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まじょのなみだ(17)

みんながいる時も、母は

「ほら見てごらん。うふふ。
すっごいかわいいのがひらひら浮かんでる。ほんとかわいいね~」

って幻覚を見ている。

私は、母にはもうお迎えの天使が見えているんじゃないかと、
その時ばかりは我慢できず、病室を出た。

そんな状態でも、母の元職場の同僚が仕事の相談をすると、
はっきりと的を得た回答をする。

みんなが母を頼りにしていると聞いていた。
きっと、仕事を急に休むことになり母は気がかりだっただろう。

それからは、より起きている時間が少なくなっていった。

それでもトイレまでは、両脇を抱えられてでも歩いて行っていた。
自力で立ち上がれず、抱きかかえた母の体は細すぎて、
でも重かった。
私に寄りかかった姿が鏡に映った時、

「あぁ、私はいま母の介護をしているんだなぁ」
と、なぜか淡々と思った。

母の赤いネイルは、半分ぐらいはがれていた。

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