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短編小説「笹の葉の願いごと」(後編)

割引あり


笹の葉が枯れて随分とたった頃。
妙なことが起き始めたんです。

玄関の電気は人感センサーなんですが、
夜寝ていると、
その人感センサーが反応するんです。



なんだろう

と思って玄関にいっても
当然ですが誰もいない。


それだけなら機械の故障かなって
思うんですけど、

他にも窓からコンコンと
ノックの音が聞こえたりして。


ここは6階で川沿いですし、
誰かが忍びこんだとは思えないんです。


寝ている時に体を揺さぶられたり、

ガンガン

と何かを叩く音で
飛び起きたこともありました。

彼女を失い、
ナーバスになっているだけだと
自分に言い聞かせたりもしましたが、

どうしても気になってしまうんです。

彼女が見つめていた
天井あたりが。



霊感なんてないはずの自分でも、

日に日に強くなっていくのを
感じるんです。

寒気というか、不快感というか。


「やばい」


という感覚。


引っ越すことも考えましたが、

この部屋には、
彼女との思い出がつまっていて

なかなか決心がつかずにいました。


そんなある日、
彼女が夢枕に立ったんです。


たとえ夢でも、
彼女にもう一度会えたことは嬉しくて。


けれど、

彼女は今までみたこともないような
慌てた顔をしていて

いつもみたいに何となくわかるとか
そんなレベルのものではなく、


はっきりと焦りの表情を浮かべて
こう言ったんです。


「逃げて」


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