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先生に笑顔でいてほしい。/おやこで通う小学校⑬

「走りたい時に走りたい」

4時間目、体育。

「体育、やらない。大っきらい」
例によって、珍獣(兄)は1人だけ体操着に着替えず
むき出しの反抗心を隠そうともない。( ゚д゚)オイ
そんな彼を引きずって、ノコノコと校庭に出た。

この日の授業は【折り返しリレー】。
支援級に在籍する1〜6年生までの面々が、2チームに分かれて
コーンを折り返す形で走り、バトン代わりの輪っかをつなぐ…というものだ。

手持ち無沙汰のため、準備体操に参加していたわたしの足元で
珍獣(兄)は座り込み、次に

寝っ転がった。( ゚д゚)オイ

彼は、友達と目的もなくひたすら走り回るのは大好きだけれど
競走の類が、保育園時代から苦手。

「よーいどんが嫌だ。◯◯は、走りたい時に走りたい」

というのが、言い分だ。

そんんこんなで、参加を渋り続ける珍獣(兄)には

「リレー、嫌かー。
じゃあ先生と2人でやってみよっか!」

と、B先生が声を掛けてくれ
校庭の隅で、珍獣(兄)に付き添ってくれることになった。

B先生ありがとう!
それならわたしは、とりあえず皆のリレーを観戦しようっと・ω・
母が楽しんでいたら、珍獣(兄)も気になって、こっちに来るかもしれないし。

…というのは半分、建前で (°∀° )ニヤリ
実は準備体操の時からずっと、わたしの血は密かに騒いでいた。( º言º)ゴオオォォォォォ
子どもの頃から、徒競走系の種目が好きで
自分が走っても、誰かが走るのを観戦していても、アドレナリンが湧き出てくるタイプ。
だから本当は、息子の言い分を理解しつつも
気持ちには全然共感できずにいた。Ω\ζ°)チーン

本当に、人はいろいろだ。ウン

37歳、代打で激走

授業を取り仕切るA先生の説明が終わり、いよいよリレーがスタート。
よーいどんの合図で、2人がまずコーンを目指して走り出した。

…ところが、相手チームの1年生の女の子は、ルールがよく分からない様子。
やる気を失くすというより、そもそもやる気を出すタイミングもなかったようで
珍獣2号よろしく戦線離脱してしまった。

「仕方ないなあ。どうしようか。◯◯君、2回走ってくれる?
…でも、そもそも6人しかいないし、疲れるか…」

A先生が、困り果てている。

……
………

「先生!!わたし、入りましょうか!!」

つい、ピンチヒッターを申し出てしまった。( ゚д゚)
すると

「え!!いいんですか!?申し訳ないけど、ありがとうございます」

と、A先生。

【保護者が授業でリレーを走る。しかも当の本人は不参加】

という構図が、謎の極み過ぎて
自分から名乗りをあげたものの、わたしはうろたえた。( ゚д゚)マジカヨ
一応、珍獣(兄)にも確認したところ
「1回だけならいいよ」と、上から目線で許可をいただき( ゚д゚)ナニサマ
本当に走ることになった。

ちなみに他の子どもたちの反応は、というと。
戦線に加わるとすぐ、4年生のC君がわたしを第二走者に指名。ピッ
両チーム共に、ごく当たり前のように私を迎え入れてくれたのだった。
いつも珍獣(兄)とセットで教室にいるので、特に違和感もなかったらしい。

欠員続出の末、最強の布陣完成

よーいどん!

第一走者の子から、輪っかをわたしが受け取った時
相手チームの走者は既に走り出していた。
その子と付かず離れずの距離で、激走する37歳!
コーンを回って戻り、最終走者のC君に輪っかを渡した。

あぁ〜やっぱり、走るのって気持ちがいいな!(゚∀゚)
適度に息を切らしながら、気分よく休んでいると

「◯◯くんのお母さん、本気出してよ!負けちゃったじゃん」

と、C君がプリプリしながらわたしに言った。

「え〜。そう見えた?結構、本気で走ったつもりだよ!」

とか何とか、ゴニョゴニョ返しつつ、難しいなあ…と思った。
本音では、思いっきり走って母子登校のストレスを晴らしたいけれど オリャー!!!((((#`Д´)⊃)゚з゚))))・゚・・゚・ブッ
大の大人が本気で走ることで、皆の邪魔をするわけにはいかないし…

と、ここでまさかの事態が発生!!
我がチームの5年生の女の子も、戦線離脱してしまったのだ。( ゚д゚)
走るのが元々好きではなく、それでもがんばって参加していたが、気力が途切れてしまったらしい。

「どうしようか〜、って僕が入るしかないか…」

やむを得ず、A先生が我がチームに加わることに。
【3人中、2人が大人】という、謎の最強布陣がここに完成した。( ゚д゚)
期せずしてマイノリティ感が薄まり、軽く安堵するわたしと
勝利を確信したに違いない、負けん気の強いC君。

そんな2人に、A先生が釘を差した。

「ただし、これだとこっちのチームが速すぎてしまうから、ハンデとして僕は歩きます」

えええぇぇぇぇぇぇΣ(゚Д゚)!!

歩くって!
さすがに、絶対負けるやん!!
もはやリレーじゃないじゃん!

C君とわたし(←便乗)が反発するも、A先生は決して譲らなかった。

その時、わたしの浅知恵センサーが作動。ピピ

「アンカーの先生のハンデが大きいなら、わたしが思いっきり走る大義名分ができるぞ。
…C君のためにも…!ニヤリ」

というわけで迎えた、この日の最終レース。
C君から輪っかを受け取ったわたしは、誰に遠慮することなく全力で疾走。ヘ( ・_・)ノダダダダダ
その結果、何かとてつもなく大切なものを失った気がしたが マチガイナイ
同時に、母子登校に伴うストレスも、いくらか空気中に霧散していったような感覚があった。

が!
一息ついて振り返ると、ストレスが更に吹き飛ぶような、驚くべき光景が繰り広げられていた( ゚д゚)

わたしから輪っかを受け継いだ、A先生が
全力で、
速歩きしてる……!!
いや、もはや走っている!!!!! ヘ( ・_・)ノダダダダダ

「先生、それ走ってるよ!!」との声が子どもたちから飛んでくるも
「これは競歩です!!!」と言い張りながら、ペースを落とすことなく速歩きし続ける先生。
コーンを曲がって、ゴールした。

1着で。(笑)

みんな、大笑いだった。
A先生も、歩いている(走っている)間からずっと笑っていた。

ただ1人、「1回って言ったのに、かか(母)が2回走った」と珍獣(兄)は怒っていた。

いつも一生懸命な先生

その後、給食と5時間目が終わって、珍獣(兄)と帰り支度をしていた時。

「今日はリレーに参加してくださって、ありがとうございました。助かりました」

と、A先生が声を掛けてくれた。
そして

「なんか、すごく楽しかったですよね。
本当は、相手チームの◯◯君も実は負けず嫌いなところがあるから、勝たせてあげるべきだったのかなって思うところもあるんですけど…。まあ、よかったかなって」

と、笑顔で言葉を継いだ。

すかさず「こちらこそ楽しかったです!」とお礼を言い、更に、わたしは日頃思っていることを伝えてみた。

先生にはいつも、なるべく笑っていてほしいということ。
先生が笑っていると、子どもたちもとても嬉しそうだということ。

すると先生は

「あ〜…そうですよね。そういうの、大事ですよね…。
ありがとうございます。
これからも何か思ったことがあったら、是非教えてください」

と、真摯に受け止めてくれた。

A先生はとても真面目な人で、いつも一生懸命だ。
「必死」という言葉の方が、合っているかもしれない。

必死過ぎて、時に叱責が厳し過ぎるように、わたしの目には映ることもある。
それは、支援級の子どもたち1人ひとりが社会に出た時に力を発揮できるように、という願いからなのだということも十分、分かっているのだけど
先生の肩の荷が少しでも下りて、朗らかな笑顔が増えたらなあ…と常々、感じていた。

だから今日のリレーで、満面の笑顔で歩く(走る)先生の姿を見られたことが、本当に嬉しかった。

学校は、子どもたちのための場所だけれど
子どもたちのためにこそ、まず先生たちが幸せでいることが、とても大切だ。
その背中から、子どもたちが学ぶことはきっとたくさんあるはずだ。

そう確信した。

おとなげなく全力疾走して、得られたものは大きかった。(たぶん)

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