに名前がつき、ホッとさせてくれた効果はあったと思います。

しかし問題なのは、HSPという概念は“安心感は与えてくれるが、何も解決してくれない”という点です。

今でも“あなたはHSPか?”と聞かれたら、確かに分類としては条件を満たしてしまいます。

しかし、私の感覚過敏や強い不安は、あくまで『双極性障害』によるものです。
ある人は『うつ病』かもしれませんし、ある人は『不安障害』かもしれません。
これらは全て治療が異なり投薬も異なります。
それをひとまとめに『HSP』とくくってしまうのは、適切な治療を遠ざけることにもなり大変危険だと思います。

また『HSPは他の人が感じられないような鋭い感覚を持つことで深い感動が得られる』という文脈にもなんだか疑問符を感じます。

感覚過敏や強い不安はそんなにおめでたく、
“よかったね、チャンチャン♪”
となるのでしょうか?
以前記事にも書きましたが、聴覚過敏で私は今でも対処に困り果てています↓↓


HSPについて、精神科医YouTuberの益田裕介医師が素晴らしい動画を出されているので下記に貼っておきます。
私がHSPに対して感じていたモヤモヤとした感情を明確に言語化してくれています。

動画の中で益田医師は、

「不幸は不幸のままだし、劣性なものは劣性なもの。HSPという“物語性”で上手く言いくるめてしまう方が余程残酷だと思う」

と語っています。
時間の無い方は15:10「HSPビジネスの悪」というチャプターまで飛ばして見てみてください。

HSPという魔法の正体がなんだったのか、とても勉強になりました。

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