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随想(詩について)

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2023年12月の記事一覧

詩はわかりやすく書くべきか

よくある詩の区分けに、「むずかしい詩」と「わかりやすい詩」というのがある。

もちろん人それぞれの感じ方だから、どの詩をむずかしいと受け止めるかは、人によって違う。ただ、それでも多くの人が「これはむずかしい」と感じる詩というのはある。

もともと詩というのは、詩を読んだり書いたりしない人にとっては、「詩とは、普通の人にはわけのわからないむずかしいものだ」という共通した考え方がある。

さらに詩を読

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自分の詩がマンネリ化してきたら

ぼくは昔、親しい友人から、「松下さんの詩には飽きた」と面と向かって言われたことがある。

また、これは何十年も経ってから言われたことだけど、ある詩人は「初めて松下さんに会った時に、ああマンネリな詩を書いている人だな」と思ったそうだ。

ここで考えなければならないのは、当時ぼくは、たしかにマンネリで人に飽きられるような詩を書いていたけれども、自分では自分なりに一作一作、頑張っていたつもりだったことだ

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詩を書く人は繊細か

詩を書く人は繊細だ、と言われることがある。人よりも感受性が豊かだということなのだろう。

でも、本当にそうなのだろうか。

とくに資料や根拠があるわけではないのだけれど、ぼくは、詩を書いているから繊細だとは、必ずしも言えないのではないかと思う。

詩を書いている人に、確かに繊細な人はいる。けれど同時に、詩なんか書こうともしないで生きている人も、それぞれがそれぞれの繊細さの中で生きている。そうでなけ

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詩集を出すとはどのようなことか

詩集を出すとはどのようなことか

この時代の、詩集に対する熱い思いがいつまで続くのかをぼくは知らない。昔と違って今は、SNSで詩は簡単に発表できるし、少し勉強をすればデジタルの本を作ることもできる。だから、紙の本に対する情熱も、いつかは少しずつ減ってゆくのだろう。

でも、ぼくが詩を書き始めた60年前には、ネットもデジタル本もなかった。だから、自分の詩がきれいな活字になることにとても感動をした。さ

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人はなぜ、よりよい詩を書きたいと思ってしまうのか

今年は何度か対談をしたり、詩の会を持ったりした。学ぶところは多かった。

その中でぼくが何回か話をしたのは、「人は詩を書くことを楽しめばいい。それなのに、なぜよりよい詩を書きたくなるのか」ということだった。ぼくは知識に基づいて話をしたり、理論立てて考えるのが不得意なので、いつも一人で考えた勝手な思い込みを話すしかないのだけど、その時に話をしたことは、

なぜよりよい詩を書きたくなるかと言うと
(1

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わたしの詩を読んでください

ぼくには、詩を書いて発表するというときに、どうしても頭にこびりついている情景があるんです。

ずっと昔のことです。ぼくが学生の頃のことです。新宿駅西口で、路上で、人が多く通りすぎる脇で、道端で、「私の詩を読んでください」と書いた札を立てて、そこに座っている女性がいました。自分の(たぶん手作りの)詩集を何冊か並べているんです。当時はぼくも詩を書いていましたけど、「ああすごいな、勇気があるな」と思って

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