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【age shoot】18番ホールのその先へ


【イラストに物語つけてみた! 第二弾】の六作目。
特別な者だけがプレイできると言われる「19番ホール」。
長年夢見た「19番ホール」は、いったいどんな場所なのか……

作は【サワディ】が担当。


脚本をイラストと共にお楽しみください。


19番ホール

(イラストNo.57)

男には成し遂げたい夢があった
いや、男はこの夢のために人生後半をかけて今日までやってきた

このゴルフ場には特別な19番ホールがあると言われている
19番ホールをプレイできるのは、ある条件を満たした人

それは、ゴルフ1ラウンド、18ホールをプレーヤーの年齢と同じか、年齢以下のスコアで回りきること

世に言う「age shoot」(エイジシュート)というやつだ

今年80歳を迎える男は、これまで何度もチャンスを逃してきた

内向的で人付き合いが苦手な性分に加え、職業柄公私ともに親しい仲間や家族もいない
だから空いた時間は、すべてゴルフの練習に費やしてきた

そんな男がいま夢まであと一歩、いや1パットのところまで来ている
このパットを決めればスコア「80」であがれる
そう、夢にまで見た19番ホールをプレイできるのだ

「真っ直ぐ打てばいい、難しいラインじゃない」

男の心臓が激しく波打つ
はやる気持ちを抑えて、80打目となるパットを打った


(イラストNo.04)

男は一瞬目を閉じてしまったらしい

「きまったのか……俺のパットは」

すると、突然無数の蛍が現れ男の前に光の扉を作った

「あぁ、この先にあるのか……19番ホールが」

男はゆっくりとその扉を開けた


(イラストNo.60)

目に飛び込んできたのは、日の光を浴びて揺れる木々
「なんだ……19番は林間コースなのか」

ティーグランドを探していると、若い娘がナイフを持った男に羽交い絞めにされているのが見える

「おいっ、やめろ!」

男の声は届かず、目の前でその娘はめった刺しにされてしまう


(イラストNo.44)

日が暮れ月の光を頼りにふらふらと彷徨い続ける男

「いったい俺は……どこなんだ、ここは」

目を凝らすと、暗闇の崖で一方的に殴る蹴るを繰り返す大きな女が見える

男は止めに入ろうとしたが、どうやってもそれ以上近づくことはできない

「やめろ! わかったから……もう勘弁してくれ」

その場でくず折れる男の手にはパターではなく、銃が握られていた


(イラストNo.45)

「19番ホールは楽園のはずじゃ……」

男はスナイパーだった

「まあ、俺がいけるはずがないか」
力尽き倒れ込んだ男を囲むように人が集まってきた

その憎悪や悲哀に満ちた表情を見て男はようやく確信した
ここは地獄、男が殺してきた人たちが集まる場所なんだと

しかし、男は次の瞬間、自分の耳を疑った
彼ら、彼女らは涙を流し、男に感謝の言葉を述べ始めたのだ

その中には、先ほど林で襲われた娘や、崖で殴り殺された男がいる

みんな、男が“助けた人”たちだった
いや、正確にいうと助けたわけではない
男はただこの人たちを殺した“殺人犯”を始末した復讐屋なのだから

「俺は生まれてきてよかったんだな……」

19番ホールでようやく答えに辿り着き、男は静かに微笑んだ

(終)


あなたが生まれたとき、周りの人は笑って、あなたは泣いていたでしょう。
だからあなたが死ぬときは、あなたが笑って、周りの人が泣くような人生をおくりなさい。
【ネイティブアメリカンの教え】

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