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遠野に移住した若手農家2人が直面するリアルな課題 #011中村友隆 #012里見一彦

中村友隆
Nakamura Tomotaka
遠野市地域おこし協力隊

プロフィール
岩手県出身。大学卒業後、三菱倉庫株式会社にて国内物流業務に携わる。その後、情報システム部門に異動となり、WMS(倉庫管理システム)の入れ替えなどを担当。2018年に退職し、遠野市に移住。地域おこし協力隊としてBEER EXPERIENCE社での研修を経て、ホップ栽培に携わる。遠野市在住歴2年。

里見一彦
Satomi Kazuhiko
遠野市地域おこし協力隊

プロフィール
滋賀県出身。株式会社王将フードサービスにて餃子の王将王子店と蕨店で14年間勤務。主に調理作業を担当。2018年7月より地域おこし協力隊としてBEER EXPERIENCE株式会社生産部にて、ホップ栽培に携わる。六角牛圃場を担当。遠野市在住歴2年。

出身地もバックグラウンドも全く異なる2人が、結局行き着いた先は農業でした。そこに行き着くまでの考え方は違っていても、農業に対する根本の考え方は同じ。

滋賀県出身の里見一彦と岩手県出身の中村友隆。遠野へ移住した後は、BEER EXPERIENCE株式会社の生産部で、主にホップやパドロンの生産に従事しています。遠野のホップ農家たちのなかではかなり若手の2人ですが、そこで感じるのは現場で働いてみて初めてわかるリアルな農業の現実。

移住してきて1年半という期間で、彼らなりに感じた遠野の課題があります。一方で、農業の魅力も感じており、それをいかに継続させていくかを考える日々。とてつもなく大きな課題を感じつつも、若い人たちがそれに向かっていくことはひとつの可能性だといえるかもしれません。

土の匂いがする農業が自分には合っている

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14年間、埼玉県の飲食チェーン店で働いていた里見。これだけ長く勤めていたこともあり、調理、ホールだけでなく、新人教育や面接までも担当することに。そんな忙しい日常を過ごしつつ、里見は自分が今後どんな仕事をしていくべきかを考えるようになっていきました。

一方で、株にも興味を持って投資していたこともあり、日本経済新聞を毎日読んで、気になったことをメモするようにしていたと言います。

「メモしていたら、自分なりに世の中の流れがなんとなくわかってきたんです。これからはAIが発達して、誰にでもできる仕事は30年後にはなくなっているんじゃないかと」

そこから導き出された答えは、技術がないと作れないもの。そしてそれを作る人がこれから求められていくはず。といっても、工業よりも土の匂いがする農業のほうが自分に合っているんじゃないか。そう考えた里見は、農業への道を探り始めました。

就農相談会などで情報を集め、そこで初めてホップというものを知ることになります。岩手でホップを栽培しているところがある。日本でもそんな農作物を栽培しているところがあるのかと、新鮮な驚きを持ちながら直感的にこれだと思ったのです。その場所こそが遠野でした。

2018年3月に一度遠野を訪れ、遠野市内やホップ畑を見学。この時期の遠野はまだ雪が多く、畑も全部雪で埋まっていたので何か新しいことを見出だせたわけではないかもしれません。それでも、先入観を持って入っていくのはどうかと考えた里見は、「こういうものなんだな」と。

そして、2018年7月から地域おこし協力隊として、BEER EXPERIENCE株式会社の生産部でインターンを開始することになります。

農業の魅力は自分の努力がそのまま成果物になること

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中村は盛岡出身ですが、東京の大学を卒業後、名古屋で働いていました。大学では物流を専攻しており、それを生かして物流会社へ就職することになります。

「東京へ出たいと思って、何も考えず受かりそうな大学に入ったんです。海洋について学ぶ大学だったので、休みもなく船に乗るような学科ばかり。それもいやだなと思って、海に出なくていい物流を学ぶ学科を選びました。結果、今は山や畑で働いているんですけど」

そんな考えで入った大学でも、物流を学んでいくうちに興味を持つようになりました。物流会社の倉庫でアルバイトをして、物流がいかに大事なのかがわかったのです。物流が止まってしまうと、何もかもが動かなくなってしまう。その興味のまま物流会社へと就職することに。

「物流には興味があったんですが、自分が実際に担当していた仕事は、誰でもできる仕事に思えてきてしまって。年功序列で先が見えてきてしまったことで、何か新しいことをやりたいなと

物流業界ではなく違う業界に転職したい。しかし、スキルがないので他の業界は難しい。そう考えていたときに見つけたのが農業。自分の努力が成果物に直結するということも魅力でした。

次の転職先は農業だと考え、情報収集を始めた中村が「脱サラ 農業」で検索して見つけたのが遠野の記事。その記事を読むまでは、岩手県盛岡市出身であるにも関わらず、岩手県でホップを栽培していることも知らなかったと言います。

「チャレンジするのは今このタイミングしかないんじゃないかと思って、家族や周りの人たちに相談したんですが、ほとんどの人が反対でした。でも、最終的には自分で決めることだからと

中村も里見と同じく2018年7月から、地域おこし協力隊としてBEER EXPERIENCE株式会社の生産部でインターンを開始。現在は、ホップ農家として独立するため、新たな道を歩み始めています。

遠野で農業の世界に入ったからこそわかるリアルな課題

2人とも遠野へ移住して2年目。バックグラウンドは違っていても、農業に対して感じる魅力は似ているところもあります。

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もちろん収穫時は忙しいものの、どんどん仕事が増えていくという忙しさはありません。収穫はしないといけませんが、しっかりとしたものを作りしっかり収穫するということが基本。2人とも口を揃えて、何かに追われている感覚はないと言います。

また、遠野の人たちが2人を受け入れてくれているという状況も、彼らにとってはいい面かもしれません。2人が移住する前から遠野には就農者が何人か来ていたこともあり、受け入れる下地ができていたともいえるでしょう。

それもあって、「思ったよりは農業ができるようになった気がします」と里見が感じているのは、非常にポジティブな面だと言えるでしょう。その一方で、遠野に来て初めてわかること、農業を職業にして初めてわかることもあります。

「同業者がほしいですね」

と里見が言う通り、遠野の農家全体の課題は人手不足。遠野のホップ農家は後継者不足で悩んでいる、ということは話に聞いていても、その現場に入ってみると自分の問題として考えるようになっていきます

例えば、農家が減っていくだけではなく、ホップの乾燥センターもこのままでは立ち行かなくなるのでは、という危機感です。ホップは収穫後に乾燥させるため、すべて乾燥センターに集めて乾燥させます。しかし、その乾燥センターの設備が古い上に、作業している人たちも高齢者が多いため、数年後にどうなっているかすらもわかりません。

さらに、乾燥センターの使用料も高額で、その設備をリニューアルするとなるとさらに使用料が高額になってしまうかもしれない。そういった自分ごととしての危機感を、2人はリアルに受け止める立場になっているのです。

収穫になると、遠野のほぼすべてのホップ農家が集まるんですよ。そこで話を聞くと、切実に何が大変なのかがよくわかります

その上で、ホップの栽培時期ではない冬場にできること、魅力を発信して遠野への移住を促進させることなど、彼らも遠野の未来を考えています。

将来への課題と希望。まだ2年目の若手農家も含めて、遠野の課題を全体で共有できているというのは、遠野の強さでもあるかもしれません。



ホップの里からビールの里へ VISION BOOK


富江弘幸
https://twitter.com/hiroyukitomie

企画
株式会社BrewGood
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