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奥本大三郎著『虫の宇宙誌』を傍らに、昆虫を綴る。

人新世という言葉を初めて認識したのは、ナショジオ日本版2020年5月号の『昆虫たちはどこに消えた?』と題する、昆虫の世界的な減少を伝えた記事を読んだことがきっかけだったと思う。


昆虫は地球上に生息する生物のなかでも、群を抜く多様性を持っている。昆虫の進化史は、サピエンス以前、人類以前、哺乳類以前、いや、恐竜以前の4億年以上前からであるという。それほど古くからこの地球上に暮らしてきた。だからこそ、多様性を保ってきた。

ではなぜ、この地球の長老である昆虫が、これほどの減少を報告されているのだろうか。

人類は、もはや地球の気候を変えるまでになった。人口は爆発的に増え、いまや70億人である。2050年には100億人に達するとまで予測されている。地球がパンクしそうな印象を受けた。

生物多様性は危機的な状況にあり、気候変動や農地や郊外の拡大、農薬の使用、都市化、森林伐採などによる、複合的要因によっていまや6度目の大絶滅が起きているといわれている。ジャーナリストのエリザベス・コルバート氏の『6度目の大絶滅』(NHK出版)は、それを綿密な取材や考証によって示していた。

生物学者のエドワード・O・ウィルソンは、このように指摘している。もし、人類が突然姿を消しても、地球は「一万年前の、バランスがとれた豊かな環境を取り戻すだけだ。しかし、昆虫がいなくなれば大混乱に陥る。」と。(ナショジオ日本版2020年5月号より)

この特集で知ったのだけど、昆虫は地球のエコシステムに絶大な影響力がある。昆虫が、他の生物の栄養源となり、糞や枯葉、腐肉などを分解し、害虫を駆除し、花粉を運び、土壌を改良することで、地球のエコシステムが健全な状態に保たれているのだ。つまり、昆虫という存在は地球の長老であり、守護者であるといえる。

植物・昆虫・鳥類。この三つの関係しあう生物群だけでも、いまや危機的な状況にあるといわれている。世界中で、生物学者や環境保護活動家が奮闘していることを知った。

今まで、昆虫関係の本をたくさん読んできたわけでも、自然保護に従事したことがあるわけでもない。けれど、この危機に関心がある。自分でもできることは何かないか、と思う。まだ行動したことはないけれど。

さて、ここでようやく『虫の宇宙誌』を紹介することになる。

56年度読売文学賞受賞――近頃流行の自然観察の記録とは、ふた味も三味も趣を異にする、複眼的な視野でとらえた昆虫たちのドラマ(週刊文春評) 虫や、自然をめぐる、精神の散歩、真摯でしかも愉快な一冊(日刊ゲンダイ評)ナチュラリストの昆虫博物誌。(http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=182

この本を入手したのは古本屋で、しかも文庫だった。200円で買えた。上のリンクは入手できる青土社の公式のサイトです。

『虫の宇宙誌』は昆虫を子供のころから、ずっと愛するナチュラリストの奥本大三郎さんが著者です。文学的で詩的なひとつの宇宙であり、ユーモアあふれる知的遊戯。そして、知的冒険でもある。

自然を守る、というのは実際に行動しなければならないということだけではないと思っている。まずは自然を知る、学ぶことを可能にする読書。ぼくはそれに喜びを感じる。

最後に、ナショジオ日本版の2022年3月号に「昆虫ホテル」というアイデアが紹介されていて、おもしろいと思ったので書きます。

まず小さめの蓋の無いダンボール箱を用意する。そのなかにトイレットペーパーの芯や紙を巻いた筒を入れる。最後に枝や草、葉っぱを詰めて庭の片隅において、完成。昆虫が安心して、休息したり、産卵できるという目的があるという。今度つくってみたい。



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