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ロルフ・ドベリ著『News Diet』 レビュー ニュースフリー生活のすすめ

今回レビューするのはこの本です。

『Think clearly』の著者、ロルフ・ドベリが提案するニュースフリー生活のすすめ。
著者自身、子どもの頃からニュースが身近にあり、ニュースを平均以上に消費する人だった。
しかし結果的にニュースから自由になった。
本書は、ニュースが溢れる世の中で、より明晰に思考し、よりよく生きるための本である。

私が選んだ要点は以下の通り。

・あなたの人生における重要なこととニュースの間には、何の関係もない。
・ニュースの消費は精神にだけでなく、体にも害である。
・ニュースを消費すると世界への理解が遠のく。
・ニュースを消費すると、情報量が多くなる。
それにより、自信過剰になり、決断力が落ちる。
・ニュースの発明は1650年。発明されてまだ日が浅い。
・ニュースを100%絶っても、本当に重要なことは、耳から入ってくる。
・ニュース消費は時間の無駄である。膨大な時間が奪われている。

著者は主に学術研究と個人的な経験の裏付けをもとに、ニュース消費の問題点を語っている。
ニュースを消費する代わりに、著者がすすめるのが、
「世界の複雑さに対応しうる長文記事や書物を読もう。」ということ。
つまり、ニュースを消費しても、この複雑な世界を理解することには、近づくどころか、大きく遠のいてしまう。ニュースは、大量の情報のバラバラの欠片に過ぎず、それらを集め、総合しても、世界の正確な姿を捉えられない。
世界を知るのではなく、理解するには、しっかりと分析した本や長文記事を読むのがよい。

著者のメッセージは、「私たち個々人が影響を及ぼせることと、及ぼせないことをはっきりと見極めること。あなたに大きな影響を及ぼすことには取り組むべきだが、影響がないことは気にしなくていい。」
これは、ストア派の不安対処法であるけれど、ニュースにも言える。

次のニ点に納得した。

一に、「個人的に重要なことを重視する」ということ。日常のさまざまなこと、例えば、家族や家庭状況や友人の様子や仕事、趣味などをニュースよりも優先するということ。
二に、新しいことと重要なことは同じではない、という点。


ニュースジャーナリズムの問題点に対する、著者の考えも傾聴に値する。

『Think clearly 』がとてもいい本だったこともあり、本書を読んでみたが、この本もすばらしい本だった。

と同時に日常の感覚を裏付けてくれた本でもあった。日常の感覚とは、ニュースを視聴すると、幸福度がダウンし、気分が沈むという私自身の実感である。現代では、テレビをつければ、5秒とかからずに戦争の状況や紛争についてのニュースが目に入ってくる。ウクライナ侵攻の戦地の映像も、見ることができる。しかしそれらの映像は、視聴者に多少なりとも配慮がされているとはいえ、かなりインパクトがある。
それらはとても悲痛な映像であり、視聴者の多くが、程度の差こそあれ、ネガティブな気持ちになることだろう。少なくとも私は、そうなるので、ウクライナ侵攻関連の映像は全く見ていない。
著者のドベリは、ニュースを完全にシャットアウトすることを自らで実践していくなかで、無関心を咎められたり、無責任な態度ではないか、というような指摘を受けたことがあったと本書で述べている。
しかしドベリの提案は実りあるものであり、正しいように私は思う。ニュースを見たり、読んだりしたところで、核心的に重要なのは、その問題なり課題が解決に近づくことである。そして、我々はニュース報道の出来事に微々たる、いや、全く影響を及ぼせないことがほとんどだ。だとしたら、重要なのは、情報を飲むことではなく、事象の理解に少しでも近づくことである。それが世界を前進させるのに、最も有意義な選択なのだと、本書を読み、理解した。

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