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(短編小説)色

男がまだ暗い朝に墨汁で濡れたティッシュを噛もうとしている。ボトルからブチュブチュと青い透明な皿を汚すように液体を出して、ティッシュを浸したらもうどうしようもないくらい真っ黒に濡れてしまう。そのまま垂れないように口の中に入れるとなにもしなくても墨汁が喉の方に流れ落ちてくるので、飲み込むためにそっと口を閉じる動きをする。たちまちティッシュの繊維が圧縮され、すこしの刺激で大量の汁が噴出する。鉄のような味。今度はしっかり噛むとテュッシュの繊維が噛みきれないまま口の裏に張り付く。
歯に

    • noteいっぱい更新したらいいねの数が減ってきた。もう俺はネットでは読まれない人間になった。踏ん切りがつくぜ。読んでくれたりいいねしてくれてる人はいつもありがとう。

      • (詩)ゴールデンウィーク殺人事件

        私はいなかった。 自分の手で自分の口に轡をはめると丘のような背中を持つ動物に変身してしまうように。季節が蜘蛛の巣にひっかかってそれ以上少しも動かなくなるように。何回かページに手をかけ、開く前に閉じて、もう二度と開かなくなるように。 と言いたかった男が代わりに 「ゴールデンウィークに限らず連休は人を殺したくなる」 と言ったが聞き役は耳が悪かったので言葉は宙に浮いた。犠牲者の犬はそれを食べた。男は太ももを芋虫の行進のように左右に激しく動かした。 長い沈黙のあと男は甘い椅子か

        • (雑談)ねるまえのひとりごと

          ねむい。 いま表示されているディスプレイの文字にさわってみてほしい。文字の要素のうちさわることができる部分を名指す言葉はあるのだろうか。シニフィアンは感覚のことだから違うし「文字の形」というのも同じく感覚のことだ。私たちは実際に文字に触れることができ、指で触れたらその部分の文字は隠れる。しかしそれだけだ。実際に触れてみてもディスプレイの文字は私たちになにももたらさない。さわりながらにして接触は回避されている。言いたかっただけだ。 今電気を消してねようとしている。 印刷さ

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        (短編小説)色

        • noteいっぱい更新したらいいねの数が減ってきた。もう俺はネットでは読まれない人間になった。踏ん切りがつくぜ。読んでくれたりいいねしてくれてる人はいつもありがとう。

        • (詩)ゴールデンウィーク殺人事件

        • (雑談)ねるまえのひとりごと

          (小説)というのを一番慎重につけているから俺は小説というものを一番大事に思っているらしい。

          (小説)というのを一番慎重につけているから俺は小説というものを一番大事に思っているらしい。

          (雑談)醜い入部届

          根本的に2枚の醜い入部届が全員の心の中に住み着いて人類は「もうだめ」になるらしい。 今までの人生で書いた合計4枚の入部届のうちの恥ずかしそうに出したほうの2枚だ。他の2枚は嫌々出した。 教師は(部長だったこともある)いずれの紙も特に何の感情も持たずに受け取った。入部は受理され、僕は特に何も思わずにひとつふたつの共同体に包括されていった。 そのうちの2枚は確かに気高い反抗と美しい孤独のための義憤と共に提出したのだ。だが、もう2枚はなんとも柔弱な心持ちで提出したこともまた歴然とし

          (雑談)醜い入部届

          (雑談)恥ずかしい

          練習や発散で書いても意味ないからちゃんとやらないと。うう泣 でも今考えていることが大きすぎて考えるだけでていっぱいなんだよなあ。 noteは長めのツイートってかんじで利用しながらちゃんと公募用を書いていくか。うん。そうしよう! あー情けな恥ずかしい。でも文章って自然に出てくるものだから、なんだかなあ、納得いくものが書けなくても書いてしまうんですよね。難儀…。 自分の考えに自信が持てる場所で書くと巧拙を抜きにして納得できるものが書けたりするから、案外今こうなってしまっているのも

          (雑談)恥ずかしい

          逆にいっぱい投稿して隠す

          逆にいっぱい投稿して隠す

          (雑談)良い匂いをたてて、湯気をあげながら皮を剥かれる権利

          はじめに言うとこの文章に結論はない。雑談の代わりに書いている。なので雑談してくれる人募集中。 九段理恵の『東京同情塔』には「同情する権利」という概念が出てきた。作中の言葉で言うなら「軽い言葉」としてアイロニカルに使用されていたように思う。最近邦訳されたアミア・スリニヴァサンの本の題名は「セックスする権利」だったし、安楽死の法整備の記事では「死ぬ権利」という言葉が使われていた。 権利という言葉をくっつけて複合名詞にするだけで、いっきに否定しがたい概念に変身するのは面白い。 大

          (雑談)良い匂いをたてて、湯気をあげながら皮を剥かれる権利

          (長めの批評)ヘレディタリー/継承 偽られた悲劇

          (だいぶ前に書いた批評?的なもの。出す機会なさそうだから供養。) 『ヘレディタリー/継承』(以下《ヘレディタリー』)についてのある感想ツイートを目撃し、ことを荒立てたくもないので内容はすこしぼかすが、それを見た私は「誤解」だと思った。他にも同様の感想をいくつか見て、同じような誤解もとい誤読をしているように感じたので、訂正しておきたいと思ってこの文章を書くことにした。また書いてみて監督アリアスターに定着してしまったイメージ(それは監督自身のインタビューなどにおけるパフォーマン

          (長めの批評)ヘレディタリー/継承 偽られた悲劇

          (雑談)哀れなるものたちの話したよ、ちょっと

          出典が誰だったか気になっていることがある。プルースト的な小説は飢える心配がない安全が確保された上流階級が主人公でないといけない〜みたいなことを言っていた。そんなに批判的な口調じゃなく、サラッと文の中に紛れ込んでいたかんじだった気がする。ドゥルーズだったような、違ったような気がする。(単なるブルジョワ批判というより、椅子が関係している) 座椅子やベッドに深く腰掛けて読書するのは特権階級だろって話は、どうだろう、ジジェクなんかは危険な考え方だって批判してたけど、常に一定の有効性を

          (雑談)哀れなるものたちの話したよ、ちょっと

          (雑談)こういうこと言って意味あるのかわからないけど…

          こういうこと言って意味あるのかわからないけど、フリフリの服を着たかった、着たい、着ようかな、というじりじりとした衝動?のようなものを感じる時がある。 先日カードキャプターさくらを観ていたらさくらはとてもかわいくてびっくり。なんでだろなんでだろと思っていたら、時間が過ぎていたということがあった。薄い花びらが何枚も折り重なっているような、でも外側は結構少年なんですよ。こう……かたそう?じゃないですか?変な意味じゃなく。漫画版だともっとミュシャのような耽美さがあるのだけど(アニメと

          (雑談)こういうこと言って意味あるのかわからないけど…

          (詩)女の子

          女の子が怒ってるのか喜んでるのかわからないのがいい。昼なのに目玉焼きで、窓の下には車が通っている。女の子なのに怒ってるんだか喜んでるんだかわからないのは素敵だ。昼だから、目玉焼きには胡椒をかけて、窓の下には車通りが激しい。女の子、裸だ。なぜ。女の子だから怒ってるのやら喜んでるのやらわからないのはいやだ。なぜ。車通りが激しい日は朝だから、胡椒粒は目玉焼きの上に置かれている。女の子は裸なのがいい。なぜ。女の子は怒ってるのか泣いているのかわからないこえで「なぜ」と聞く。女の子に怒っ

          (詩)女の子

          (準小説)本を落とした話

          『失われた時を求めて』を落とした。  夕飯の買い出しに行くついでにブックオフに寄るのかブックオフに行くついでに買い物をするのか、目的が定かではないまま家を出たのは正午をすこし過ぎたころで、家の前の道は溶け残った雪でまだらに白くなっていた。今夜は奮発して鍋にでもしようと思ったのは寒かったせいもあるが、神奈川では珍しい積雪に浮き足だっていたせいもあったのかもしれない。家には豆腐の残りがあるから、スーパーで白菜と豚肉ときのこを買えばそれで鍋ができる。ブックオフではなにを買おうかし

          (準小説)本を落とした話

          (雑談)お湯について

          不思議なことにお湯は美味しい。今白湯を飲んでいるが、やはり美味しい。水も美味しいからよく考えたら別に不思議ではない。ただお湯の美味しさは水の美味しさとは異なっている。体に入った際の変化の幅が大きいのはお湯な気がする。またお湯の美味しさは料理からも味わうことができる。湯豆腐や釜揚げうどんはお湯の味が料理を一層味わい深いものにしている。釜揚げうどんなどはざるうどんとは違いすするとお湯の味がするのがうまい。実際うどんと一緒にそれなりの量お湯を飲んでいるわけだから、一種のお湯料理とも

          (雑談)お湯について

          (雑談)書くことと嘘

          結構しんどい時自分は後頭部のあたりがもわっと膨れ上がるような感覚になるのだが、これはなんだろうか。頭に靄がかかったようになって頻繁にめまいがする。急に動悸がしたり、止んだりを繰り返す。こんなふうに書くとさも心配をされたがっているようだけど(実際そうなのかな)、いざ書いてみると単にそれだけのことに思えて、書く側としてはかなり楽になるのが不思議だ。 書くことの「癒し」の効果は様々な作家によって言われ尽くされているが、自分は比較的それを実感しやすいほうだと思う。悩みがあるとたちまち

          (雑談)書くことと嘘