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進むか、止まるか、どうするか。

1.時間の経過

つい先日、自分の選択で数日先の未来が変わってしまう選択にせまられた。
その選択はこれから説明する内容の次の日に選択を迫られることになる。

自分は、実家で生まれて引き取り手のなかったトイプードルを飼っている。今月ちょうど15歳だ。
今まで大きな病気やら怪我をする事なく、ずっとこんな日が続く様に思っていた。

しかし最近になり友人の愛犬が亡くなり、自分も意識的に色々見るようになった。
実際は色々な変化に気がついていたが、いつかくる“その時”から現実逃避してあえて意識しないように、まだまだ元気だと頭で思い込んでいたし、実際友人に愛犬の状況を聞かれたら、昔と対して変わらず元気だと答えていた。

しかし、生き物には、老化も寿命もある。
人間と同じで白髪が増えたり、足が遅くなったり、長い距離歩く事を拒否するようになったり、変わっていないわけではない。
大きく変わっているのに、少しずつ変化する事を時間の経過として考えないようにしていた。
そうやって現実から逃げていただけで、もうおばあちゃん犬になっていたのだ。

2.現在の状況

うちの家系は遺伝的に心臓の病気にかかって闘病生活が続く人や、自分が生まれる前に亡くなった親戚もいるらしい。
もれなく母親も心臓の病気を患い、入退院を繰り返していた時期があったが、今は落ち着いている。

今は自分が同じように病気療養中で、仕事を一時休んでいる状態だ。生活するにはどうしても出ていくものがあるが、時間だけはそれなりに自由になる。

3.突然の変化

最近はエアコンをつけても室内がとても暑かった。
ふと気がつくと、愛犬の調子がいつもと違う。
やっぱり犬も暑いよな。そんな事を思いながら扇風機を犬の方に向ける。

夜になっても、いつも食べているフードをしっかり食べた形跡はない。
それに、水分もまともに取ってないのかこんなに暑いのに水もいつもより残っている気がする。
一瞬、血の気が引く様な感覚と、気がつくと飼い犬が寝ている部屋に早足で向かっていた。

寝ている。息もしているようだ。
安心したと同時に違和感を感じた。
(いつもなら、気配を感じると迎えてくれるのに。)
呼びかけてみたが、反応はない。触ってみると熱がある様に感じた。
すぐ病院に連絡しないと。スマホの電話帳に入っている近所の動物病院に電話をしたが、当日の受付はできなかった。

一瞬、なんでだよ。という気持ちと怒りが湧いた。
そんな気持ちはグッと堪え気持ちを落ち着かせる。
「では明日の朝、一番早い時間で予約をお願いします。」

そこは理性的に対応できた。

4.落ち着かない夜と長い夜

様子が明らかにおかしい。目も焦点があっていないように見える。素人目線で見ても明らかに普段とは違うのだ。
早く病院に連れて行きたい。そんな気持ちで他の救急病院に連絡もしたが初診はどこも断られてしまう。

落ち着かない。もっと早く気がつくべきだったし、気にかけるつもりだった。
色々な可能性や気持ちがグルグルと次から次へと変化し、結局朝まで眠る事ができなかった。

5.かかりつけの病院へ

時間が来たのですぐ向かう。受付が終わり、そしてすぐに検査が始まった。
先生の顔がいつもより険しい。委員長先生の奥さんも、エコー検査の画面を見ながら声をかけてくれるが、なぜかいつもよりやさしく感じる。

検査の結果、子宮蓄膿症という病気になっていた。

6.手段の選択

そこで説明を受けたのは二つ。
①麻酔をし、手術をし患部の摘出。
②このまま、なにもしない。

この説明を聞いて迷わず①を選択しようとした。

7.リスクの選択

①を選択した場合、高齢犬のため、麻酔をする事でそのまま亡くなる確率も低いわけではなくある程度覚悟をした方がいいくらいの確率で、悪い結果になりそのまま目が覚めない事もあるという。
②を選択した場合、1週間程度は時間があるが、外科的手術しか方法がないために、確実にそのまま亡くなるという。

そして、①を選択した場合、かかりつけ医な病院では状況が良くないため対応できないという。
何を言っているかわからない。寝てない事と、現実を突きつけられ、軽く混乱していた。
結局は高度医療センターという24時間対応できる病院を紹介するのでそこに転院してほしいとのことなのだ。

8.未来の選択

「最終的にどうするか考えてほしいと時間をあげたいが、今の状態だと、手術できるのはおそらく明日がリミットだけど、それもあやしい。あまり考える時間はない。」

続けて先生は過去の症例を含めて説明を続けた。

「手術をしたからといって必ず良くなるとは言えないこと。あとは、手術費用が今日の診察とは別に高度医療センターでは節制されている金額が高くなるので、手術だけで最低40万円ほどかかる。」

と説明を続けた。そして、高度医療センターのパンフレットを渡し、受け入れ可能かまずは確認するといい奥に消えていく。
パンフレットを見ると入院費用が一日、35000円から45000円と記載されていた。
そして、24時間体制の看護体制でとても素晴らしい病院だと。

10日程度は入院になるようなので、最低でも50万円から70万円。状況により追加費用が発生する可能性があるとのことだ。

自分の事もあり、生活ははっきり言って余裕がない。
でも悩んでいる時間の余裕もない。

迷う事なく手術してください。と言えない自分がなさけない。
突然死んでしまうなんてあんまりじゃないか。
断れば後悔するし、麻酔から目覚めなければ最期の瞬間にもたちあえず、さらに後悔するんじゃないか。
生活のことだってある。

でも、食べるものが減ったっていいじゃないか。
すぐ必要ないものはかわなければいい。

1週間も苦しませて、自分のエゴで一緒にいる時間を選択するより、できるだけやってあげた方がいいじゃないか。

正直最終的な金銭的な負担も手術のリスクも怖い。
でも、何もせず後悔するのはその後耐えられる自信がなくてもっと怖い。

そして、高度医療センターでの手術をお願いする事にし、かかりつけ病院をあとにした。

9.強い日差しと長い時間

高度医療センターで、一通り説明を受け、そのまま手術を受ける事になった。一度血液検査など一通りの検査後に手術に入るとのこと。
それから、しばらくの時間が経った。

検査が終わり結果を聞く。なんとか手術できる状態であろうと説明を受け、再度金銭的な負担の説明、誓約書の記載など、一通りの手続きが終わり、手術に入った。

手術開始が14時半を過ぎた頃だった。18時には終わるという。それまで病院の中にいるのが落ち着かない。
強い日差しが街を焼くほど暑かった。
しかし、外で待つ事にした。

10.手術が終わり

とりあえず、手術は終わり麻酔からもさめた。
さっきまであった毛は手術に伴い刈られていた。
カゴの中で震えていた。

ひとまず声を変えることが許可され、声をかけた。
迎えに来たと勘違いしているように見えたが、麻酔ですぐ倒れてしまうため傷口が開いてしまわないか。執刀医の先生がいるまえで泣きそうな気持ちになった。とりあえずここにいるのは良くなさそうだ。そう思い、面会は終了した。
その後、全ての説明をうけ、行きと違い帰りは一人で帰った。

11.退院するまでの生活

普段寝る時は愛犬を抱いて腕枕のようにして寝たりしていた。
15年の習慣が突然亡くなるというのはとても違和感がある。
今頃寝ているのだろうか。そんなことを考えながら部屋でボーッとしていた。
相変わらず、エアコンの効きは悪い。そして扇風機の風が部屋の中を通り抜ける。

その時、カサッとコンビニ袋の音が部屋の中で聞こえた。
だらしない自分は買ってきた物をよく床に置いたままにする。
そんな時、愛犬が顔を袋に突っ込んで、匂いを嗅ぐ。その時と同じ音に聞こえた。ビニール袋を扇風機の風が揺らしただけで、気持ちが揺さぶられた。

12.無事退院する

いざ退院となり、とても喜んでいた。
タクシーで移動中、カゴの上がファブリック素材の網になっている部分に鼻を押し付け、キュンキュンと声を出す。
網越しに撫でる。そうしたら今まで取ったことない行動をした。
ファブリック素材の網なのでブヨブヨした感じで柔らかい。そこから撫でていた指を甘噛みし、離さないのだ。
この若干の指の痛みが攻撃によるものでないことは明白だ。
家にいられなかったことで、こんな行動をとっていると考えると苦しい気持ちになった。

13.退院するが

食欲もある。とても元気だ。安心した。
そうしてら数日が経過した。
なんとなく体温が熱いような気がする。
嫌な予感がする。しかしまた夜間だ。
朝になったらすぐ病院に行かなければ。

退院後


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