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アサーティブなコミュニケーションの限界

アサーティブ、アサーションという言葉が現代社会の中にも浸透し、自分の主張や意見を的確に伝えるという姿勢は持たれる人が増えた印象を受けます。

私自身もクライエントから職場の人間関係や家族、夫婦関係相談を受けた際にはアサーションの技法を伝え、自分の気持ちを表現し、気持ちを溜め込まないように促し、関係の修復を図るよう助言をしますが、アサーションが万能ではない事を痛感しています。

アサーションとは

アサーションとは、自分の気持ちや考えを相手に的確に伝え、考えや感情を積極的に共有しコミュニケーションを図る技法の事を指します。またアイメッセージのように「私はこう思う」「私はこうしたい」とあくまでも自分の考えであるというところで終結し、相手から無理やり同意を得ようとしたり、相手の気持ちや行動をコントロールしようとする姿勢はご法度になります。むしろ、自分をコントロールしようとしてくる人から身を守るために、自分の意向や意志は自分なりの言葉で伝え、お互いを尊重するという考えの元にアサーティブなコミュニケーションは成り立ちます。

このようにアサーティブなコミュニケーションは1人で成り立つものではなく、自分と相手といった、双方のやり取りの中で始めて成り立つものになります。

アサーションの落とし穴

ここにアサーションの一つの落とし穴があり、人間関係の中でアイメッセージで自分の気持ちを伝えたが、聞き入れてもらえなかった、受容してくれなかった、という現実にどうしても直面する時があります。

このように自分がアサーティブな態度を取っていても、先方にそのような姿勢が備わっていない場合は多々あり、再び人とのコミュニケーションに葛藤する事もあると思います。

アサーティブな態度で自分の気持ちを表現する事で、自分の意志や考えは確かに相手に伝わりやすくなります。その事で他人もあなたの事を理解しやすくなり、あなたの性格やペース、価値観など理解していき、距離感や親密度が自然と出来上がってきます。何かに我慢したり、遠慮したり、忖度をしていると、他人はあなたの誤魔化している部分しか触れていないため、相手も当然あなたというものの本質を掴めず距離感もズレてしまうものです。

このような事を避けるために、なるべく自分の意志表現をする癖をなるべくつけておくというものがアサーティブな姿勢になりますが、このようなコミュニケーションが通用しない相手が必ず存在します。

またコミュニティに所属していると自分の気持ちをどうしても我慢してしまう時も多々あると思います。

この部分がアサーションの欠点となり、何でもかんでも自分の気持ちを伝えれば良いのかとというと、現実そのような事は非常に難しいと思います。

アサーションの有効活用とコミュニケーションの本質 

それでは、アサーションを欠点を補った正しいコミュニケーションとは一体どのようなものなのでしょうか。

結論からお話をすると、意思疎通が取れない時や、自分の主張を表現できない時は、敢えて何も言わない事です。言葉を変えるとノーリアクションでも良いという事です。

アサーションとは、何でもかんでも自分の気持ちを伝えなさいという事ではなく、自分で伝えるタイミングと伝えたい人を選んで良いという事を覚えておきましょう。

そして、コミュニケーションがうまく取れない人とは無理にコミュニケーションを取る必要はなく、苦痛な人間関係である場合は距離を取っても良いと思います。

要するに、普段から人と関わる時は、なるべく嘘をつかず、無理に取り繕う事もしないで、積極的に自分の気持ちを伝えて、適度な距離感を保ちましょうというのがアサーティブな姿勢で、それが難しい相手とは無理に関わらないで距離を取りましょう。という意味になります。

文章にすると基本的な事で、とても簡単な事なのですが、この姿勢が社会で生活していく中で、気が付かないうちに失われていくという方が非常に多いと思います。これができるのであれば誰も苦労しません。

それではなぜ、このような基本的な姿勢が知らずのうちに失われ、みんな自分を取り繕って生活しているのでしょうか。その要因として自分の本音や感情、気持ちに鈍感になってしまう事が挙げられます。

アサーティブな姿勢の本質というものは、人に自分の気持ちを積極的に伝えて理解してもらうという事ではなく、常に自分の気持ちを自分で理解し、抑圧したり、我慢をして鈍化させる事なく、自分の気持ちに沿った矛盾のない行動を心掛けましょうという事になります。

社会の中では我慢しないといけない場面、人間関係は常にあると思います。その度に自分の気持ちを伝え続けるという事は非常に労力を使う事だと思います。

しかし、自分で自分の気持ちを理解して、なるべく距離を取ったり、断る時があったり、時には付き合ってあげたり、どのような行動を取っても、自分の気持ちを理解している限りは、それは自分の意志で選択した事になります。

この自分の意志で選択するという姿勢が大切になり、この姿勢が自然と身につく事で、人との関係に摩擦や矛盾が生じづらくなり、自分の意志で行動すると、「嫌なのにさせられた、しなければならない」「いつも我慢し続けないといけない」という感覚が薄くなり、同じ行動を取るにしてもストレスの度合いが大幅に削減されます。

このような基本的姿勢や態度、人間関係、環境を作るために、自分の意志や性格を周りに理解してもらうためにアサーションというものがあり。アイメッセージで自分の気持ちを伝えるというものは一つの手段に過ぎないです。

そのため、アサーションについてもコミュニケーションについて視点を当てるのではなく、自分の行動と意思決定に視点をあて、自分のペースを徐々に掴む事を大切にしてほしいと思います。

まとめ

アサーションとは自分の意思や考えをアイメッセージで積極的に伝え、他人に自分の事を理解してもらう事

コミュニケーションを取れない人、受容の姿勢がない人とはアサーティブばコミュニケーションを取らなくても良い。

アサーティブなコミュニケーションは一つの手段に過ぎず、自分の気持ちや感情を自己理解し、そのうえで自分なりの行動、関係を選択していく事が本質である。

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