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【短編集】魔法雑貨店にありがちなだらしない商売

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【短編小説】第1品 魔法のランタン

 ランタンが点いている間は運が付くという魔法雑貨が入荷した。それを聞きつけたイチは、
「一つください」
 こちらの返答は待たずに、一枚の金貨で豪快にテーブルを軋ませた。一つしかないのに。
 私は収益よりも買い求める客の意図を聞ければそれで良いので――金貨は貰えるに越したことはないので懐へ忍ばせて――聞いてみた。
「近々、告白するんですよ」
 イチは豪快に口を裂いて笑った。
 それで運が欲しいんだと

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【短編小説】第2品 ミニミニジェミニ

 ドアのガラガラ鐘が鳴ったので視線を流すと、誰もいないなと恋愛小説に視線を戻し、しかし「にーにー」と煩い鳴き声がするので身を乗り出す。
 小綺麗な礼服を纏う、二足歩行の猫がいた。
 人語が達者なようで、彼は妖精猫の王子様だと言う。
「双子の兄を殺したいにゃ」
「うちは殺し屋雇ってませんよ」
「妖精猫を殺すマタタビとかないのかにゃ?」
「しつこいなーもう。どうしてお兄さん殺したいのさ」
「王位継承式

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