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勉強note 22/11/14(心因性嘔吐症について)

息子の治療に役立つと思われる情報を不定期に掲載していく勉強ノート。一応アップはしてますが、完全に自分の確認・記録用の内容なので、皆様は読まなくて本当に大丈夫です。

息子の現在の主な属性や症状は以下の通り。

性別:男の子
年齢:9歳
体重:18kg(低体重)
症状:主訴は強い吐き気。それにより満足に食事が摂れない、外出が出来ないという副次的な問題にも悩まされている(学校には4月以降一度も通えていない)。
発症時期ときっかけ:4月中旬、下校中に同級生に思い切り胸を殴られて、その翌日から発症した。
これまでの検査、治療履歴:
6月:器質性の病気の可能性を棄却するために胃・大腸内視鏡検査を実施、小腸にわずかに炎症が認められるも、器質的な障害はないとの診断。
7~8月:児童精神科の診察予約がなかなか取れないため、小児科や発達外来を受診。制吐剤を処方されるも、全く効果なし。
9月:児童精神科(開業医)で「パニック症状」と診断され、SSRI薬(「ジェイゾロフト」)の服用を開始。効果がなかなか現れなかったので、量を徐々に増やしていき、現在は小児の上限量(75mg)を服用中。
10月:総合病院で知能検査を実施。結果は12月上旬に報告予定。

現在の課題:薬を服用して症状は徐々に和らいでは来ているが、効き目が不安定で、症状がぶり返すことも少なくない。また、吐き気のために食事が十分に摂れず、栄養不足やエネルギー不足が恒常的に発生しており、それが症状を長引かせている要因になっている可能性も考えられる。

勉強の目的:「パニック症状」の治療とは別に、吐き気を軽減して、食事をしっかり食べてもらえるような治療方法や対策が無いかを調べてみる

今回は、心因性嘔吐(psychogenic vomiting)について、調べてみた。

割と新しい症例報告の論文(Chronic Unexplained Vomiting: A Case Report on Psychogenic Vomiting /Paidi G et al.)のイントロでは、心因性嘔吐症について以下のように説明していた。

<心因性嘔吐(Psychogenic Vomiting)について>

Leibovich は、心因性嘔吐を、既知の器質的原因のない再発性嘔吐、または心理的ストレスから発生する機能性嘔吐と定義した。心因性嘔吐という用語は 1960 年代に初めて使われた。心因性嘔吐は情緒障害として発生し、すべての年齢層で起こりうる疾患である。心因性嘔吐の原因は、ヒステリー神経症またはうつ病であると複数の研究者によって報告されている。身体的な不快感がほとんどない良性のものもあれば、過食症や神経性食欲不振などより複雑で深刻な障害の一部になる場合もある 。精神科医はもっとも重症となった場合、深刻な脱水症状や深刻な体重減少を引き起こす可能性を示唆している。心因性嘔吐は、慢性特発性悪心、循環性嘔吐症候群、または機能的嘔吐とは区別する必要がある。

また別の論文(L.Nquyen et al./Neurogastroenterol Motil.2020 August; 32(8): e13810.doi:10.1111/nmo.13810) では、胃そのものには全く障害がないのに感じる吐き気や嘔吐をCUNV(慢性的な原因不明の吐き気と嘔吐症という意味)と呼び、それについて以下のような説明を行っている。

<CUNV(慢性的な原因不明の吐き気と嘔吐症)について>

CUNV(原因不明の慢性吐き気と嘔吐 ) は胃不全麻痺と同様の症状を呈するが、胃の機能(胃の内容物の排出)は正常であるという障害である。CUNV の病態生理学的な発症メカニズムはまだ完全に解明されていない。胃平滑筋、カハール間質細胞、腸ニューロン、および免疫細胞の異常が関与しているものと思われる。

胃内容物排出の調節は、腸神経系 (ENS) および中枢神経系 (CNS) による平滑筋収縮および神経支配の複雑な調整に依存する。副交感神経の制御は迷走神経を介して行われ、交感神経の制御は脊髄を介して T5 から T10 の腹腔神経節を介して媒介される。 副交感神経の活動は分泌物と運動性を増加させ、感覚を調節する、交感神経活動は分泌物と運動性を減少させる。

自律神経系 (ANS) は、外部環境を統合し、器官機能の変化に対する反射応答の複雑なシステムを介して恒常性を維持する役割を果たす。自律神経の機能不全は、恒常性の変化と最終的な標的臓器の機能不全につながる可能性がある。自律神経系 (ANS)  異常は、周期性嘔吐症候群などさまざまな上部消化管障害で報告されている。

自律神経系(ANS)や それに伴う胃の症状は、年齢、性別、疾患、 ストレス、投薬など、多くの要因によって変化する。自律神経機能障害が、CUNV 患者の胃の運動性および症状の重症度に関連している可能性が示唆される。というわけで、この論文では、 実際に、CUNV 患者の自律神経機能を評価していて、以下の様に結論している。

自律神経機能障害はCUNV の患者で一般的だった。副交感神経の機能不全は、胃内容物排出の遅延およびより深刻な上部消化管症状と関連していた。一方、交感神経機能低下は軽度の症状と関連していた。

以上から、息子の嘔吐症は、自律神経機能障害(特に副交感神経)による可能性も示唆される。そして、重症化すると、深刻な体重減少を引き起こす可能性も指摘されていることから、パニック症状での脳へのアプローチに加えて、自律神経系へのアプローチも並行して実施すべきなのかもしれない。

よって、引き続き他の研究論文(症例報告など)で心因性嘔吐症の症状を緩和するテクニックがないか調べつつ、自律神経を調整する一連の対策(漢方薬の服用、針灸、ストレッチ等)にも再び着手してみようと考えている(以前、トライしたが、そのときは吐き気がひどすぎて、効果が顕在化しなかった。しかし、症状が和らいでいる今は補助的な効果が期待できそうな気もする)。

次回は栄養学的なアプローチについて勉強したいと思う。




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