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短編小説 小噺のようなもの

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2024年1月の記事一覧

甥の書き初め  【短編小説】

甥の書き初め  【短編小説】

元旦の朝、というより昼。
実家の一室で目を覚ました俺は、布団の脇に気配を感じて起きた。
高校生の晶がちゃぶ台に向かって筆を動かしていた。
「書き初めか?」
煙草に火をつけながら覗き込む。
そこそこ達筆でこう書いてあった。

〈 油揚げ〉

………俺は黙って布団を畳んだ。
Z世代にしか通じない流行語かもしれない。
余計な質問をすると地雷を踏みそうだ。
たまにしか帰省しないが理解のある叔父としての立場

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ねこント 【短編】

ねこント 【短編】

「のろけていい?」
「おう」
「うちの人、たとえ熟睡してても無意識に、脚の間のあたしを踏まずに寝返りうてるの」
「すげーな」
「あんたのとこはどう?」
「おれの写真撮るためにハイスピードカメラ買ってきた」
「………それはちょっと引くわ」
「お前んとこだって毎日写真撮ってSNSに出してるじゃんよ」
「あたしを撮るために動体視力が上がったらしいの」
「うちも床に落ちた猫砂を感知する足裏センサーが発達し

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