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老親が精神科に入院しましたその7

△△病院初回~病名はうつ~



先生:「Aさんはうつだと思われます」
エイプリル(以下エイ):「ではAは病気なのですか?」
先生:「はい。配偶者が亡くなって気分が落ち込むというのは、当たり前の心の動きで、時間が経てば自然と立ち直れます。ですがAさんの場合、引っ越し、金銭面の不安など複数の要素が重なり、こうした悲しみや苦しみを上手く受容出来なかったようです。ここまで来ると自力で直すことは難しいですね」

病名はうつでした。

エイ:「今後はどういった治療になるんでしょう?」
先生:「Aさんはそこまで自殺の可能性が高くないようです。最初は週一回の通院になると思われます。今は良いお薬があるので、薬物治療が中心になります。まず副作用が少ない気持ちを楽にするお薬や眠れるようなお薬から初めていきます。強いお薬をいきなり飲み始めると転倒などのリスクがありますから少しずつ様子を見ながら処方していきます。まずは熱が下がったら一度ご本人を連れてきて下さい」

今のAの状態で通院出来るのか?

エイ:「ここまで連れてくるのはとても大変でした。次回どうやって連れてくれば良いのか今から頭が痛いです」
先生:「最初は通院を嫌がる患者さんが多いです。例えば『遊びにいこう』などといって病院に連れて行くような嘘はつかない方が良いです。その時は良くても継続的に通院しなければならないので、無理矢理や嘘をついて連れ出すのはやめた方がいいですね。『眠れない』『体の調子が悪い』と訴えてきたら、『だったら病院行ってみない?』と誘うのがいいと思います」
エイ:「早く本人に診察を受けてもらいたいのですが……」
先生:「無理矢理は良くないですが、今日来られた時のようなある程度の強引さはあってもいいと思います。それに取引はしてもいいと思います」
エイ:「取引ですか?」
先生:「はい。『話を聞いて』と言われてたら、『病院に行くなら聞くよ?』と言うなどです」
エイ:「確かに、少し前から無条件に聞き役に回るのは辛くなってきました。声を荒げないのが精一杯です」
先生:「無理はしないようにして下さい。地域包括支援センターと連携を取っているなら、今日のことを共有しておくのをおすすめします。一度病院に来て貰えれば、訪問看護など次のケアに繋げられる可能性があります」

今日をどう乗り越えるのか?

先生:「Aさんの自殺衝動はそこまで高くはないし、暴れたりという他害の危険もそこまで高くないように思えます。ですがもし今夜や病院に来るまでの間にひどいパニックを起こすなど、ご家族の手に負えない時は、精神科の救急救命に連絡するか、後は警察に電話するのもいいでしょう。日中なら病院も相談に乗ります」
エイ:「はい……」
先生:「Aさんの状態ではまず大丈夫だと思いますが、夜間は一人にしない方がいいですね。あとあおるようなことは言わないで下さい」
エイ:「あおるとは?」
先生:「『死にたい』と言われて、『じゃあ死んだらいい』などと返すと、本当に自殺してしまうことがあります。病院内でも自殺を完全に防ぐことは難しいです。なだめるように努めてください」
エイ:「夜間にずっと一緒に居るのは難しいです」
先生:「ご家族が無理をする必要はありません。出来る範囲で構いません。自殺は病院内でも完全には防げません」

Aは治るのか?

エイ:「Aは治るんでしょうか?」
先生:「Aさんの場合、うつの原因がはっきりしてます。時間の経過と共に穏やかに回復していくと思われます。一般的には、病院に来るまでに掛かった時間=治るまでの時間です」
エイ:「では二、三ヶ月くらいでしょうか?」
先生:「そうなります。ただ、高齢者の場合、回復は遅いです。直そうという意欲が湧きづらいからです。ご家族から見て治ったなと思えるまで一年ほど掛かるかも知れません」

家族カウンセリングを終えて

家族カウンセリングは三十分くらいだったと思います。先生に話を聞いて貰ってとてもすっきりしました。
上記した通り、まず本人を連れて行かねばならないといけませんし、何も解決はしてませんが気持ちは楽になりました。
家族カウンセリングはどこの病院も有料だと思われますが、「家族の様子がおかしいが病院に行ってくれない」とお悩みの時は一度受けてみることをおすすめします。

△△病院初回~その後~


A達が家に戻り、熱を測ると下がっていたそうです。
看護婦さんにちらっと「なんだってこんな時に熱が……」とこぼすと「急に外に出ると興奮して発熱する人は良くいます」とのことでした。

家族カウンセリングの内容を話す

AとCに家族カウンセリングの内容を伝え、「一度病院に行こう」と言うと、パニックになりました。
「嫌だ」「知らない病院には行けない」と床にゴロゴロと転がり、子供が癇癪を起こしたようでした。
それから行けない理由を探しているようなことを言いました。
「足が悪いから行けない」「あんな遠くに通うのは無理」
「じゃあこのままでいいの?」と聞くと「それは嫌」
「行かないのは自由だけど、行かないんだったらもう『体の具合が悪い』とか言わないで。聞くのも辛いの」と言いました。
A:「そんなことを言わずに聞いて欲しい」
C&私:「じゃあ一度病院に行って。お薬を飲めば眠れるようになるかも知れないよ」
A:「また熱が出たらどうしよう」
C&私:「その時はしょうがないでしょう。またついていくから一度行ってください」

それからAは「だって私は目も見えないし、こんなに痩せちゃっているし……」と体の不調を訴えようとしますが、「うん、だから病院行こう」と返しました。
私が「先生のカウンセリングですごく楽になった。もし次の診察の時、Aが発熱してしまったら、私がAと帰るから、今度はCが家族カウンセリングを受けるといいと思う。私達、とても疲れているよ」というと、Cも興味を持ったようでした。

家族がカウンセリングを受ける価値

あまり良くないかも知れませんが、私はAがもし病院に行かないならそれでもいいと思いました。
無理強いが出来ないならそれも仕方ありません。変に気負うのをやめた気がします。
Aも辛いでしょうが、Cも私も限界です。このまま聞き役を続けたら体か心を壊すのはこちらでしょう。
地域包括支援センターにも「本人は受診出来ませんでしたが、家族カウンセリングは受けました」と報告しました。
「まずは良かったですね」と言われました。

幸い、Aは「また絶対熱が出るよ」「行きたくない」とは言いつつ、病院に行くのは了承しました。Cの都合で二日後にまた病院に行くことになりました。
老親が精神科に入院しましたその8に続きます。


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