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【閲覧注意】【ひといき小説其の四】弱者男性は転生の夢をみる
そのチンコは無駄である。
愚息をぶら下げ、邪な感情を抱きながら、淫猥な視線を向け、へらへらと、呑気に、世の中の男性は私たちを見ているんです。
ゴールデンタイムのワイドナショーでフェミニストの女性が熱弁していたのを思い出した。
俺はコンビニで買ったビールを飲みながら「確かにな」と同情していたが、もはや誰ですかレベルのコメンテーターらしい男と、知らないが有名らしいお笑い芸人が「いやいや」と、ツッコんでいた。
約二年ぶりに見るテレビを死んだ目で観察し、一人悲しく批評する。
違うんだな、そこは。
コメンテーターのコメントは正しいと思うが、芸人は「そうですよね!」と、綺麗に肯定派否定派で別れなくちゃならないでしょ。
「ゆーてバラエティなんだから、自分のエゴを貫こうとすなよ」
はぁ。
一人思い出してため息をつく。
「くんだらねー世の中。はよ爆発しろや」
ゆーて、このビルに居るのは俺だけなんだからどうでもいいか。
会社の汚物であり、サビ残まみれの俺を匿ってくれている背の低いビル。
まるで、ビル同士の身長マウント合戦の果てに惨敗して隅っこに追いやられたビルだ。
弱者ビルと弱者男性が深夜23:00にお互いのケツの穴を舐め合っている。
テレビのフェミニストは案外間違ったことは言ってない。
だって俺、セックスしてぇもん。
「だりぃー」
ふと、◯INEを見ると通知に1が付いていた。
この間、マッチングアプリでいい感じになった女の子だろうか。てか何ヶ月前だよそれ。
でも俺は男だ。どんなに無しよりの願望だとしても、可能性が0でなければ縋り付くものだ。
誤タップで戦力ゴリ押し課金ゲーを開いてしまった。こんなゴミみたいな俺でも課金して適当に敵を殴ってたら味方に崇拝されんだよな、コレ。
思いつつ今は◯INEだ。何かアクション来てるかも!?と勢いに乗った。
"最近どう。ですか、"
何の面白みもない、母親からのLINEだった。
28にもなるアラサーに向けた、母親からの手向けだ。
"大丈夫、元気だよ😄"
「最近どう」というのは、三重の意味だろう。
お前彼女は?いい加減に結婚したらどうなん?
仕事の調子はどうなんや?
ヨシ君(俺のこと)が上京してからもう何年経つんやろ?寂しいからお盆の時にでも顔だしな。
「知らんがな」
俺は萎えてスマホを放り投げた。死ねよ人生、くたばれヒューマン共。
「ゴミがよ」
起床して時間を確認すると、まだ午前4時だった。
帰ったのが午前2時で、風呂入って歯ぁ磨いて寝たから一時間半しか寝てない計算になるのか。
「あーだるい」
最近こういうのが続いている。汗びっしょり、シーツ替えなきゃな。
嫌な夢をみた。
昔の夢だ。小学生の頃の夢。当時の俺はスポーツ万能で勉強もできた。友達もたくさんいて、クラスの中心的存在だった。今の俺とは真逆だ。どうしてこうなっちまったんだ。
好きな女の子がいたんだ。好きな女の子はM菜ちゃんといって、俺とは違っておっとりしてて、でも自分の我を通すところはハッキリ通す。
そんなところが好きになって、多分相思相愛だったんだろうな。
休み時間にサッカーばっかりやってる俺が、急に教室で遊ぶようになったから不審がる友達も少なくなかったっけ。
なんで教室で遊ぶようになったかは、M菜ちゃんと遊ぶためだ。教室で一緒にすごろく作ったりして遊ぶ瞬間が人生で一番幸せだった。
でも俺のせいでM菜ちゃんはイジメられるようになった。
「なんでM菜がヨシくんと仲良くしてんのよ」
クラスの女の子からM菜ちゃんが目をつけられるようになった。そんで俺の周りの友達にもイジメは伝染していって、カオスが生まれたんだ。
当時、俺はしてしまった。決して選んでは行けない選択を。
「こっちくんなよM菜」
「臭いが感染っちゃう!!」
俺までイジメられたらどうしようという、自分勝手でゴミ虫みたいな思考が、好きな女の子を平気で貫いたんだ。言葉で。
M菜ちゃんは学校に来なくなった。
そういうのを夢で追想したんだ。クソッタレが。
どうせ寝れないので、朝食をとりながらface◯ookで昔の友達の名前を検索してみた。
B高→A大卒
28歳 20☓☓ ◯月△日 結婚
ああこいつ地元の底辺校いって、県外のFラン私立行ったんか。親泣いたやろな。でも結婚してるわ。意味わからん。
Max高→Z卍大卒
大手◯◯社の元社員。
今は◯◯ ☓☓さんの手掛ける高次元宇宙の疑似生成装置に感化され、会社を退社。
現在は☓☓さんのグループに入り、神社の神様を写真に収めたり、多次元空間を観察し、記録に収める毎日。詳しくはメディア欄に全てが載ってあります。
なんやこれ。俺の大親友やったんやけどな。めっちゃ地元で頭良いで有名な高校に入学して偏差値やばい大学いってんに、勉強しすぎて気でも狂ったんか。
って太陽の陽射しが神様に見えるって、神様舐めすぎやろ。
「アホらし、走ってくっか」
幸い近くに河川敷がある。俺は買ったまんまだったスポーツシューズを、6年越しに履いた。
走った気分は最悪だった。
ヒグラシがチキチキチキチキ、メスにセックスアピールしてくるし、俺はんなもん聞きたくはなかった。
早朝なんで、黙ってくれやと思いながらイヤホンを耳につけてスマホから音楽を流す。
ふぅ安心だ。ヒグラシ共のセックスアピールはもう聞こえないと思ったら、今度は蚊柱が走る俺を追いかけてきた。
蚊柱の正体を中学生の頃に調べたことがある。ユスリカというハエの仲間で名前の『カ』と違って吸血はしない。
血は吸ってこないんだけど、蚊柱っていうのはオスとメスの求愛行動が織り成すものらしい。
あの自転車漕いで歌、歌ってるときに口に入ってくるゴミ虫がよ。束になって乱交パーティーしやがってんの。それを無視したら「ほれほれ見ろよ」つって、人間にアピールしてくんの。追いかけてくんの。
くたばれ世界、滅べよ世界。
結局俺が弱者男性であるのは解ってんの。結局俺がゴミ寄りなのもわかってんのよ。
でも、セックスしたいとは思っても俺は人を心から信用できないから、なんかできないんだ。
俺みたいな拗らせ28歳童貞が存在するんだろうか。俺みたいな、社会不適合者が──。
真のゴミ虫は満場一致で俺だろう。でも観てほしい、この陳列されたゴミ虫たちを!!
謎に湧いてくる声のでかいフェミニストに、立ち位置のわかってない芸人。
嫉妬でM菜ちゃんのイジメをする女子生徒に、それに便乗する俺の友達。
輝かしい実績からスピリチュアル沼にはまってしまうバグは何だ?
そして蚊柱、お前は消えろ。
全部全部詰まってる。俺が悪いんじゃない、狂ってる俺たちが悪いんだ。ようこそ社会へ、ようこそ人生へ。
あー、異世界転生してぇなぁ。
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