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踊らされることなく選び取れるか──『なぜ選ぶたびに後悔するのか』読書感想文

書籍データ

選択肢の過剰時代、どのように振る舞うべきか

公共サービス、医療、美、パートナーの選び方。何もかもオプション過剰時代。選ぶ自由は私たちに幸せをもたらしたのか。消費社会に蔓延する「満たされない心」の所以を、本書は選ぶ心理から紐解いている。

著者は物を選ぶという観点に絞って人間を「マキシマイザー(最大化人間)」「サティスファイサー(満足人間)」の2種に分類する。

人が何かしらの対象を選ぶための観点は無限にある。
その一つ一つに徹底的にこだわり最善の選択をするのが、マキシマイザー。
しかし彼らはその高すぎる基準が必ず満たされると期待しているので、選択の結果が出た後も「もっといい選択があったのではないか」と常に後悔する。

一方で、自分なりの基準を持ち、その基準を満たせば「これでじゅうぶんだ」と自分に言ってやることができるのがサティスファイサー。
彼らは”選んだ後”の満足度がマキシマイザーに比べて高く、したがって選択の連続である人生の満足度も相対的に高いという調査の結果が出たという。

社会が物的に豊かになるにつれて、選択肢は増加する。
しかしそのような状況下では、多彩なオプションを持つ事柄の中から何か一つを選び続けなければならないことに対する心労、(忙しい中で)時間を割かないと得られない人間関係を「選択にかける時間」が奪っているという事実が私たちに常にストレスを与える。
結局、選択や期待値の基準を自分なりの納得度とすり合わせられない場合、豊かさは必ずしも人に幸福をもたらすものではないというのが本書において著者が一番主張したいことだと私は捉えている。

選りすぐる人(Picker)ではなく、選ぶ人(chooser)になれ。

「もっと〇〇なはず」に至る心理を客観的に理解すれば……

選択にあたって、人間がぶちあたる(他人事として見ると)不思議な心理が本書内では紹介されている。

  • 損失回避:同じ金額でも、損は得よりも強烈に感じられる。

  • アンカーリング(基準設定):同じ値段の商品でも、値段設定が高い店と低い店では立ち位置(見え方)が異なる。

  • アベイラビリティ・ヒューリスティック:人間は客観的観測による一般的データより、具体性のある経験則によるデータをより重視する。

  • 快楽順応:どんな経験も時間経過による順応(もしくはさらなる刺激)により、基準点が変化する。

などなど。
挙げられている例は、いちいち「そうだよね……その通りです」とうなずかされるものばかり。

AとBの商品比較をさせる際に、Aを割り増しにみせるか、Bを値下げにみせるか。
最近食料品の値段が上がっているが、「値段据え置き・内容量の減少」とするか、「値段割り増し・内容量そのまま」とするか。
提供側は購入者の心理を把握して、打ち手を決めている。

このような人間の心理を利用した広告やプロモーションが「世の中であたりまえに巧妙に行われている」ということを常に俯瞰してみれば、世間の流言飛語や発信側の美辞麗句躍らされることのなく自分の選択ができるのではないか。



……無理ですね。
お得です! 現品限り! って言われたら買っちゃいます。

理想をいくら思い描いていたとしても、私は俗人だもの。

欲望は際限がないから、それをコントロールすることは本当に難しい!!

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