小説「風の華」序章(3)
翌日は、学校を休むつもりでいたが、華は美術部の話し合いがあることを思い出した。
(いいわ ふりまさわされるのはごめんだ)
華は自分でも、割り切りの速い人種だと思っている。いつまでもごちゃごちゃしているのは嫌いだ。友だちも あとを引かないさっぱりとした華の性格を好んでくれている。
美術室に入ると、数名の部員が集まっていた。華があいさつをしかけた時、部員たちが話をやめたのがわかった。なんとなく気まずいような顔を並べている。
「どうしたの なんかあったあ」
いつものように、華は明るく振舞った。部内で問題が起きても、心配な様子は見せず笑顔でいればどうにかなるものだ。
しかし、部員たちは困ったような顔で黙りつづけている。
「なに?遠慮せずになんでも話していいよ」
華はさらに笑顔になって声をかけた。
ようやく、同級生の凛が、真面目な表情で華を見つめると、気づかうような口調で言った。
「昨日ね。潤君と翠が二人きりで歩いているのを、うちの生徒が見たんだって」
華は、自分の顔が、急に青くなるのを感じた。
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