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2022シーズン序盤 ウズベキスタンサッカーの動向 【更新中】

 この頃、不本意にも本業が忙しくなかなかウズベキスタンサッカーをフォローできていなかった。ご存じの方の通り、ウズベキスタンでは2022年のサッカーシーズンが開幕した。
 今年はいよいよカタールW杯が行われる。史上初のアジア2次予選敗退を喫したウズベキスタンは国際大会からは蚊帳の外……と思うなかれ。6月に開かれるU-23アジアカップの開催国はウズベキスタンだ。さらに翌年にはU-20アジアカップもウズベキスタンで開催予定と、中央アジアサッカーがフォーカスされる機会が増えそうだ。そのためにも、国内サッカーを盛り上げていってほしいものである。
 ようやく時間ができたので、リーグ最序盤戦のこれまでの動向や、ウズベキスタン人選手の情報を簡単にまとめる。例の如く、投稿した記事に少しずつ加筆する形で更新する。

ウズベキスタン・スーパーカップ

 シーズン自体は2月26日、パフタコル対ナサフのウズベキスタン・スーパーカップ(リーグ戦王者とカップ戦王者のワンマッチ)で華々しく開幕した。会場は東部フェルガナ州ヤイパン。昨季1部リーグを戦ったトゥロンのスタジアムで行われたこの試合は、オフの仕上がりが良くないパフタコル、FIFAによる補強禁止措置を受けていたナサフ共に低調なパフォーマンスで正直退屈だった。そして後半、左クロスにチェランがポンと合わせたヘディングシュートがあっさり入り、そのまま1-0でパフタコルが勝利した。
 言ってみればプレシーズンマッチの延長というか、サッカーシーズン開幕を告げるお祭りのような位置づけでもある。「今年もサッカーがやってきた!」という雰囲気が味わえただけでも意義がある一戦だったと言うべきか。

ウズベキスタン1部リーグ

日程について言いたいこと

 ウズベキスタン1部リーグは欧州の有力国でおなじみ秋春制ではなく、Jリーグと同じ春秋制。日本を含む主要国のように、開幕前に全日程がドカンと出ることはなく、全26試合を13試合ずつ2つの日程に分け、シーズン開幕前に、前半戦終了前に後半のスケジュールを発表するスタイルを取っている。ソ連時代のやり方を踏襲しているという話をどこかで聞いたことがあるが、見る側にとっては面倒極まりない。

 3月2日〜4日に第1節が行われリーグ戦が開幕。並行して行われる国内カップ戦や国際大会との兼ね合いもあるのだろうが、ウズベキスタン1部リーグの試合日程は、一般的にイメージされる「土日開催」ではなく、「水〜金曜日のナイター開催」というなんとも珍妙な日取り。平日の夜に観に来るファンはどれほどいるだろうか。
 さらに、毎節最低3日、多い場合は4日に分散して開催しているため、どの試合がいつ行われるかいちいち確認しなければならない。「パフタコルは毎節水曜日開催」「ナサフは木曜日」といった規則性もない。さらにリーグ機構のサイトにも国内スポーツメディアにも、試合会場やキックオフ時間などの情報は載っていない。おそらくは各チームのTelegramアカウントやファングループで告知・共有しているのだろう。
(余談だが、タシケントに住んでいる筆者の先輩も、日程と不規則さと試合情報が分からない不自由さに難儀しているようだ。サッカーだけでないウズベキスタンを知りたい方は、ぜひご覧を)

 リーグ機構は試合を観に来てほしくないのだろうか。スタジアム照明の更新、芝の張替え、VAR運用の議論、2部リーグのTV中継開始など、ここ2年ほど若きイモムフジャエフ会長の辣腕のもと改革を進めている。それらの活動に決して文句を言うつもりはないが、何よりも先に、まずこの問題を何とかするのが先じゃないかと言いたい。声を大にして言いたい。いつどこでやるかすら分からないようなイベントにいつまでも興味が続くほど、人はみな熱心なサッカーファンではない。
 仮に3月はじめに「中日ドラゴンズの試合は4/1, 4/5, 4/6, 4/19, 4/23, 4/24, 4/29, 4/30です。対戦相手くらいは教えてあげますけど、会場とプレーボール時間はどこ見ても載ってません。5月の日程は4月末に発表します」などとNPBから告知されて、観に行くファンがどれだけいるだろうか?筆者はまず行かない。DAZNでも観ないかもしれない。かの国では、これが平然と行われているのである。

 憤激のあまり道をそれたが、現在は前半戦のスケジュールが出ており、リーグ戦は4節まで消化した。4月はほぼまるごと1ヶ月お休みで、その間にACLやAFCカップ、そして国内カップ戦のグループリーグを行う。日本のルヴァンカップよろしくグループステージ→ノックアウトステージという2段構えで、1部〜2部リーグの全チームと予備予選を勝ち抜いた3部リーグのチーム、計28チームが参加。昨季から下部リーグにも門戸が開かれたことで、少しずつ賑わうようになっている。しかし筆者に全試合を見る気合と根性はなく、実際の映像はあまり見れていない。

最序盤戦のメモ

 先に書いた移籍情報の記事でも述べたが、今オフのウズベキスタンサッカーはなかなか波乱に満ちていた。というのも、簡単に言うと以下の4つの大きなニュースがあったからだ。

① ナフバホルが驚きのスーパー大補強を敢行
② パフタコルから大規模な戦力流出が発生
③ ブニョドコルがほぼ解体
④ 2部からオリンピクが昇格

「パフタコルが泣く子も黙る絶対王政を敷く」今の勢力図を揺るがしかねないほどの地殻変動が発生。どう想定しても「今季のリーグを制するのはズバリここ!」といえないような状態で開幕した。いざ蓋を開けてみてわかったことを書き連ねてみる。

予想通りのナフバホル、鍵は新ストライカー

GKのユスポフ以外全員新加入。チームカラーも青に変えロゴマークも一新。パット見どのチームかわからないほどナフバホルは変わった。

クリメーツアシュルマトフイスカンダロフ、アンドレーエフ、ホシモフ、トゥフタスノフ、ボルタボエフ、ケンジャボエフ、ジョキッチ、グリガラシュヴィリ。現役のウズベキスタン代表選手、代表経験のある選手、代表歴はないが確かな実力を持ち今が旬の選手、有力な外国人選手を豪華に補強しオフシーズンの覇者となったナフバホル。選手のみならず、指揮官に元ウズベキスタン代表監督のババヤン氏を招聘。昨季とはまるで別のチームに変貌し、かつてないほどの注目を浴びている。当然、パフタコルと並ぶ優勝候補筆頭だ。

 名前だけ見ればパフタコルに迫る、あるいは凌ぐまでの陣容だが、その戦いはある程度順調と言える。戦力の仕分けが済んだ開幕直前から、基本ラインナップに入る選手は固定され、13-4人前後が主力として起用されている。ここまで2勝1分1敗と、開幕スタートダッシュを切ったとも言い難いが、大補強を行ったチームにありがちな戦力見極めがオフ中にできず、公式戦でテストを行い戦績を悪化させることもなさそう。
 戦い方はこの国ではオーソドックスな4-5-1だが、パフタコルと同じく両ウイングを比較的中寄りに置きサイド攻撃一辺倒ではない。圧倒的な個の力で攻守に主導権を引き寄せる。中盤の守備を引き締めるジョキッチ、トップ下で攻撃のタクトを振るうイスカンダロフ、DFリーダーとして期待されるアシュルマトフ、ここ2年ほどで安定感が増して国内屈指の守護神に成長した感のあるユスポフ、そして兄同様攻守にエネルギッシュなプレーでチームを引っ張る主将のA.アフメドフ。野球ではないが、センターラインに好選手がズラリ。

 4月18日のカップ戦、対ネフチで見せたイスカンダロフのスーパーゴール。長く韓国でプレーしており知名度は低め、またピーキーな能力で評価は分かれる選手だが、左足の技術は国内でも群を抜く。

 そんな中、キーマンは何と言ってもFWマルシッチ。昨季はジョージア1部リーグで得点王とMVPの2冠に輝いた、マルチな能力を持つ長身ストライカー。ここまで全体会で7試合3ゴール、抜け出してよし、エアバトルもよしとその高い能力の片鱗を見せつけてはいるが、まだ完全なパフォーマンスでもない印象。周りに恵まれておりチャンスは多いはずなので、この男が本来の力を発揮し大暴れを始めた暁には、チームは一気に常勝街道を突き進むだろう。反面、彼以外のFWにめぼしい人材がおらず、仮に不発に終わればその代償をチーム全体が支払うことになる。リーグとチーム、両面に適応できるか。ナフバホルのリーグ優勝の命運はまさしくこのセルビア人FWにかかっている。

 懸念材料といえば、両サイドバックの層の薄さ。左のアンドレーエフと右のホシモフともに絶好調で、後者はロコモティフにいた昨季から高精度クロスを次々と味方に届ける攻撃的SBとして完全に開花、代表復帰も噂されている。しかしこの2人以外にバックアップ要員すらいない有様だ。不可解なのは手元に置いておけば控えになるような選手まで、オフに軒並み放出したこと。誰かを狙っていたが取りそこねたのかもしれないし、もっとも冬の移籍市場での人材確保だって十分ありえるが、それまでに両選手に不測の事態が生じなければいいのだが。


パフタコル改め「FCチェラン」

開幕から鬼神の如き活躍でチームを牽引するチェラン。

 今オフに戦力が低下し、リーグ一強とも言えなくなった今季のパフタコル。ヴォイネスキ新監督の手腕はどうかといえば、前任者2人の戦法をそのまま踏襲しており、目新しさもないが失敗もしなさそうな堅実なやり口だ。上述のナフバホルと同じ、オーソドックスな4-5-1だが若干のトレンドを織り込んだようなスタイル。

 チーム全体が継続路線を取ったことは、言い換えれば上積みがあまりないことを意味する。事実、主力が抜けた穴は安価な外国人で穴埋めしたり、昨季のバックアッパーをそのまま据えたりしてやりくりしている。
 それでもここまでのところ大変なことにはなっておらず、開幕から4試合で3勝1分、リーグ戦2位と好位置につけている。総合力が他チームを遥かに凌ぐことが一番の理由だが、その際たる例がMFチェランの働きぶりだ。

 勝利した全ての試合でチェランが決勝点を挙げている。さらにチーム総得点5のうち4点がチェラン絡み(4得点1アシスト)という獅子奮迅ぶり。ナサフからパフタコルに加入以来、昨季まで3年連続得点王に輝く34歳のセルビア人。彼を中心とする大胆な中央突破は、国レベルで守備が終わっているウズベキスタンでは絶大な攻撃力を持つ。フィニッシャーからアシスト役まで幅広くこなウズベキスタン最強選手は、今季その凄みを更に増している。しかし、それだけにチェランへの極度の依存が生じている。

 この要因になっているのが、チームの大幅な攻撃力ダウンである。
 彼はFWではなく、一列後ろでシャドーストライカーの役割を担う。その相方となるワントップの候補は2人。ブニョドコルから加入したミラフマドフとカタールから帰ってきたラシドフだが、前者は長身が武器だが得点力が驚くほど低い、古い言い方をすると「師匠」タイプ。後者は大して技術もないのにボールを持ちたがり、無意味なミドルシュートを夜空に打ち上げる迷惑な花火職人。周りを活かすプレーを志向する分わずかに前者にアドバンテージがあるが、前線の迫力は皆無に近い上にここまでは中盤の選手とのコンビネーションも未成熟。この2人でシーズン合計5点も取れれば十分じゃないかという程の選手である。

 話は逸れるが、昨年からパフタコルはFWに苦労してきた。昨季は元スイス代表の大物デルディヨクを迎えてスタートしたが契約問題から早々に退団。急遽セルビア代表のマティッチを補強したが、途中加入ということもあり今ひとつピリッとしないプレー。マティッチを残し、リーグに慣れてオフからしっかり状態を作り、2年目の爆発に賭けることもできたが、財政難がそれを許さなかった。FWが払底した緊急事態に突如出現してチームを救ったテミロフ(途中出場ばかりだったが、最終的に8得点)も、今オフにイランのペルセポリスに移籍という異例の出世を遂げた。
 そして今季、彼らの代わりに来たのが先述の2人。
 家屋に例えるなら、壁に穴が空いたが新聞紙と藁を突っ込んで補修しているくらいの状態で新シーズンを迎えたわけである。今はチェランという大黒柱が頑張ってその穴を埋めているが、彼に掛かる負担は当然大きく、長丁場のシーズンで彼が最後まで好調を維持できるとは限らない。

 FW以外にも不安がある。4月に行われているACLのグループリーグで如実に現れているが、ハジエフとラーリンのCBは盤石とは言い難く、格上の相手に易々と破られている。中盤のプレッシングも昨季以上にすり抜けられる場面が目立つ。国内リーグの格下相手の攻撃は余裕で防げるだろうが、優勝争いのライバル相手にはどうなるだろうか。

 ピッチの外でもゴタゴタが続く。今オフにナフバホルに電撃移籍した元チームキャプテンのクリメーツ。代表チームでも主将を務めていたCBが、昨季の給与がまるごと未払いだと弁護士を立ててパフタコルを告発したのというのだ。クリメーツは昨季序盤に負傷し、感染症を併発したことでシーズンをほぼ全休。ナフバホルに加入後も状態は上がらないようで、プレシーズンマッチを含め、試合出場はゼロ。問題はリーグ機構の「選手の移籍とステータスに関する委員会」に諮られ、どうやら解決されたようだ。彼には約30億スムが支払われたと言われるが、具体的な金額については不明である。

 光明もある。3月に入りヴォイネスキ監督はチェランをワントップに起き、チームにフィットしつつある新加入のシャルキッチをトップ下や左サイドに置く新戦術を試している。そして第3節のナフバホル戦は、そのシャルキッチのラストパスから決勝点が生まれた。高い技術を持つだけに、状態が上がればなかなかおもしろい選手になりそうだし、チェランにかかる過剰な負担が軽くなることも考えられる。

 最前線と最終ライン、チームの両端に大きな課題を抱えながらもチェランと好調トゥルグンボエフの活躍で何とか勝ちを拾うパフタコル。いつもと変わらない好成績を収めつつも、いつもとは異なる綻びの兆しも垣間見える。地力の高さで寄り切るか、転がされて負けるか。


ついに「金塊を掘り当てた」キジルクム

 大補強の結果、昨季とは別人になったのはナフバホルだけではない。長年弱小チームに甘んじてきたキジルクムに、ついにその汚名を返上するチャンスが来た。ここ5シーズンで11位、10位、14位、11位、9位とすっかり下位が定位置に。特に目立つ選手もおらず、存在感も薄かったチーム。

 もともと大企業のナヴォイ鉱業・冶金コンビナート(NGMK)がスポンサーについており、2020年頃からわずかに補強の意欲らしきものを見せ初めてはいた。しかし今オフは違った。
 ものすごい勢いで有力選手を買い漁るナフバホルに隠れてはいたが、T.アブドゥホリコフ、ゾテーエフ、ショアフメドフ、イルヨソフ、ムハンマディエフ、ユルドシェフの代表経験者を獲得。外国人選手も多数チームに加え、攻守ともに陣容が大幅に強化された。指揮官もセルビア人のラザレヴィッチ氏に交代。

 これだけでも驚いたのだが、もっと驚いたのは開幕してからの戦いである。開幕戦でロコモティフを難なく撃破。勢いに乗ったのか次節はブニョドコルに3-1で勝利。粘り強く守るディナモに引き分けたものの、第4節はがっぷり四つで向かってきたネフチを3-0と粉砕。かなり強い。

 武器は豪快な攻撃力。それを支えるのはツートップだ。ロコモティフから加入したT.アブドゥホリコフは、昨季リーグ得点ランク2位の14ゴールを挙げた実力者。昨季同様の働きができれば、勝ち点10はチームにもたらすことができるマルチなストライカー。
 それだけでも十分大きいのだが、コンビを組むスタニサヴリェヴィッチが大当たり。左利きのテクニシャンで、ドリブルで突破してもよし、サイドからクロスを挙げてもよし、キーパスを出してもよし、シュートを打ってもよしと攻撃に関する能力全てに秀でており、さらにPKもうまい。その圧巻のパフォーマンスは衝撃的でさえある。新加入だが早くもチームの攻撃の核になり、T.アブドゥホリコフとのホットラインを作り上げつつある。
 余談だが、近年ウズベキスタンではセルビア人選手がちょっとしたトレンドになっている。先述のMFチェラン、ナサフの王様スタノイェヴィッチ、ソグディアナの守護神ミトロヴィッチと堅守のCBチェルメリと、各ポジションにトップクラスの選手がズラリと揃う。そしてこのスタニサヴリェヴィッチ。彼も間違いなくチームを引っ張るスター選手になるだろう。

 トゥフタフジャエフ、ユルドシェフ、ドミトリエフのソリッドな3バックも地味ながら硬い。さらにジュラエフとバイドゥッラエフら既存のレギュラー選手も、ハイレベルの同僚に触発されたのか水を得た魚のように生き生きとプレーするようになった。ジュラエフは第2節のブニョドコル戦で見事なヒールパスを決め、T.アブドゥホリコフの得点をアシストしている。

 小柄なテクニシャン、ジュラエフのオシャレアシスト。キジルクムに延べ10年以上在籍する物好きというか稀有な選手。背番号23はアンドレイ・アルシャーヴィンに憧れてのもの

 さらに、今季からチームに加わったナイジェリア人FWのコモラフェにも注目だ。加入時に全く報道されなかった謎の男(オーストリア2部のカプフェンベルクから加入。ウズベキスタン目線で言えばかなりの実力者)。まだ状態が上がっていないのか途中交代で短い時間のみの出場にとどまっているが、その中で高い能力を垣間見せている。
 6節のナフバホル戦では投入直後に見事な抜け出しから一時同点となるゴールを決めた。しばらくはスーパーサブ的な起用になるだろうが、相手が疲れた後半にスピードタイプの選手を出せるのは大きい。彼の存在はFWの層に厚みをもたらす。

 予兆らしきできごとはあった。今年1月に運営団体の変更があり、ナヴォイ州が管理する「キジルクムPFK」から、NGMK社が設立した新組織「PFKキジルクムLLC」に移管されたことだ。詳細も真意も不明だが、圧倒的な財政力を誇るNGMKが管掌することで、大規模に資金を投入できるようになったのかもしれない。一方で長年チームを監督やGMとして支えてきたアクタモフ氏が、4月にチームを去ったと報じられた。誰の差し金かは不明だが、大規模なチーム改革が進められているようだ。

 シーズン前には「台風の目になるかもしれない」と書いた。しかし、それは間違いだと気づいた。それ以上の存在になるかもしれないからだ。たった4試合で判断するのは尚早だとわかっていながらも、今季のキジルクムの戦いは、見るものをして優勝争いに加わるだろと思わしめるものである。
 長年鉱脈を探し求めてきた"Oltin qazuvchilar"「ゴールドマイナーズ」は、ついに大きな金塊をいくつも掘り当てた。あとはそれを丁寧に精錬し、立派なインゴットに仕上げるのみだ。その出来栄えやいかに。パフタコルやナフバホルがまさに彼らの「試金石」となる。

オリンピクが巻き起こす新しい風

チームを牽引するジヤノフ。小気味良いドリブル突破は必見。

 昨季から2部リーグに参加し、大方の予想を超える好成績で1部昇格を成し遂げたオリンピク。
 このチームについて簡単に説明しよう。「オリンピク」という名の通り、ウズベキスタンのオリンピック代表をそのままクラブ化したチーム。所属先で必ずしも実戦経験に恵まれているとは限らない若い選手たちに成長の機会を与えるべく、ウズベキスタンオリンピック委員会の協力で設立された。現在は、2024年パリ五輪の対象年齢である2001年生まれ以降のウズベキスタン人選手のみで構成されている。
 フル代表チームの練習施設でもある、タシケントのJARスポーツコンプレックスに拠点を置き、試合はタシケント市内の各スタジアムを間借りして行っている。
 監督はかつてのレジェンド選手、ティムル・カパゼ氏。昨季途中までU-19チームの監督やA代表のアシスタントコーチなど、代表チームの業務も掛け持っていたが、クラブチームと代表チームの兼任を禁止するサッカー連盟の規約ができたことで、オリンピク専任となった。

 そのオリンピクだが、初めてのトップフライトはここまで想像以上に健闘している。6試合が終わり1勝3分2敗と戦績こそ伴っていない。しかし年齢も実績も「格上」の相手ばかりの中、怖気づくことなく各選手が存分にその実力を発揮している。第5節のキジルクム戦は0-1で敗れたが、前述の通り戦力の充実する相手チームを多いに手こずらせ、試合後ラザレヴィッチ監督をして「ここまでで最も厳しい試合だった」と言わしめるほどの戦いを見せた。
 続く第6節にようやく今季初勝利を挙げたが、FW陣の短いパスとドリブル突破でブニョドコルの守備のギャップをこれでもかと突きまくり、大量5ゴールをぶち込んで圧勝。格下の「子供たち」が(さらに年下のウロゾフとラフモナリエフがいるとはいえ)大人のブニョドコルをケチョンケチョンにするさまには驚かされた。

 選手たちは所属チームの主力に入れない「余り物」とも思われるが、その大半がブニョドコルやパフタコルの育成組織出身で、これまでさまざまなカテゴリーの代表経験のある逸材揃い。歳若く経験がなくともエリートであることに変わりはなく、個の力は1部リーグでも十分通用するほど高い。
 対戦相手の布陣やラインナップに応じて戦い方を変えられるカパゼ監督の手腕も相まって、選手は1戦ごとに自信を深めている。若さ全開のアグレッシブな攻撃サッカーは、ややもすれば強豪チームすら喰ってしまうほどの勢いを感じるし、真剣勝負の健全な雰囲気が、選手個々の充実にも繋がっている。結果だけで全てを測るわけではない、このチームらしい光景である。

 3トップにボールを集め、そこからの展開でスピーディーにゴールに殺到する攻撃スタイルがチームの持ち味。その攻撃を牽引するのが両ウイングのジヤノフ(パフタコルから貸出中)とジュラクズィエフ(ブニョドコルから貸出中)だ。逆足サイドの左から、切れ味鋭いドリブルで次々と突破を決めつつ中央に侵入するトリッキーなジヤノフ。そして屈強な体躯を活かした豪快な突破でチャンスを作り、自ら裏抜けから得点を決めるだけでなく、意外な展開力の高さも兼備する左利きの個性派アタッカーのキャプテン、ジュラクズィエフ。所属チームでは全く出場機会のない2人が、ここまで出色のパフォーマンス。
 さらに、抜群のスピードと献身的なフリーランで前線を活発化させるFWオディロフも欠かせない。そしてMFもムフトロフ、アンヴァロフ、ブリエフ、ママスィディコフ、イブロヒモフ、ギヨソフなど逸材揃いで、誰が出ても緻密なパスワークを構築できる。前線を軸に、2列目から次々と選手が飛び出していく古き良きソ連スタイルの攻撃は、今なお見る者をワクワクさせる。
 やはりというべきか、単純な物理的強さと経験に左右されがちな守備陣に難があるものの、組織的な守りで何とか大崩れは防いでいる。正GKナザーロフはまだ未熟で安定感にも自信にも欠け、明確なチームの穴となってしまっている。しかし、20歳そこそこでこの舞台に立って毎週プレーするという経験は、先の長いポジションでは何にも代え難い大きな財産である。時折見せるネステロフのような派手なセービングに、豊かな将来を感じる。

 もちろん優勝を狙えるようなチームではないし、今が出来過ぎなだけだろう。しかし、これまでになかった新しいコンセプトのチームが若さ溢れる心地いいサッカーを披露する。そして彼らが今まさに過ごしている時間が、とりもなおさず彼らがウズベキスタンサッカーの牽引車になるためのかけがえのない経験になる……。この事実だけで、このチームが存在する意義は十分にあるといっていい。エネルギーと情熱の燃える限り、オリンピクにはウズベキスタンサッカーを盛り上げてもらいたい。そして、念願のオリンピック本大会への道をも切り開いてほしいものだ。歴史を変える若い力に今後も注目だ。

「中堅」に転落しつつあるブニョドコル

第4節のディナモ戦で、PKキッカーを巡りトミワとジュラエフが仲間割れするおバカなシーン。

 今オフ、ブニョドコルは「解体」されたと言ってもいいほどの選手流出が起きた。チームの核であるトゥフタスノフ、ギヨソフ、アブドゥッラエフ、ミラフマドフ、トゥラエフ(全員がウズベキスタン代表経験者)を一気に失い、今季はどこまで凋落するかと思ったが、今の所はそれほど悪い成績ではない(6試合を終えて3勝1分2敗)。
 チームを支えているのは2人のアフリカ出身選手。ガーナ人ウイングのナーとナイジェリア人FWのトミワだ。ベラルーシ1部スラヴィヤから新加入のナーは圧倒的なスピードと器用なボール扱いでギヨソフが抜けた左ウイングで不動の地位を築いた。そして昨季「安物買い」からエースにまで上り詰めたトミワは今季も好調。2人は波長が合うのか開幕から巧みな連携を見せており、ほぼ彼らだけで攻撃を完結させている。さらに、このチーム名物でもある大胆な若手選手の起用が今のところそれなりに結果を残している。後述のラフモナリエフとウロゾフの出現は国全体でも喜ばしいニュースだ。
 戦いぶりが予想していたほど酷くないのは、これらの嬉しい誤算が理由である。

 しかし、やはり戦力も選手層も大幅に弱体化したのは厳然たる事実である。特に柱もおらずまとまりのない守備陣は危機的なレベルで、第6節のオリンピク戦では勢いに勝る若手軍団にいいように弄ばれて5失点。ダーティなプレーも厭わず、常に中盤の最後方でチームを引き締めたMFトゥラエフ退団の影響をモロに受けている。トゥラエフの後継にはD.ジュラエフを据えているが、AGMKでジョキッチの控えだった選手で、実力は前任者に遠く及ばない。ダーティなプレーは似ているが、今の所は闘争心が空回りして態度が悪いだけのゴロツキに近い。
 攻撃陣に目を向ければ、ナーとトミワのホットラインは強力だ。しかし裏を返せばそれ以外の攻め手はなく、戦術らしきものも現状では見えてこない。起用法も不可解な感は否めない。トミワの相方にターゲットマンとして長身で屈強なイスモナリエフを開幕から起用しているが、彼は本来CBの選手。90分もプレーすればいい仕事を1度や2度するかもしれないが、いくらウズベキスタンのレベルが低くとも、付け焼き刃のCFで上位を目指せるほど簡単でもないのは明らかだ。もちろん本職では好選手である。昨季はアンディジャンの若き主将として、見る者の胸を打つ魂のこもった全力プレーとパワフルな守りで最後まで降格チームを引っ張り続けた。現在レギュラーを務めるCB、セットプレーには強いがマークをよく外しカバーもあまり上手くないウルマサリエフと今季がデビューシーズンで右も左も分からない18歳ウロゾフのどちらかに、彼を据えて戦ったほうが遥かにいいような気がする。

 6試合を終えて3勝1分2敗という成績。見かけはいいのだが、上述の脆さを鑑みると今が上振れしているだけで、今後はタイトルも残留も争わない中位をウロウロすると見ている。もちろん、それ以下も十分にあり得る。
 さらに、第4節のディナモ戦(◯2-1)では、前半に獲得したPKを誰が蹴るかで、トミワとジュラエフが試合中にも関わらず口論になりチームメイトが止めに入るという、往年のニューカッスルを彷彿とさせる見苦しいトラブルを起こした(上の写真)。結局ファウルを受けたトミワ自身が蹴るもGKにセーブされ、その後も悪態をついていたジュラエフ共々前半で交代させられた。試合後カルペンコ監督代理は「キッカーは決めていない。自信のある選手が蹴る」という、大胆にもチームの準備不足を暗に認めるお粗末なコメントを残している。

 ジーコ、リバウド、スコラーリ。バルセロナと業務提携を結び、サミュエル・エトー獲得の噂さえ立った。かつて並ぶ者なき栄華を誇り、誰も到達し得ない高みを極め、この世の春を謳歌したブニョドコル。中央アジアから世界に打って出るほど野心と資金に満ちた集団だった姿は今は見る影もない。ここ数年は充実した設備や投資を続けてきた育成組織、そしてブランド力など、当時から培ってきたレガシーで何とかやりくりしてきた。しかし、それすらももう限界に近づいているのをありありと感じる。
 DFイッザトフは「今季の目標はACL圏内」と息巻くが、今季は苦難のシーズンを過ごすことになるかも。もっとも、苦しむのはピッチの中だけだといいのだが。

その他のチームについて

 上記以外のチームについては、近いうちに章立てしてまとめたいが、その時間が取れるか分からないので、現状はかいつまんで。

 ナサフは特に補強もなく開幕を迎えたが、彼らの最大の補強は若き主力選手の成長である。鍵は昨季のリーグMVPのFWノルチャエフだ。プレッシャーも相手のマークも一段と強まる中、プレーはますます凄みを増しており、ACLでも活躍している。「いち有望な若手選手」からさらに一皮剥けてチームを引っ張る存在になりつつあるが、やがて国を代表するスター選手にステップアップできるか。今季のナサフの順位は、彼のパフォーマンス次第だ。

 今季も優勝争いに絡んできそうなのがソグディアナだ。バコエフ体制4年目を迎える今季、派手な補強を打つライバルチームと一線を画し、成熟路線を採った。20代後半から30歳前後と主力選手が円熟期を迎え、そこにオブシヴァツとアブドゥマンノポフという実力者を加えた。派手さは全くなく無骨な集団だが、高度に統率され攻守にスピーディーな戦いで、しぶとく勝ちを拾っていく戦い方は変わらない。エースのノルホノフの出来次第では、パフタコルやナフバホルらを出し抜いて戴冠もあり得る。

AGMKのコシモフ監督。国内屈指の名将も、4年目はやや出だしで躓いている。

 同じく昨季上位に入ったAGMKはまさかの出遅れ。多くの選手入れ替えがあり、人選に手間取っている。中盤の元締め役のジョキッチが抜けた点、そしてインサイドハーフにジャリロフやハグナザリーといった新加入テクニシャンを揃えてより攻撃的な布陣に切り替えた点が裏目に出て、近年の躍進を支えた中盤の圧倒的なタフさが失われた。結果、ソグディアナのように多少劣勢でも勝ちきり、どんな展開でもしっかり勝ち点を持って帰る勝負強さはここまであまり見られず、攻守ともに淡白な印象を受ける。
 3節のナサフ戦が延期のため消化が少ないが、ここまで4月28日時点で1勝2敗と優勝を目指すチームにしては物足りない滑り出し。ブアチーやカシヤーンという周りも自らも活かせるマルチで優秀なFWや、元より硬かったDFラインにさらにイスモイロフという実力者を加えており、選手の顔ぶれは一層豪華になった。地力はパフタコルやナフバホル並にある。それだけに、コシモフ監督には中盤のラインナップ確立と新加入選手への戦術落とし込みが求められる。

気になる若手選手

 ファンの大きな楽しみのひとつに、若手選手の登場がある。ウズベキスタンでは近年有望な選手の台頭が著しく、世代交代の波が到来しつつある。今季はU-23選抜チームのオリンピクが1部リーグに参戦しており、その潮流はさらに加速しそうだ。
 ここまでの戦いで、筆者が気になった若手選手をピックアップする。

ウマラル・ラフモナリエフ

 2003年生まれブニョドコル所属のミッドフィルダー。昨季終盤にトップデビューし、印象的なプレーを見せたことで注目し始め、2021年シーズン終了直後の振り返り記事で「将来のスター候補」として彼を取り上げている。そこで、僭越ながら以下のように評していた。

 まだまだプレーは粗さが見られるし、さらに同じポジションには元代表選手でチームの精神的支柱のルトフッラ・トゥラエフがいる。来季いきなり主力になれるとは言いがたいが、所属チームも代表チームも中盤の守備力が壊滅的な中、彼のような選手は何人いてもいい。この1年間で遂げたのと同じ速さで来季も成長できれば、道が大きく拓けるかもしれない。
https://note.com/boziimillionho/n/nc1cd36d915be

 結論から言うと、筆者の予想をいい方向に大きく裏切り、開幕からセンターハーフのポジションを確保。その座を絶対的なものにしつつある。
 彼にとって幸運だったのは、オフにポジションが重なるトゥラエフとトゥフタスノフが移籍したこと。プレシーズンマッチから主力組に入っていたので今年は出番が増えそうだと思ってはいた。それが始まってみればここまでリーグ4試合にフル出場。これほど抜擢されるとは思わなかったし、それ以上に驚いたのはプレーだ。昨季も年齢と経験に似合わず堂々とプレーしていたのが印象的だったが、今季はさらにスケールアップ。

 上記の通り、筆者はシーズン終了直後の時点で彼を守備的MFと認識していたようだが、実際にプレーを見てマルチなセンターハーフだと分かった。浅学を恥じ入るばかりである。見るものを専守防衛タイプと誤認させてしまうほどハードな守備は間違っていなかったが、それは持ち味のひとつに過ぎない。武器は繊細なボールタッチと正確なパス、そして両サイドのアタッキングサードまでカバーする非常に広いプレーエリア、それを可能にする驚異的な体力だ。
 足裏と引き技であざ笑うかの如くマーカーをかわす動きや、小柄な体躯を活かしボールを懐に隠すキープ力。さらに攻撃を作る正確な配球やキーパス。プレーメーカーを彷彿とさせるプレーをしたかと思えば、アプローチした勢いそのままに相手から刈り取るようにボールを奪取する守備力、高い危機察知能力をも持つ。90分間にわたって攻守両面で強度の高いプレーを続けられるモダンな選手で、繊細さとダイナミックさを兼備した、およそ18歳とは思えない完成度の高さに驚嘆しっぱなしである。その姿はエンゴロ・カンテを思わせる。

 大いに荒れた第4節ディナモ戦ではPKキッカーを務め、今季初ゴールを記録。思えば昨季の開幕はU-18チームの控えだった。この1年でものすごい進歩を遂げ、プレーに洗練さすら出てきたが、まだまだラストパスやシュートの精度に課題があり、相手に「怖さ」を感じさせるプレーはできていない印象だ。小柄で非力な点をどこまでカバーし、違いを作るまでになれるか。
 ラフモナリエフのプレーを見ることだけが今季のブニョドコルを観る唯一の動機、そう言い切ってもいいくらいの逸材である。

ジャホンギル・ウロゾフ

 こちらもブニョドコル所属。ラフモナリエフよりさらに若い、2004年1月18日生まれのセンターバック。スラリとした長身でエアバトルにめっぽう強く、左足からの正確なパスも大きな特徴。

 ラフモナリエフと違い、昨季のトップチーム出場はなし。実際の映像はほとんど見たことがなかったが、動向はこっそりウォッチしていた。というのも、昨季所属していたU-21チームで17歳ながらレギュラーを務め、26試合中17試合に出場していたからだ。
 オフに守備の柱アブドゥッラエフが抜けたことでCBのポジションが空き、今季からトップチームに登録されたばかりの彼が大抜擢。開幕戦でトップデビューしいきなりフル出場。当初は傍目から見てもわかるほどおっかなびっくりプレーしていた。しかしこれが若者の力というべきか、数試合でプロの水に慣れたのか今では別人のように落ち着いてプレーするようになり、すっかりレギュラーポジションに収まっている。

 今の所大きなミスもなく無難なパフォーマンスで、むしろアグレッシブなタイプで、前掛かりになるあまりマークをすっぽかす先輩ウルマサリエフのカバー役を立派に務めてさえいる。年齢に似合わず冷静なプレースタイルで、マーキングやライン統率だけでなく、パスコースを読んで勇敢に足を出しインターセプトも増えてきた。
 自前の育成組織から優秀な若手選手を起用することで、主力が抜けた戦力ロスを安価に埋め合わせようという、財政難のブニョドコルらしい面もあるにはあるだろうが、抜擢を受けたのも納得の好選手だ。線は細く、まだまだ未完成な選手だが、荒削りながら年上の選手と渡り合う姿に、豊かな将来を予見させる逸材。

アブドゥコディル・フサノフ

 ウズベキスタン1部リーグの選手ではないのだが、国外組で目に止まった若手選手も紹介する。
 もう何度も紹介しているが、ベラルーシ1部リーグのエネルヘティクBGUは、ここ3年ほどですっかりウズベキスタン人選手の欧州挑戦前哨基地と化している。チームも「安価でそれなりに働く」と評判なのかすっかり味を占め、毎年のようにウズベキスタン人選手を補充。これまではヤフシボエフやB.アブドゥホリコフのような代表経験があり欧州思考の強い選手をリクルートしていたが、今オフからはその方針が少し変わった。
 今年獲得したウズベキスタン人選手は3人。ディナモ(昨季2部)からアブドゥラフモノフ、ブニョドコルのリザーブチームからフサノフとジュマクロフ。所属チームを見るとわかるように、さらにコアな買い方も始めたようだ。よほどウズベキスタン人選手が好きなのだろう……。

 正直、フサノフという選手は全く知らなかった。移籍の報に接して初めて存在を知ったくらいで、昨季のデータをいくら探しても彼の名前は見つからず、ほうぼうを探してようやく「2020年シーズンにU-19リーグ6試合に出場していた」ことが分かった。どうやらU-17代表経験はあるようだが、特筆すべき情報もなかった。ただ分かっていたのは、エネルへティクから「ブニョドコルのリザーブチームから加入した」ことと「2004年2月29日生まれ」ということだけ。当然プロ経験は一切なく、相当のマニアか関係者以外に存在を知られていなかった選手に違いない。

 そんな一切素性が謎の選手にベラルーシから声がかかり、移籍し、いざ開幕してみるとセンターバックのレギュラーを奪取してしまうのだからサッカーは分からない。
 先述のウロゾフとは同い年で、もしかしたら共にブニョドコルの育成組織でプレーしていたかもしれない。同じく長身ではあるが、しなやかで技術力のあるタイプのウロゾフとは違い、どちらかと言うとパワーに優れあまり器用ではないタイプ。しかし彼もまた年齢の割にプレーは落ち着いており、無骨な選手揃いのベラルーシ1部ながらエアバトルに非常に強い。ラドニョーナク監督の信頼も厚いようで、ここまで3バックの真ん中で、リーグ全5試合にフル出場中。
 あまり映像をしっかり見れてはいないが、大人に混じって堂々とプレーしており関心する。そして実際に、10歳近く年上の他のCBよりもいいパフォーマンスのようにも見える(贔屓目かもしれないが)。今年は喜ばしいことに、気配すらなかったようなところから楽しみなDFのタレントが2人も出現した。このサイトで何度も言及しているように、ウズベキスタンはDFの質量ともに壊滅的にヤバい国である。彼らがこの窮状を救う存在になれるか。

 なお、現在のエネルへティクのラインナップにはウズベキスタン人選手が3人いる。フサノフはもちろん、FWのB.アブドゥホリコフはウクライナリーグでの傷心が完全に癒えたようで、忍者のような抜け目ないストライカーとして完全復活。5戦5発でリーグ得点王だ。ディナモの1部昇格に大きく貢献したアブドゥラフモノフもセンターハーフのレギュラーを奪取。攻守に馬力あるパワフルなプレーで存在感を放っている。彼ら「ウズベキスタン三銃士」の活躍もあり、現在チームはリーグ3位の好位置に付ける。

 余談だが、主にメタルルグでプレーしたDFヒクマト・ホシモフを父に持つ。

その他の話題

イブロヒムハリル・ユルドシェフが契約延長!

 ロシア1部のニージニー・ノヴゴロド(以下「NN」)に所属するウズベキスタン代表DFイブロヒムハリル・ユルドシェフが、2025年まで契約を延長した
 2001年生まれ、21歳のユルドシェフは昨年8月にNNに加入すると、その攻撃力がロシアでも通用することを証明。ケルジャコーフ監督の信頼を勝ち取り、シーズン中の加入ながら不動の左ウイングバックに定着。ここまで19試合に出場し1ゴール2アシスト。3月のチーム月間MVPにも選ばれるなど印象的な活躍を見せている。リーグ全体でも期待のヤングスターと目され、強豪スパルタークから関心を寄せられているとの報道も。

 ウズベキスタン代表エースのショムロドフを慕っており、「まずはサッカースタイルも近く、言語もある程度通じるロシアからステップアップした方が良い」と助言を受けた通り、イタリア1部ジェノアからのオファーを断りNNに加入したユルドシェフ。順調に成長しており、間違いなく今最もアツいウズベキスタン人選手といえる。ポジションこそ違えど、偉大な先輩と同じ道を着々と歩む彼の行く手には、どんな景色が広がっているだろうか。

 ウズベキスタン代表であるユルドシェフは、将来有望な選手です。今シーズン、彼はロシア選手権に適応し、ファンから愛され尊敬されています。そして監督の期待に答えています。イブロヒムハリルは人柄もよく、我々にはいい印象しかありません。彼がこのチームで、試合を通じてさらに進歩し成功することを願っています!
https://fcnn.ru/nn-info/news/team/81936/


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