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シリコンバレー弁護士事務所、ここだけは押さえておきたい(その2)

前回Noteの続きです。弁護士事務所の名前を知っててすごく役に立つ!というわけではありませんが、アメリカでのビジネス・シーンにほぼ必ず弁護士が登場するので、常識的に知っておくと何かの時に「おっ」っと思う(または相手に思われる)時があると思います。ビジネス一般常識「上級者編」というところでしょうか。たとえば投資先会社の due diligenceレビューで「この事務所使ってるんだ」とか、交渉場面で「お、またあの弁護士チームか」とか。結果を左右する重要情報ではないですが、補足的に知ってて損はないと思います。

シリコンバレー起業ストーリーにも脇役ではありますが(ほぼ)必ず登場するロイヤー。全米で人気となったドラマ「Silicon Valley」(日本ではhuluで今週配信開始)にはかっこいいロックスターもどきの大物有名人ロイヤーが出てきます:


こんなロイヤーとミーティング、してみたいものですね。

さて、前回はIPO/M&A案件担当事務所をまとめましたが、今回は私が個人的に「よく目につく・耳にする」弁護士事務所をリストアップしてみました。(日本では「四大法律事務所」らしいので、その2倍の8カ所。)

弁護士事務所の名前は伝統的に(日本もそうであるように)、ファウンダー弁護士の苗字をずらずら並べます。途中で分裂したり他事務所と一緒になるとそれに合わせて「改姓」することもあります。ここ20年くらい苗字の数を減らす傾向にあって、場合によっては一個に集約する事務所もあります。昔は伝統や格式を重んじたイメージだったのが、より現代的・ビジネスマインドを感じさせるシンプル且つかっこいい風のロゴに変わってきました。

いずれの場合も、筆頭の名前だけを使うのが通常です。(全部を覚える必要は全くないです。)

以下情報はWikipediaや事務所ウェブサイトから集めてきました。

1. Wilson Sonsini Goodrich & Rosati (=Wilson=あるいはWSGR)

創業:1961年
弁護士総数:約670
スタッフ総数:約1570
本部:シリコンバレー (Palo Alto)
拠点総数:アメリカ国内(10)中国(3)、ベルギー(1)
年間売り上げ(2015年):$646 million

「シリコンバレーに関わる人なら誰でも知ってる」老舗有名事務所です。シリコンバレーテクノロジー産業の重鎮役をずっと担ってきました。事務所名の筆頭のLarry Sonsini氏はシリコンバレーでもっとも有名な弁護士と言えると思います。クライアントリストを見るとシリコンバレーの歴史をしょって歩いてきた感もあります。半導体産業(Cypress Semicondutor, LSI Logic等)からハード系(Sun Microsystems, Apple, Silicon Graphics, Seagate)、そしてインターネット(Google, Netscape, YouTube) 。

日本にオフィスはありませんが、私の知る限りもっとも優秀・充実した「Japan Practice チーム」がいて、日本からの起業家・ビジネスマンの大事なリソースになっています。

「1995年のNetscape社のIPOを扱った」ことが事務所の歴史の一部としてWikipedia にも書かれていますが、これはインターネット業界の重要な歴史マイルストーンでもありました。そして実は私も、このIPOに関わってました。IPO引受人(Morgan Stanley)側の弁護士が私の所属してた事務所で、幸運にもそのチームの一番下っ端として入れてもらいました。仕事内容は下っ端の雑務だけですが、歴史的場面にいたことはプチ自慢です。(当時のS-1ファイリングの弁護士名セクションに名前も入ってます。今話題の経歴詐称ではないです。はい。)

2. Fenwick & West (=Fenwick 「フェンウィック」)

創業:1972年
弁護士総数:約300
本部:シリコンバレー (Mountain View)
拠点総数:アメリカ国内(10)中国(3)、ベルギー(1)(日本はなし)
年間売り上げ(2014年):$327 million

シリコンバレー生まれのシリコンバレー育ちな事務所です。スタートアップのサポートだけでなく、Flex by Fenwick という「委託社内弁護士」システムを展開し、弁護士イノベーションもしています

3. Morrison & Foerster (=Morrison あるいは MoFo(モーフォー))

創業:1883年
弁護士総数:約990
本部:サンフランシスコ
拠点総数:アメリカ国内(9)中国(3)、日本(1)、他アジア(1)ヨーロッパ(3)
年間売り上げ(2014年):$968.5 million

1883年(明治16年)開業した老舗です。サンフランシスコはファイナンスの西海岸の中心地としての長い歴史もあり、そこから生まれた弁護士事務所の一つです。なので伝統的にバンク・ファイナンス系が強かったのですが、シリコンバレーとロスでも活躍しています。

正確な数字を調べていませんが、私の知る限りアメリカの弁護士事務所のうちもっとも大きな東京オフィスを持っています。

4. Cooley LLP (=Cooley (クーリー))

創業:1920年
弁護士総数:約900
本部:シリコンバレー (Palo Alto)
拠点総数:計12カ所(アメリカ国内(10)上海、ロンドン。日本はなし)
年間売り上げ(2015年):約$912 million

昔はCooley なんちゃらなんちゃらと長い名前だったのが今は「Cooley」に短縮し、「C」のロゴが弁護士事務所らしからぬ感じです。

5. Orrick Herrington & Sutcliffe LLP (=Orrick (オーリック)

創業:1863年
弁護士総数:約1,100
本部:サンフランシスコ
拠点総数:全世界に計25カ所(含む東京)

サンフランシスコ・ダウンタウンのHoward Streetに大きなガラス張りの自社ビルを構えています。(大きな「O」ロゴが目印。)私にはファイナンス系の大手事務所のイメージが強かった(Golden Gate Bridgeの建設ファイナンスに関わって歴史もあります)のですが、最近はIT・スターットアップのサポートにも力を入れているようです。

6. Goodwin Procter (=Goodwin(グッドウィン))

創業:1912年
弁護士総数:約900
本部:ボストン
拠点総数:全世界に9カ所(サンフランシスコ・シリコンバレー含む)
年間売り上げ(2013年):約$752 million

カリフォルニア州外が本拠の事務所のうち、シリコンバレーでもっともよく名前を聞くところという感じがします。前回のIPO・M&A案件リストにも頻出でした。ハーバード大学時代の友人同士が二人で始めた生粋のボストン系なのですが、それだけボストンとシリコンバレーのパイプラインも太くなってきたことの反映でしょうか。

7. Gunderson Dettmer (=Gunderson (ガンダーソン))

創業:1995年
弁護士総数:約200
本部:シリコンバレー
拠点総数:米国内7カ所、北京

複数の事務所から独立してきたパートナー弁護士チームで「スタートアップ」事務所としてスタートしたところです。アントレプレナー・起業家・VCだけに特化した弁護士業務をミッションとしています。PitchBookが集計した「2015年VC 系弁護士事務所」のトップにあがっています

8. Morgan Lewis (=Morgan Lewis)

創業:1873年
弁護士総数:約2,000
本部:フィラデルフィア市
拠点総数:全世界に28カ所(含む東京)
年間総売上:1.291 billion (2013年)

超大型事務所で、東京にも大きなオフィスがあります。シリコンバレーでは90年代後半に当時破産に追い込まれたBrobeckという事務所の既存弁護士・クライアントを吸収して一気に大きくなった背景があります。

ここでは8事務所だけを拾いましたが、これ以外にも「星の数ほど」の弁護士も事務所で賑わっています。なのでクライアント獲得のためにそれぞれマーケティング・宣伝活動を積極的に行っています。また、優秀な若手弁護士を雇うべく、就職人気ランキングも気になるところです。

まずマーケティング活動ですが、参考までにそれぞれにTwitterアカウントを見てみました。

日本の四大事務所の皆様はTwitterを使ったプロモはやってらっしゃるないようで。。。長島大野事務所しか見当たりませんでした。

また、Vaultという就職情報サイトがあるのですが、「テック系法律事務所」と「北カリフォルニア系法律事務所」ランキングが面白かったです。それぞれのリンク先の元ネタも是非どうぞ)

テック系事務所:

1. Fish & Richardson (ボストン本部の事務所です)
2. MoFo
3. Cooley

北カリフォルニア州の事務所

1. MoFo
2. Wilson
3. Fenwick

らしい、です。競争激しいシリコンバレー、弁護士の世界でもいろいろと大変です。

ちなみに冒頭の写真は内容と関係ありません。。。先週行った旅行中に撮った一枚です。実際は写真よりももっともっと綺麗な夕日でした。

今日も読んでいただき、ありがとうございました。

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