見出し画像

【 レビュー】 ケン・マクナマラ著 『図説 化石の文化史』 (原書房)

【 人類は太古から、化石を愛で、その意味を探究してきた 】

 17世紀。それは理性の時代であり、「数千年も続いた無知と迷信という闇に" 科学" の光が射した胸躍る時代」だった。ニュートンライプニッツロバート・フックジョン・レイといった巨人たちが迷信を打ち破り、自然界の神秘を解き明かすようになっていた。そして、化石に対する科学的理解を求めるアウトサイダーたちが現れた。
 化石が、過去に滅びた古生物の遺骸の名残りに由来するという事実はいまでは、常識となっている。しかし、これは、長い間、確立された事実ではなかった。
 ルネサンス期に至るまで、自然を理解する手引きとされた大プリニウスは、化石が過去の生物に似ているのは偶然だと片付けた一方で、アビセンナのように生命に起源すると考えた学者もいた。
 本書では、化石にまつわる美しい図版とともに、化石の科学的価値は語らない。先史や古代以来、人類が世界各地で化石を利用してきた証拠から、化石が神話の英雄の痕跡だと考えた人類の想像の源泉としての役割、人類の化石観の変遷を解き明かす。
 先史時代から人類は化石の意味を探究してきた。化石が科学的対象として扱われる遥か以前から、化石は人類の文化の一部だった。
 化石に魅了される人はもちろん、歴史や科学、アートが好きな人など、本書の読者層は幅広いだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?