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2000年11月の沖縄そば屋の日常を切り取りました#2|Field-note

那覇市古島で営業していた沖縄そば屋をフィールドワークした記録です。店舗名は「わらび」です(上の写真は別のそばです)。この調査は当時の沖縄そば研究会で実施したものです。

メニュー及び商品開発(ヒアリング記録)

  • 店の売りはつゆ。おいしいそばを作るには良い素材を使うこと。原価率が高いため、当店の販売価格は少々高めに設定している。料理は手を抜こうと思ったらいくらでも抜けるが、今後も味にこだわった戦略を貫きたい。

  • 当店オリジナルのグルクンそばは、そばの具として魚はなかったため考えたもので、最初はピリ辛味だったが、若い人に比べ年輩者に不人気だったため、現在の甘い味に落ち着いた。中味そばもあっさり味で人気が高い。

  • 開業当初はチキン照焼そばが人気もあったが、コスト高のため生産を中止した。

  • ご主人が南大東島出身であり、島の特産物である大東ずしも販売している。大東島出身者で飲食店を経営している人は多くないため、本島で大東ずしが食べられる店は限られる。

  • 料理に添える小皿のおかずは、その日の材料によって少しずつ具を替えている。

  • 住宅地の中という立地であり、そばだけで商売するのは難しいため、定食など家庭料理もメニューに加え、家族で食事できるようにしている。

  • たまの休日や出先でもほとんどそばを食べ、地域性、店の雰囲気、客層などをチェックし、経営上の参考にしている。

経営の今昔(ヒアリング記録)

  • 1992年創業。開店当初は味が安定しなかったこともあり、客も少なかったが、その後徐々に知名度を増し、オープン後4~5年目に最盛期を迎えた。しかし、不景気の影響で客が大きく減少し、店の売り上げにも影響している。

  • 経営者はもともとは南大東島で旅館業を営んでおり、調理にも携わっていた。八重山出身の奥様が本島から南大東島へ嫁いだ。本島に移転したあとは、しばらく別の仕事をしていたが、30代後半より飲食業を始めようと所有していた建物を改築し、現在の店を始めた。きっかけの一つには年齢的に別分野への転職は難しいと判断したことが挙げられる。

  • 奥様は以前料理学校に通っており、経営者の味付けを批評するなどして味の向上に努めてきた。

  • 「わらび」という店名は、子どもが大きくなるように店も大きく成長して欲しいとの願いを込めた。

  • 店の宣伝には力を入れていないが、これまでにマスコミ取材や情報誌への掲載、ラジオへの出演等があった。しかし、店の評判は口コミで広まったのだと思う。

  • 「九州・沖縄味100選店」(認定機関未確認)と看板に記載されている。

  • 那覇市観光協会に加盟している。協会が年2回発行するミニコミ誌などに店名が掲載されるというメリットがある。会費は年間2万円くらい。

  • 那覇市の飲食業組合に加盟している(年間会費2万3千円)。

  • 麺は自家製麺であり、沖縄生麺協同組合への加盟はない。

  • 小麦粉は沖縄製粉から直接仕入れている。

  • 最近近くで別の店舗が営業を始めたが、営業戦略や集客層が違うため大きな影響はないと考えている。

  • そば屋として実利を挙げるためには、幹線沿い等の立地を確保し、インスタント麺を使用するなど素材の質を落として原価率を下げたり、人件費を削減することで可能だが、本店ではそのような営利追求型の営業はこれから先も行わない。

  • ゴミの減量及びコスト削減を考えて、割り箸は使用せず、塗り箸を使っている。また、環境への配慮から、直接排水するのではなく敷地内に浄化槽を設けており、年1回はメンテナンス・清掃処理している。

  • コスト削減のため、洗剤や調味料などは詰め替え式にしている。

  • 奥様が古典音楽の演奏を行っており、将来的には店内で演奏会を開くことも企画していきたい。

  • これから後継者づくりに取り組まなくてはならない。ハングリー精神がある人を条件としたい。

自家製麺の作り方

  • 小麦粉は中力粉を使い、一日当たり80~100食分(10kg相当)を製麺する。

  • 厨房に設置してある湿度計等で、温度・湿度をチェックし、麺のこね具合やかん水の量を調整している。

  • 開業当初から製麺機(混ぜる・伸ばす・切るの3種類)を導入している(当時価格で約300万円)。

  • 作り方の手順は以下のとおり。

①ミキサーでまぜる:小麦粉(中力粉)と卵とかん水を30分ほど混ぜあわせる。
②のばす:混ぜあわせたかたまりを延ばし機にかけ、巻き取り棒を使って巻き取る。
③ねかせる:巻き取り棒に巻き取った麺生地を冷蔵庫で 1日熟成させる
④切る:1日おいた生地を麺切り機で適当な太さに切る(太さは調整可)。
⑤ゆでる:麺をゆで、経営者考案の湯切り台にゆであがった麺をのせ、扇風機で冷ましながら油をまぶす。

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