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今更ですがROEのポイント ー 株主総会の時期ですので、個人株主・ビジネスマンの方向けにポイントを簡潔に整理しました


ROEは今年の流行語大賞ですね。けど来年以降も引き続き大賞候補でしょう

6月の最終週は企業各社の株主総会がラッシュです。議決権行使助言会社の賛否推奨レポートも把握して、賛成率の向上に必死に取り組んでいる企業も多いかも知れません。
本日は株主総会で一番質問しやすいROEについて整理します。今更感もありますが、株主総会の時期も近いということで株主の関心事項と思いますので、あらためて初歩的なテーマについてお話をしたいと思います。

ROE=純利益÷株主資本ですね。このROEを向上させるために多くの上場企業は苦労しています。数年前まではROEが低くても放置している企業が非常に多かったですが、この1~2年は多くの企業は改善に真剣に取り組んでいます。
背景は、東証が株価を意識した経営をせよと企業に23年3月末に要請し、株価を上げるにはROE向上が重要な要素の1つであるからです。この東証の要請を受けて、日経新聞でも時々記事を大きく掲載しています。あれだけ大きく記事が出ると上場企業各社の経営トップは気になりますよね。

企業はROEを上げないとどうなるの?

東証からペナルティをくらうことはありませんが、会社の株式を保有する機関投資家が経営トップの取締役選任に反対します。

ざっくりと言うと、ROE5%未満が3期続くと機関投資家は怒ってしまい、その怒りの矛先は株主総会での経営トップの選任に議決権の反対行使をする行動で現われるということです。「我慢の限界!」ということです。このあたりは以前に記事を書いておりますので、最後に再掲します。

なお、この数値基準は将来的には確実に上がります。多分、8%になると思います。というのも、日本企業の全体の株主資本コストは約8%と言われており、このコストと比較するのがROEですから。勿論、企業によって株主資本コストは8%以上の場合もあれば、以下の場合もあると思いますが、平均すると8%が目安ということです。

では、個人株主は株主総会でどう判断すれば良いかというと、基本的には個人の自由です。機関投資家はアセットオーナーから金を預かり運用していますが、個人は自己資金で運用しているので判断は自由です。とは言え、機関投資家の考えが今の資本市場の常識ですので、個人株主の方もROE5%を目安に株主総会で賛否を判断するというのは1つの考えだと思います。

ROEが低いと株価も上がりませんので、そういう経営トップは交代して欲しいというのが機関投資家の考えですが、これは個人株主にも共通する思いだとは思います。社長が変われば企業の姿勢・文化は変わるというのが多くの機関投資家の共通した考えです。もっとも交代すれば直ちにROEが改善するかというとそうではありませんので、やみくもに経営トップに反対するのではなく、適切な能力・経験を持つ後任の方を選定することがセットになるとは思います。

ROEを上げるには?利益率の向上施策が肝

この1年で配当を増やす企業多いですね。先日の日経新聞で次の記事がありました。

自社株買いや増配が増えている理由はROEの数値を上げるためです。ROE=純利益÷株主資本です。配当金は株主資本にある繰越利益剰余金が原資となるわけですが、配当が増えてここが減ると、自ずとROEが向上することになります。分母が小さくなるからです。自社株が増えると株主資本にマイナスでカウントされるので同じです。ではこれで十分でしょうか?

結論から言うと十分ではないです。それは分子である利益が増えないとROEの向上は翌年度以降は持続しないからです。自社株を毎年確実に一定量を実施すれば別ですが、なかかな難しいし、そもそも相当量の自社株買いをしないとROE向上にも寄与しません。

だから、恒常的にROEを上げるには利益を増やす、つまり利益率を上げることが必要になるのです。利益率が改善することでROEが向上すると、PERも高くなるということだと思います。
だから株主としては、総会に出席するのであれば、その企業がどういう施策でROEを向上させるのかしっかりと質問することが大事だと思います。

過去の記事を再掲いたします。ご関心のある方はご覧頂ければと思います

ROE5%云々で機関投資家の議決権行使に絡めて過去に記事を書いておりますので、ご参考までに再掲いたします。ご関心のある方はご覧頂けれればと思います。