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コントラクトブリッジの歴史をまとめてみた⑦<現代のブリッジとこれから>

「コントラクトブリッジの歴史をまとめてみた」シリーズの7回目です。前回は、コンピュータブリッジの発達とマインドスポーツとしてのブリッジなど、1990年代を中心としたブリッジ界の動きを概観しました。今回はいよいよ21世紀に突入です。ここ20年ほどのブリッジ界の様子を振り返りたいと思いますー。

(前回までの記事はこちら↓)
①<ブリッジの祖先「ホイスト」〜19世紀ごろまで>
②<ホイストの派生ゲーム〜コントラクトブリッジの誕生>
③<コントラクトブリッジの流行〜エリー・カルバートソンの活躍など>
④<世界選手権大会〜国際組織の設立、「ミスターブリッジ」チャールズ・ゴーレン>
⑤<世界選手権大会の動向〜コンピュータゲームとブリッジ>
⑥<コンピュータの普及とブリッジ、マインドスポーツとしてのブリッジ>

インターネットやスマートフォンで遊べるブリッジ

第5回、第6回の記事でも述べてきたように、1970年代以降「コンピュータ」が普及し、個人でもコンピュータでブリッジが遊べる時代が到来しました。
前回の記事では1990年に「OKBridge」というオンラインブリッジのサービス提供が始まったことをご紹介しましたが、その後、ブリッジ界で最もよく知られるオンラインブリッジのサービスである「Bridge Base Online」(通称:BBO)が2001年にサービスを開始します。それまでのオンラインブリッジは有料のサービスか低品質のサービスしかないような状況でしたが、そんな中でBBOは高品質のオンラインブリッジを無料で提供しました。それにより、多くのユーザーが気軽にオンラインブリッジを楽しめるようになりました。
(ちなみに、開発元のBridge Base Online社はブリッジ界に貢献した人物や団体を表彰する「Hall of fame」を受賞しています。ACBLの「Hall of fame」のページでも紹介されているのでご参照ください。)

1990年代以降、パソコンやインターネットの利用が進むのと同時に、携帯電話も急速に普及していました。初期の携帯電話は通話機能しかありませんでしたが、次第にメールが送れるようになったり、「iモード」に代表されるインターネット接続サービスが始まったりと、電話以外の機能が次々と付与され高機能化しました。
しかし、2007年になるとiPhone、2008年にAndroid端末が登場し、今までの携帯電話とは全く異なる新しいデバイス「スマートフォン」が普及します。スマートフォンの端末からパソコンのようなアプリケーションやインターネット通信を利用できるようになり、パソコンに馴染みのなかった人たちにもオンラインサービスの利用が広まりました。
これに合わせてスマートフォン用のブリッジのゲームアプリも次々と登場します。中でも、当方のnoteでもオススメしているサービスのひとつでもある有名ブリッジアプリ「Funbridge」は元々2003年にパソコンで利用できるサービスとして始まりましたが、2011年にiOSとAndroidに対応したアプリをリリースしました。「Funbridge」は開発元の会社が所在するフランスのみならず、世界中のユーザーに利用される人気アプリとなっています。

ブリッジ人気を取り戻そうとする取り組み

コントラクトブリッジは1925年に登場して以降、いくつかの流行期を経て多くの人々に親しまれていましたが、20世紀も末になる頃にはその人気も衰えはじめました。その原因は娯楽の多様化や生活様式の変化など様々あると思いますが、段々と「(ブリッジブームを知っている)おじいちゃん・おばあちゃんがする遊び」ぐらいのイメージになってしまいました。最近では「コントラクトブリッジ」の名前すら忘れ去られているかもしれません。

しかし近年、そうした状況に危機感を抱いた人たちが行動を起こし始めました。例えば、イギリスでは大学の研究プロジェクト「Bridge: A MindSport for All」(BAMSA)が立ち上がりました。これはマインドスポーツとしてのブリッジや社会におけるブリッジのあり方などについて研究し、現代においてもブリッジを広めようという取り組みです。(以下は公式サイト↓)

また、こんな映像作品も制作されました。2019年にアメリカで公開された「The Kids Table」は、ブリッジを知らない若者たちがブリッジの競技会に挑戦する様子に密着したドキュメンタリーです。日本での視聴手段が今のところ確認できていないのが恐縮ですが、コントラクトブリッジ大国であるアメリカでさえ、このような作品が制作されるほどブリッジ人口が減少しているのです。
(公式サイトはこちら↓)

(予告編動画はこちら↓)

(この他、コントラクトブリッジを取り上げたドキュメンタリー作品を紹介する記事を書いたことがありますので、ご興味ある方は以下もどうぞ↓)

感染症の世界的流行とブリッジ界に与えた影響

こうした状況にさらに追い討ちをかける出来事が起こります。それは新型コロナウイルス「Covid-19」の世界的流行です。2019年の年末から世界中にウイルスが広まり、2020年はブリッジの国際大会が中止になったり、世界各地のブリッジクラブの活動が難しくなったりしました。
コロナの流行によって、感染症対策として飲食店や接客カウンターなどに「アクリル板」が設置されるようになったことは記憶に新しいところですが、これはブリッジ界にも普及しました。例えば、以下は四谷ブリッジセンターがTwitterで発信した画像ですが、このようなアクリル板を設置してプレイヤーの飛沫感染を防ぎながらゲームができるようになっています。

ちなみに、2021年の「世界報道写真コンテスト」では、スウェーデンのブリッジクラブでアクリル板越しにブリッジが行われる様子を写した写真がスポーツ部門で入賞しています。(以下リンクからその写真が見られます↓)

また、過去の記事でもご紹介しましたが、国際大学スポーツ連盟によるスポーツの国際大会「2020 FISU World University Championships」のマインドスポーツ部門はオンライン上で開催されました。(以下はその時のアーカイブ動画↓)

2022年現在ではコロナ以前同様の活動も再び行われるようになってきましたが、感染症の流行はまだ終息しておらず、その影響は影を落としています。

これからのブリッジはどうなるのか…?

すでにブリッジ界ではデジタル技術の活用は進んでいましたが、今後もその発展は続いていきそうです。
オンラインブリッジによる競技会は奇しくもコロナの影響で行われるようになりましたが、対面でのブリッジの競技会でもデジタル技術を活用するアイデアはコロナ以前より検討されていました。以下は2018年にアップされたものですが、European Bridge LeagueのYouTubeチャンネルで公開されている動画です。

動画の通り、対面ではあるもののカードやビディングカードを使わずタブレット端末上でゲームを行います。タブレット端末を利用した対面ブリッジは、カードを手に持つことが難しい、視力が弱くてカードが見づらいなどの困難を抱える方の手助けになることや、プレイヤー同士でカードやビディングカードを共有する必要がないので感染症対策にもなることなどのメリットが考えられます。

また、2022年3月にはフランスのスタートアップ企業が開発したコントラクトブリッジのAI(人工知能)がブリッジの世界チャンピオン8人との勝負に勝利したことが話題になりました。(以下はイギリスの新聞「The Guardian」が報道した記事のリンク↓)

このようにデジタル技術の発展によって様々な形でブリッジをプレイすることができる環境が整ってはきているのですが、それを利用するプレイヤーをどのように増やしていくかは今後の課題と言えるでしょう。

一方で、デジタル技術の利用が当たり前の時代ながら、日本国内では「アナログゲーム」の魅力が見直されています。ここ数年来、国内外のボードゲームやカードゲームの新商品がメディアで取り上げられたり、イベントが開催されたりして話題となっています。また、将棋棋士の活躍や麻雀のプロリーグが注目されるなど、マインドスポーツの観戦を楽しむ人も増えています。こうした波に「ブリッジ」も乗れるといいんですけどね。

というわけで、全7回になりましたが「コントラクトブリッジの歴史」をまとめてみましたー。人と人が集まってトランプカードをすることが娯楽だった時代に大流行したブリッジでしたが、現代においてもその魅力は色褪せてはいません。ブリッジはスマホやパソコンで1人でも遊ぶことができますが、遊び方を覚えたら身近な人にも教えてあげて、みんなで楽しんでもらえたらなぁと思っています。この先の未来にブリッジがどうなっていくのか、今後も注目していきましょうーではー。

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