鉄鋼業界を退職したあとの転職先(社名の記載あり)

最近、アルムナイ(企業を退職した人々のネットワークのこと)が着目を浴びています。
鉄鋼業界は終身雇用の色が強い業界ですが、さまざまな理由で業界を離れる社員も少なくありません。
今回は鉄鋼業界を退職した人が、どんな理由で、どのような業界に転職していくのか、について話したいと思います。


大前提:技術系は転職に不利

鉄鋼業界においては、技術系社員(理系)は転職しづらく、事務系社員(文系)の方が転職しやすい構造にあります。今回の記事ではその理由を詳しく述べていきます。

技術系社員の場合

技術系の社員が転職する割合は相対的に低いです。3年で約10パーセントが退職する程度であり、その多くは企業内に留まります。

転職しづらい理由

  1. 事務系社員よりも、(大学院での研究経験などにより)忍耐力が強い点

  2. 技術系社員の多くは大学院修士課程まで進学した結果、事務系社員よりも平均年齢が高い。そのため結婚している割合が高く、転職を決断しづらくなっている点

  3. ニッチな技術領域での専門知識が身につくがゆえに、その専門性が他の業界で評価されにくい

転職しづらい理由の詳細

1について、もう少し詳細に述べると、入社して1, 2年の業務内容というのは非常に地味です。総合職で入っても電話番をさせられたりします。
しかも配属箇所は大抵田舎の僻地に点在するため、入社前に思い描いていた「グローバルな製鉄カンパニーでビッグな仕事をする」という幻想が打ち砕かれ、そのギャップから退職を検討し始めます。技術系社員は大学・大学院で地味な研究経験に慣れているため、多くの人が踏ん張っています。

2は通称「嫁ブロック」というやつです。配属先で知り合った異性と結婚してしまったりしたら、もはや逃げ場はありません。

嫁ブロックとは既婚男性の転職などを奥様に反対・制止されることを意味しています。

https://note.com/catalystagent/n/nae1d354ba576

一番深刻なのは3かもしれません。鉄鋼業界の技術系社員は、冶金や圧延工学などニッチな技術領域での専門知識を持っているため、その専門性が他の業界で評価されにくいという現状があります。転職先は同種の製造業に限定されてしまうケースが多いです。鉄鋼業界はメーカーの中でも比較的高給与を誇るため、転職により年収が下がることも少なくありません。そのため、技術系社員は転職先を選ぶ際に慎重にならざるを得ず、結果として離職率が低くなる傾向があります。

事務系社員の場合

一方、事務系社員の離職率は非常に高く、3年で25パーセントほどです。事務系社員は、経理や営業、人事などのゼネラルなスキルを身につけることができ、他業界への転職も比較的容易です。

事務系社員の多くは、体育会系や帰国子女、高学歴者が多く、ポテンシャルの高さで採用されているケースがあります。そのため、転職市場でも高く評価され、転職がうまくいく傾向にあります。

また入社時点での年齢が比較的若いため、キャリアやライフプランの選択肢が技術系より柔軟である点も早期の離職を促していると言えます。

意外と見過ごせない転職しやすい理由

事務系が転職に有利な理由で見過ごせないのが、「3, 4年毎にジョブローテーションで地方と東京を行き来する」ということです。
多くの企業は東京に集中しているため、地方から転職活動をしようとすると、(今はコロナ禍を経てオールリモート面接で内定が出たりしますが)有休を取って都内で面接を受ける、というサラリーマンにとっては中々ハードルが高いイベントが発生します。

事務系社員の場合は東京勤務を命ぜられたタイミングでサクッと転職してしまうケースが多いです。

具体的な転職先

ここまで述べたきた通り、技術系社員は転職に不利な条件が重なりがちです。
以下では、具体的な職種に応じた転職ケース(社名の記載あり)を見ていこうと思います。

技術系(薄板部門)

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