京都の地下にある小さめの映画館に行ってきた。坂本龍一さんのピアノ演奏を観る為に。生前のコンサートに行ったことは無い。
画面はモノクロ。
ただ弾く。ひたすら弾く。人の為に弾いて無い。ご自分の内面に向かってひたすら問うている感じ。Willだな。
マイクの感度が良すぎて、息遣い、衣擦れ、ピンの上の楽譜のわずかなジーンという振動まで聴こえてくる。
低音サイドから映し出される左手が超絶カッコいい。右手の主旋律の美しさは勿論のこと、それを常に押し上げるような左手のSteadyさやDynamicさがとてつもなくカッコ良く正確で呆れた。男性ピアニストが羨ましい瞬間。
そうか、この方は本当にオーケストラがお好きだったんだ。最初から最後まで。楽器の王様を使っていろんな音を出して、不思議な音を組み合わせて、ご自分で指揮しながら10本の指を駆使して独特の世界観を創造されていた。
Yellow Magic Orchestraというバンド名。とても納得。
子どもの頃、兄の部屋のラジカセから何度も聞こえてきた、あの曲を弾かれた時は僅かに微笑まれていた。旧友に再会した時のような、とても柔らかい嬉しそうな表情が印象的だった。
ピアノも大好きだったんだろうなあ。指先と鍵盤から弦の一本一本まで神経が通っている感じがした。呼吸をする事の大切さをよくご存知だったのだと思う。だからかな。こんなお手紙を見つけた。
やはり人はどれだけ生きた、ではなく、どう生きたか、何を成したか、が勝負なのだと教授にご享受頂いた気分。子ども達に胸を張れる大人でいたい。