見出し画像

ライト兄弟とイーロン・マスク #7

なぜ、あの人はあそこまで必死にやれるのだろうか?皆さんも、そう思ったり、またそう言われたりすることはないでしょうか。

「確かにそれがあったほうが良いと思うけど・・・」で思考が停止し行動しない人(私含め大半がこちらだと思います)と、周囲からは理解できない熱量で突き進む人の差はどこにあるのか。その象徴だと私が思う、ライト兄弟とイーロン・マスクの自伝から考察してみました。

今回の考察では、U理論のフレームワークを活用してみます。ノウハウ・やり方ではなく「内面のあり方」を論点にする際に、非常に合う理論だと考えています。

U理論とは、マサチューセッツ工科大学上級講師、C・オットー・シャーマー博士によって生み出された「過去の延長線上でない変容やイノベーションを個人、ペア(1対1の関係)、チーム、組織、コミュニティ、社会のレベルで起こすための原理と実践の手法を明示した理論。

マンガでやさしくわかるU理論 日本能率協会マネジメントセンター

今回フレームとして活用するのは、U理論における3つのプロセスです。このプロセスに沿って、ライト兄弟とイーロン・マスク(以下マスク)の事例を比較しながら考察を進めてみます。

【U理論の3つのプロセス】
①センシング
ただひたすら観察する(内面の状態の質の転換を促す)
②プレゼンシング
一歩下がって内省する。内なる知が現れるに任せる(大きな自己実現につながり出現する未来を迎え入れる)
③クリエイテイング
素早く、即興的に行動する(出現する未来として迎え入れた感覚を頼りにしながら試行錯誤を繰り返し、実践につなげる)

マンガでやさしくわかるU理論 日本能率協会マネジメントセンター

【引用・参考文献】
デヴィッド マカルー 秋山 勝 ライト兄弟 イノベーション・マインドの力 草思社、ウォルター・アイザックソン 井口 耕二 イーロン・マスク上下 文藝春秋、中土井 僚 松尾 陽子 マンガでやさしくわかるU理論 日本能率協会マネジメントセンター

A_センシングを軸に考察

まずは観察からという点は、ライト兄弟もマスクも同じでした。ライト兄弟はひたすら実家にあった書籍を読み込み、さらに外部機関へ手紙を出して一般公開されていない資料を取り寄せています。マスクも、チームメンバーへ「要件を疑え」と号令を出し、前例をひたすら調査していきます。

2つの事例を考察する上で、異なるポイントが2つあります。1つ目は、ライト兄弟が挑んだ飛行機は当時まだ前例がありませんでしたが、マスクのスペースシャトルの場合は前例があったことです。2つ目は、ライト兄弟の時代はインターネットが無く情報収集にコストがかかりましたが、マスクの時代(現代)はインターネットがあるため、検索すればすぐに情報が収集できることです。

そのような状況の中でも、ライト兄弟は情報収集をし、それをもとに命がけで実証実験を行います。結果、それらの情報は机上で組み立てられ、実証実験がほとんどされていなかったものであり、飛行機開発へはそのまま活用できないことが判明します。そこで、ライト兄弟は今後の指針を失い一時的に落胆しますが、すぐに立ち直り下記のような言葉を残しています。

先人たちの仕事は、抑えがたい情熱で私たちを感化し、根拠のない好奇心を額に汗して働く者の果敢な熱意に変えた。

ライト兄弟 イノベーション・マインドの力 草思社

好奇心は誰でも持ち合わせていると思います。しかし、それを自分ゴト化して熱意へはなかなか変換できません。ましてや、ライト兄弟のように成功への道筋が見えていない状況ではなおさらです。

B_プレゼンシングを軸に考察

ライト兄弟は「人類の飛行」、マスクは「宇宙開発により、人類を存続させる」という未来を迎え入れます。これは、センシングの段階でもすでにぼんやり見えていた未来が、このタイミングで自分の中に入ったという解釈を私はします。

ここでの差は、未来の中に客観的な視点があったか否かだと思います。マスクの中にある未来は、客観的な視点(ビジネス的な視点など)も持ち合わせていますので、一般的な思考でも理解できる範囲がライト兄弟と比較して広いです。ライト兄弟は、主観的な視点のみなので、仮に飛行機が開発できたとしても、それをどう運用するかは周囲からの意見を参考にしている状態でした。完成したあとにビジネス展開へ向け積極的に活動していましたが、それは後付けとなっており、満足のいく結果は得られなかった印象です。※戦争時利用などを考えていたという説もあり

C_クリエイテイング

ライト兄弟は飛行機開発へ向け、テストに適したロケーションを身体を張って見つけ、最悪の場合死亡してしまうリスクも抱えながら兄弟でテスト飛行を繰り返します。リスクヘッジとして、兄弟二人が同時にテスト飛行をすることはしませんでした(兄弟二人が死亡してしまうことを避けるため)。マスクは、チームメンバーを叱咤激励しながら、低コスト&スピーディーにテストを繰り返します。

ここでの差は、繰り返すテストが死亡リスクがあるか否かです。ライト兄弟は、何度も大怪我を負いながらテスト飛行を繰り返します。完成間近の頃は周囲からの応援もありましたが、それまではからかわれているような状況にもあったにも関わらずです。命がけであることは称賛しません。安全にテストができるべきだと言い切ります。ですが、時代背景がこうしたのも事実かと思います。論点にしたいのは、ライト兄弟をそこまで突き動かしたのは何かということです。

また、上記内容に関してマスクの下記コメントを紹介したいと思います。

技術というものは、放っておいても自動的に進歩するものではありません。今回のフライトは進歩の裏に人間の力があることをはっきりと示してくれました。

イーロン・マスク上下 文藝春秋

やもすると、現存する技術をいかに活用するかという思考になりますが、そもそもそれを作ったのは人間が未来を迎え入れて行動した結果であり、それをさらに進歩させるのもまた人間だということです。

まとめ

著名なイノベーターの事例から考察しているので、一見すると「まあ、すごい人はそうだよね」となってしまいそうですが、私は誰でも真似できる普遍的な要素があると思っています。イノベーションという言葉のインパクトにおそれをなす必要はなく、眼の前のちょっとしたことをより良い状態にすることも、イノベーションだと思って一緒に考えさせてください。今回、私が掲げた問いと、考察から導いた回答は下記の通りです。

【問い】
「確かにそれがあったほうが良いと思うけど・・・」で思考が停止し行動しない人(私含め大半がこちらだと思います)と、周囲からは理解できない熱量で突き進む人の差はどこにあるのか。

【回答】
自分ゴト化(センシング)の深さです。ただし、自分ゴト化できることとできないことがあるので、そこは気をつけて。

今回考察してみて、上記回答へ記載した当たり前のことへの理解がより深まりました。これは個人的に重要なことだと思っています。前提として、他人が自分ゴト化していることを、自分も自分ゴト化することはできない場合が大半だと思うので、分けて考えないと危険です。ライト兄弟やマスクと同様のことを、自分ゴト化できないですよね。皆さんの職場や家庭でも同じようなことがあるかと思います。共感はしているので、お願いします!といったスタンスに徹し、遠くから応援するのが良さそうです。そもそも無理なことに対して「〜さんと同じように頑張れない私って、、(泣)」となっても損するだけです。

その上で、「でも何か行動したい」と思ったら、まずは「観察すること」からはじめるのが良いと思いました。これが、イノベーションにつながる、誰でも真似できる普遍的な要素です。外界へのスタンス「受動的:能動的」を、今より少しでも能動的=観察に割り振ってみるのが良いと思います。

個人的な体験としては、能動的かつそれが1次情報であることが重要だと思います。1次情報にしかない体感につながる要素が、自分ゴト化に直結した経験があります。その場の空気感や人の息遣いは、現場にいないと分からないです。テクノロジーがどこまで進んでも主役が人間である限りは、1次情報へ触れることの重要性は変わらないと思っています。

そこで、無理なく自分ゴト化できる未来が見えてきたら、それを迎え入れて行動すると良い成果が出せると思ってますし、その成果の大小に関わらず1人1人がこのようなマインドが持てると、気持ち良い社会が実現するのではないでしょうか。無理なくという点も重要で、何か外発的な動機で思考を止めて自分ゴト化し行動し始めても、結局うまくいかなかったときにすぐ投げ出してしまう可能性が高いです。

今回考察してみて、気持ちが楽になったことに加え、今後まずやるべきアクションが明確(これまでより能動的になマインド⇒興味があることを観察⇒1次情報へアクセスする⇒自分の内側から未来が出現するのを待つ)になりました。まとめは抽象的な内容になっていますが、個々で過去を振り返ってみると、何か新しいことに挑戦し成果を出した経験と合致するのではと思っています。

今回の内容が、少しでも誰かの気持ちが楽にできたり、次の一歩目を出すきっかけになったりすると嬉しいです。


この記事が参加している募集

#推薦図書

42,616件

#最近の学び

181,718件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?