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【コメディ】ミスター・ネイキッド

この記事はオーディオドラマシアター SHINE de SHOWに再掲されています。今後はそちらのアカウントにてご覧ください。

地球の人々を救うため、危険を顧みず闘うかっこいいスーパーヒーロー。
しかし、すべてのスーパーヒーローがかっこいいとはかぎりません。
そもそもスーパーヒーローがかっこいいなんて誰が決めたのでしょうか?

今回の主人は、なぜか人々から笑われているスーパーヒーロー。
彼が笑われている理由とは?
そして彼はそれにどう向き合うのか?

スーパーヒーローの孤独を切なくおかしく描いた、
いろんな意味で映像化不可能な、オーディオドラマならではのお話です。
SHINE de SHOW初の一人二役にもご注目ください!

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▶ジャンル:コメディ

▶出演
・ネイキッド:斎藤充崇(東北新社)
・結愛&ママ:山岡明日香(東北新社)

▶スタッフ
・作/演出:山本憲司(東北新社/OND°)
・プロジェクトマネージャー:大屋光子(東北新社)
・プロデュース:田中見希子(東北新社)
・収録協力:映像テクノアカデミア


『ミスター・ネイキッド』シナリオ

登場人物
 ネイキッド(?)
 結愛ゆめ(5)
 ママ(28)

ネイキッドM「私はミスター・ネイキッド。地球からはるか二百光年のネイキッド星に生まれた私は、ネイキッド人唯一の生き残りだ。地球に来た私は惑星を構成する重力や組成構造の違いによりスーパーパワーを得た。スーパーパワーを持つ者はヒーローになるべしという父の遺言を胸に、私は地球の困った人々を救うスーパーヒーローとなった。今日もまた、少女を救ったのだ──」
ネイキッド「もう、大丈夫だよ。結愛ちゃん」
結愛「うん。ありがとー」
ネイキッド「うむ」
結愛「あ、ママー!」
ママ「(駆けつけ)ミスター・ネイキッド! ありがとう、ございました(笑)」
ネイキッド「あのー、何か?」
ママ「いえ、何でもありません(笑)」
ネイキッド「え? 笑ってます?」
ママ「いえ、笑ってません(笑)」
ネイキッド「笑ってますよね?」
ママ「笑ってません(笑)」
結愛「ママわらってるー」
ネイキッド「やっぱり笑ってる!」
ママ「笑ってません。……ブッ(噴き出す)」
ネイキッド「あのね、今娘さんを救ったのよ」
ママ「(必死に抑え)はい」
ネイキッド「恩着せがましい言い方はしたくないけど」
ママ「(笑い抑えて)すいません」
ネイキッド「でも、笑う? おかしくない?」
ママ「はい……」
結愛「ねえねえ、なんでそんなかっこなの?」
ネイキッド「え?」
ママ「こら、聞いちゃいけません」
ネイキッド「それはね。この格好がお兄さんの星の正式な格好だから」
結愛「ふーん」
ネイキッド「やっぱり変かー。地球人から見たら変なのかー」
ママ「全然変じゃないと思います(笑)」
ネイキッド「じゃなんで笑ってるの」
ママ「笑ってま……くくっ……」
ネイキッド「完全に笑ってるよね。完全にアウト。この格好で笑ってるんでしょ?」
ママ「いえ」
ネイキッド「この格好なんでしょ? そうなんでしょ? このほとんど半裸で、上半身はシャツ着てるのに下は丸出し、みたいな。なのにマントはしっかり着けてる、みたいな。この格好で笑ってるんでしょ?」
ママ「いえ」
ネイキッド「じゃあ髪型? この〈失敗したアフロ〉みたいな髪型?」
ママ「違います」
ネイキッド「これ、しょうがないのよ。変身するとこうなるの。普段はお固い文房具メーカーの営業マンの姿なんですよ。でも変身するとこうなっちゃうの。仕方ないの」
ママ「大変ですね」
ネイキッド「いやいやお母さんみたいにあからさまに笑う人、初めてよ」
ママ「はい」
ネイキッド「え? ていうか僕、みんなから笑われてる?」
ママ「そんなことないと思います」
ネイキッド「地球人のセンスとはなんか違うなーって薄々感じてたけど。(結愛に)あ、触らないで」
結愛「なんでー」
ネイキッド「いや、くすぐったいから。ね」
結愛「なんでー」
ネイキッド「あのちょっとやめて」
ママ「そこは敏感なとこなの」
ネイキッド「ね、結愛ちゃん」
結愛「あー」
ママ「いやん」
ネイキッド「……ああ、うわああああーっ!(突如爆発)」
ママ「え?」
ネイキッド「なんでスーパーヒーローは変身しなきゃいけないんだ! 普段はスーツでビシッと決めてるのに。救いを求める声を聞いて、ただ助けに行こうとしてるだけなのに! なんで? なんでスーパーヒーローって変身しなくちゃいけないんだ! こうやってスーツ開いてこんな姿に変身しなくちゃいけないんだ! ……あれ? そういや脱いだスーツどうしたっけ」
ママ「さあ」
ネイキッド「こんなことやっててね、たまに警察に捕まりそうになるんですよ。わいせつ物陳列罪で。でも人々を救おうと頑張ってるんですよ」
ママ「お察しします」
ネイキッド「だってさあ、ほかにもいるじゃない。変なマークついてたりヘンテコな物持ってるスーパーヒーローって。その人たち、笑われてる? 笑われてないよね。なんで僕だけ? なんで僕だけ笑われるわけ? 地球人のセンスどうなってんの?」
ママ「いやー私、地球人代表じゃないんで」
ネイキッド「知ってますよそんなこと!」
ママ「変身しないとどうなるんですか?」
ネイキッド「変身しないと? 変身しないと出ないんですよ。スーパーパワー」
ママ「隠しても?」
ネイキッド「隠しても」
ママ「そこだけ隠しても?」
ネイキッド「ここだけ隠しても。ていうかここ隠したらもう笑いません?」
ママ「……がんばります」
ネイキッド「ここだけ隠したら格好よくなるんですか?」
ママ「いやー……(笑)」
ネイキッド「ね、格好よくないんでしょ? 全体的な問題なんでしょ?」
ママ「そ、そうですね……」
ネイキッド「そうなんだよ。ったく、なんなんだよ地球人のセンス!」
ママ「はあ……」
ネイキッド「はい。隠してみました」
ママ「あ、それなら」
ネイキッド「いやマントで隠してたら動きづらいって!」
結愛「ねえ、じゃあへんしんしなきゃいいんじゃない?」
ネイキッド・ママ「……え?」
結愛「へんしんしなきゃいいんじゃない?」
ネイキッド「だからー、変身しなきゃ困った人々を助けられないの!」
結愛「いつもそのかっこでいいんじゃない?」
ネイキッド「え?」
ママ「あ、そっかーっ!」
ネイキッド「いつも!?」
ママ「いつもそれだったら目が慣れるかな」
ネイキッド「いつも?」
結愛「いつもでそれでいいんじゃない?」
ネイキッド「いつもこの格好ってこと?」
結愛「そうそう」
ネイキッド「……いや、さすがにそれは」
ママ「そうですよ、ネイキッドさん!」
ネイキッド「え?」
ママ「センスが違うのは仕方ないこと。でもネイキッドさんがこの姿に誇りを持ってるなら、そのままでいいんじゃないですか?」
ネイキッド「……まさか……その発想はなかった。スーパーヒーローは身元がバレないようにいつも真の姿を隠していなきゃいけないものだと思ってた……」
ママ「そうしましょ。そしたらわたしも次は笑わなくなります」
ネイキッド「ほら笑ってた!」
ママ「あ!」
ネイキッド「結愛ちゃん、ありがとう。君は僕に大事なことを気づかせてくれたよ」
結愛「え?」
ネイキッド「きっと僕自身が恥ずかしがってたんだ。だから笑われてたのは格好じゃなくて僕の心なんだね。これからは堂々と、この格好で暮らして人々を救おうと思う」
結愛「やったー」
ネイキッド「そうすれば脱いだスーツを取りに戻らなくていいしね。あ! マサチューセッツ州方面から助けを求める声が聞こえる」
ママ「行ってあげてください」
ネイキッド「ああ」
結愛「がんばって!」
ネイキッド「よし! では行ってきます! トゥッ!」
   ジャンプ!
   ビヨヨーン、ビヨヨーン、ビヨヨーン。
ママ「そこでシューッと飛んだらちょっとはカッコいいんだけどな……」
結愛「えー、ゆめ、かわいくてすきー。かえるさんみたいじゃん」
ママ「そっか。がんばってるもんね」
                              〈終〉

シナリオの著作権は、山本憲司に帰属します。
無許可での転載・複製・改変等の行為は固く禁じます。
このシナリオを使用しての音声・映像作品の制作はご自由にどうぞ。
ただし、以下のクレジットを表記してください。(作品内、もしくは詳細欄など)
【脚本:山本憲司】
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*番組紹介*
オーディオドラマシアター『SHINE de SHOWシャイン・デ・ショー
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