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教授とピアノ

京都の地下にある小さめの映画館に行ってきた。坂本龍一さんのピアノ演奏を観る為に。生前のコンサートに行ったことは無い。

画面はモノクロ。
ただ弾く。ひたすら弾く。人の為に弾いて無い。ご自分の内面に向かってひたすら問うている感じ。Willだな。

マイクの感度が良すぎて、息遣い、衣擦れ、ピンの上の楽譜のわずかなジーンという振動まで聴こえてくる。

低音サイドから映し出される左手が超絶カッコいい。右手の主旋律の美しさは勿論のこと、それを常に押し上げるような左手のSteadyさやDynamicさがとてつもなくカッコ良く正確で呆れた。男性ピアニストが羨ましい瞬間。

そうか、この方は本当にオーケストラがお好きだったんだ。最初から最後まで。楽器の王様を使っていろんな音を出して、不思議な音を組み合わせて、ご自分で指揮しながら10本の指を駆使して独特の世界観を創造されていた。

Yellow Magic Orchestraというバンド名。とても納得。

子どもの頃、兄の部屋のラジカセから何度も聞こえてきた、あの曲を弾かれた時は僅かに微笑まれていた。旧友に再会した時のような、とても柔らかい嬉しそうな表情が印象的だった。

ピアノも大好きだったんだろうなあ。指先と鍵盤から弦の一本一本まで神経が通っている感じがした。呼吸をする事の大切さをよくご存知だったのだと思う。だからかな。こんなお手紙を見つけた。

@yhd56

坂本龍一「東京都都知事小池百合子様:突然のお手紙、失礼します。私は音楽家の坂本龍一です。神宮外苑の再開発について私の考えをお伝えしたく筆をとりました。どうかご一読ください。率直に言って、目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません。これらの樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません。この樹々は一度失ったら二度と取り戻すことができない自然です。私が住むニューヨークでは、2007年、当時のブルームバーグ市長が市内に100万本の木を植えるというプロジェクトをスタートさせました。環境面や心の健康への配慮、社会正義、そして何より未来のためであるとの目標をかかげてのこと、慧眼です。NY市に追随するように、ボストンやLAなどのアメリカの大都市や中規模都市でも植林キャンペーンが進んでいます。詳しくはこちらの記事をご参照ください https://globe.asahi.com/article/14629731… いま世界はSDGsを推進していますが、神宮外苑の開発はとても持続可能なものとは言えません。持続可能であらんとするなら、これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるよう、現在進められている神宮外苑地区再開発計画を中断し、計画を見直すべきです。東京を「都市と自然の聖地」と位置づけ、そのゴールに向け政治主導をすることこそ、世界の称賛を得るのではないでしょうか。そして、神宮外苑を未来永劫守るためにも、むしろこの機会に神宮外苑を日本の名勝として指定していただくことを謹んでお願いしたく存じます。あなたのリーダーシップに期待します」 令和5年2月24日 坂本龍一

X@yhd56

やはり人はどれだけ生きた、ではなく、どう生きたか、何を成したか、が勝負なのだと教授にご享受頂いた気分。子ども達に胸を張れる大人でいたい。


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