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【更新終了】ウズベキスタンサッカー 冬の移籍情報(2021-22年)

 ウズベキスタンサッカー界では2021シーズンが終わり、オフシーズンの真っただ中。各チーム来シーズンに向けて補強を進めている。今オフもまた、何人ものウズベキスタン人選手が戦いの舞台を移している。少し大げさな言い方だが「革命前夜」とでも言うような、波乱と変革の予兆が強く感じられる年末年始となった。
 本稿では、昨シーズンに続き有力選手やチームの動向を簡単にまとめた。移籍市場がクローズするまで、動きがあったら適宜加筆修正していく。全チームの移籍リストもまとめたいのだが、昨季は思いのほか労力を使ったので悩んでいる。

 なお、新シーズンの幕開けは2月26日のスーパーカップ(リーグ戦とカップ戦王者のワンマッチ、対戦カードはパフタコル対ナサフ)。その後3月3~6日にリーグ第1節が行われ、2022年シーズンが本格的に始まる。

 ※移籍情報以外のオフシーズンの話題は以下の記事にまとめています。 

 まずは国内の移籍情報から。今季は補強する選手に制限が設けられ、12月6日の移籍市場オープンから「育成組織からの引き上げを除き、10人以上の新規登録を認めない」という条項ができた。

ナフバホルが超大型補強!

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 今季は芳しくない成績に終わり熱狂的なファンを落胆させたナフバホル。しかしチームを保有しているナマンガン州当局はどうやら本気で勝ちを望んでいるようで、今オフは市場オープンと同時に電光石火の早業。各チームから大物選手を次々とに獲得、驚きの補強に打って出た。昨季のロコモティフを髣髴とさせる、いやそれをはるかに超える席巻ぶりだ。

◆IN
DFイェゴール・クリメーツ(←パフタコル)
DFフルシド・ムフトロフ(←ロコモティフ)
DFスタニスラフ・アンドレーエフ(←メタルルグ)
DFルスタム・アシュルマトフ(←江原FC=韓国)
MFジャムシド・イスカンダロフ(←城南FC=韓国)
MFジャムシド・ボルタボエフ(←ソグディアナ)
MFヌルッロ・トゥフタスノフ(←ブニョドコル)
MFヨヴァン・ジョキッチ(←AGMK)
MFエルグジャ・グリガラシュヴィリ(←キジルクム)
MFイスロム・ケンジャボエフ(←キジルクム)
MFアサド・ソビルジョノフ(←パフタコル)
FWアンドレイ・シードロフ(←コーカンド)
FWゾラン・マルシッチ(ディナモ(トビリシ)=ジョージア)
◆OUT
DFミルゾヒド・ゴフロフ(→ネフチ)
DFフシュヌドベク・アヴィロフ(→契約満了により退団)
MFクヴォンディク・ルズィエフ(→コーカンド)
MFサルドル・テリャコフ(→トゥロン)
MFボヤン・ナイデノフ(→イスクラ=モンテネグロ)
FWアッボス・グロモフ(→ネフチ)
FWイスロム・イソクジョノフ(→メタルルグ)
FWイヴァン・ソロヴィヨーフ(→ナサフ)
FWザビフッロ・ウリンボエフ(→メタルルグ)
FWショフルフ・マフムドホジエフ(→フジャンド=タジキスタン)
FWグッチ(→契約満了により退団)

 目玉が多すぎて絞れないのだが、まずはやはりウズベキスタン代表キャプテンのクリメーツの確保。
 今オフで契約満了、かつ今季は序盤に負った負傷(傷口から合併症も起こした)によりほとんど稼働できず。当然代表チームからも遠ざかり、不本意なシーズンを送ったが、まさかパフタコルを離れるとは思ってもいなかった。コンディションがどこまで上がるか未知数だが、年齢も29歳とまさに脂が乗りきった時期、やはりポテンシャルは一級品で国内屈指のスター選手。フル稼働できれば、チームに勝ち点10はもたらすことのできるレベルの選手だ。

 さらに注目なのはジョキッチ。昨季さらなる躍進を遂げたAGMKで大黒柱を務めた守備的MFで、高いボール奪取能力と戦術理解を備えるアンカー。中盤の守備を大幅に引き締めることができるスペシャリストが加入した。
 そして韓国帰りの元代表イスカンダロフ。すべてのプレーを左足一本で行う今時珍しいタイプのファンタジスタ。使いどころが限られる選手だが、トップ下を置く布陣ならば大いに輝く。イスカンダロフとポジションが被るものの、ブニョドコルからトゥフタスノフも獲得した。左利きの若いシャドーストライカーで、強烈なミドルシュートも併せ持つ好選手。
 そしてキジルクムで両翼を務めたサイドプレーヤーを贅沢に両獲り。正確なクロスとパワフルな突破が持ち味のベテラン、グリガラシュヴィリと、ナサフ育ち、不本意な韓国挑戦を切り上げ昨季途中で帰国、キジルクムで半年プレーし持ち味の鋭いキレを取り戻した22歳の若きケンジャボエフ。さらに豊富なウズベキスタン代表経験を持つサイドバックのアンドレーエフも補強。パフタコルからコーカンドにローンで出ていたトリッキーなサイドプレーヤー、ソビルジョノフも獲得した。

 チームは1月6日時点でさらなる選手補強を宣言している。すでに10人の新選手と契約していることから前述の制限に引っかかると思いきや、その内6選手は水面下で接触していたのか、12月6日以前にすでに契約を締結しリーグに登録していたとのこと。このためあと6人チームに加えることができ、今後も補強を続けるという。おそらく、今後はこれら「仕立て役」のおぜん立てを確実にゴールに変換できる、ザビフッロ・ウリンボエフに変わるストライカーの獲得に向かうことだろう(1月10日追記:やはりウリンボエフはメタルルグに放出。ターゲットは誰になるだろう)。
 2022年1月20日、そのFWについての報道があった。新しくチームに迎え入れたのはセルビア人の28歳ゾラン・マルシッチ。昨シーズンはジョージアのディナモ(トビリシ)でプレー。36試合に出場し16得点8アシストの成績で得点王に輝き、リーグMVPにも選ばれた実力者だ。彼がどの程度やってくれるかで、来季のナフバホルが決まると言ってもいい。この国はすっかりセルビア人を「助っ人」で獲ってくるのが伝統になった感がある。これまで大物として連れてこられた選手は何人もいるが、必ずしも全員活躍したわけではない。昨季もトゥロンにバビッチというセルビア1部で活躍して迎え入れられたMFがいたが、さしたるインパクトも残せず1年でチームを去ったし、パフタコルにもマティッチという大物が途中退団したデルディヨクの代わりでやってきたが、そのままフェードアウト。このマルシッチはどうか……。

 昨シーズンは期待を大きく裏切る7位。元からユスポフ、ゴルバーン、アフメドフ、パンジシャンベら能力ある選手がそろっており、攻撃力のアップが課題となっていた。そこにきて、このなりふり構わぬ大補強。さらに指揮官も、元ウズベキスタン代表監督のサムヴェル・ババヤン氏が参与のような役割から監督に昇格。2015年から2017年にかけて代表を率いていた頃はとにかく批判が多く、「代表チームの私物化」のかどで職務停止処分を喰らったこともある曰くつきの人物だが、10年以上パフタコルの実務方トップを務めるなど、チーム内外に大きな権力を持ちチームの編成面で辣腕をふるうGMタイプ。評判はさておき、その手法には定評がある。ナフバホルは指導者のキャリアを始めた古巣で、州知事の熱烈なオファーに応え久方ぶりに復帰した形。

 オフ後半戦となった2月になってもその勢いは留まるところを知らない。各チームトレーニングと練習試合のニュース一色となった2月、最後の電撃補強の一報が。韓国の江原FCでプレーしていたアシュルマトフ加入したというのだ。コーカンド監督のバフティヨル氏を叔父に持つ若手センターバックの筆頭格で、ハードな守りと足元のうまさを兼備するモダンな選手。ロコモティフのコビロフと共に次世代を担う選手で、近年代表でも存在感を増しつつある。国内数チームからオファーを受けた中で、かつてのチームメイトが多く在籍する点、地元のコーカンドに程近い点、チームが大きな目標を持っている点に魅力を感じたのが決め手になったという。

 はたしてオフシーズンの覇者となったが、「上位進出」などという生ぬるい表現ではなく本気でタイトルを狙いにいく来期のナフバホル。パフタコルら上位チームと違い、皮肉にもAFC主催大会にも参加しないので日程的な余裕もある。1996年以来遠ざかっているリーグ優勝に向けて、これ以上ない環境が整いつつある。
 なお、来季からは下部組織を立ち上げ、チームカラーをこれまでの赤から青に変更するようだ。さらにスポーツマネジメント業務を行う「インターナショナル・マネジメント・グループ」社を通じ、イタリアのローマとマーケティングに関する業務提携を行ったとの情報もある。


さらなる充実を目指すAGMK

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◆IN
DFアンズル・イスモイロフ(←パフタコル)
DFアブドゥッラ・アブドゥッラエフ(←ブニョドコル)
DFアンドリー・ミシュチェンコ(←イスティクロル=タジキスタン)
DFエルドルベク・ベギモフ(←オリンピクからローンバック)
MFアリシェル・ジャリロフ(←イスティクロル=タジキスタン)
FWフルシド・ギヨソフ(←ブニョドコル)
FWサルドル・アブドゥナビエフ(←ネフチからローンバック)
FWカムロンベク・アブドゥルハミドフ(←ゾミンからローンバック)
◆OUT
GKスフロブ・スルトノフ(→ブニョドコル)
DFエルガシュ・イスモイロフ(→メタルルグ)
DFアッボス・オタホノフ(→メタルルグ)
DFボブル・ユルドシェフ(→キジルクム)
MFヨヴァン・ジョキッチ(→ナフバホル)
MFサンジャル・ショアフメドフ(→キジルクム)
MFディルショド・ジュラエフ(→ブニョドコル)
MFジャスル・ウマロフ(→ディナモ)
FWフスヌッディン・エルガシュウール・ゴフロフ(→ネフチ)
FWアルヴィン・フォルテス(→契約満了により退団)

 ナフバホルほどではないが、今季過去最高のリーグ戦3位フィニッシュを果たしたAGMKも、オフに補強に動いている。

 主力選手のジョキッチとゴフロフを放出したが、代わりに獲得したアブドゥッラエフギヨソフは、タイプこそ同じではないがウズベキスタン代表の実力者で、代役として十分すぎる存在。さらにパフタコルを契約満了になったアンズル・イスモイロフを補強。35歳で全盛期は過ぎているが、多少深くなった読みと衰え知らずの鋼の肉体で最終ラインを抜かせない屈強なセンターバック。昨季もCBの人材難をフル回転で支え、まだまだバリバリやれることを証明した。

 アフマダリエフとコミロフの両サイドバックは若く実力もあり、国内ではトップレベルの存在だが、これまでセンターバックに若干の不安があった。そのCBの主力を務めたユルドシェフはキジルクムに移籍したが、そこに百戦錬磨の大物選手が加わったわけだ。レギュラーになっても控えになっても、チーム力の底上げになるのは間違いない。
 AGMKはウクライナ人DFのミシュチェンコも獲得。イスモイロフと同じ巨漢CBで、タジキスタンのイスティクロルでプレーしていた昨季、ACLでAGMKとグループリーグで2試合対戦している。その時のパフォーマンスが評価されたのだろうか。上記2人がフル回転すれば、中央防衛の不安が一気に解消されるどころか、チームの堅実な戦いにさらなる大きな強みが加わることになる。

 同じタジキスタンの王者イスティクロルからは、もうひとり注目選手を迎え入れた。MFのアリシェル・ジャリロフだ。現地ではそれなりに名の知れたサッカー一族の出身だが、それ以上に有名なのはそのプレー。170cmにも満たない小兵だが、正確な技術と高いアジリティを活かしたドリブルで敵陣をすり抜け、高精度のアシストパスや自ら持ち込んでのシュートで攻撃を活性化し、ゴールにも迫るテクニシャン。たかがタジキスタンの選手と侮るなかれ、そのプレーは後述の通りロシア仕込みでアジアトップレベル。
 若い頃から将来を嘱望され、ロシアに渡って技を磨いた。ロコモチフ(モスクワ)のユースチームを経てルビンでデビュー。ロシア1部リーグの経験もあるが、主に下部リーグを中心に10年間ロシアでプレー。2019年に故郷タジキスタンに戻ると、強豪チームのイスティクロルで格の違いを見せ、3シーズンでMFながら88試合で45得点。1993年生まれで今が最も脂の乗った時期。
 2019年からタジキスタン代表でプレーし、すぐさまチームの絶対的中心となり、現在は主将を務める。ロシアで武者修行中は同国の年代別代表で定期的にプレーしていたが、母国の要請に応じた形。確かにロシア目線で見れば「伸び悩んだ若手」にすぎないが、タジキスタンの立場から見れば「一度は国外に流出したが、長くハイレベルで研鑽を積んできた名選手」(中央アジア出身だがより良い環境を求めて10代のうちにロシアに渡り、同国の年代別代表でプレーする選手は意外と多い。ビシュケク出身ながら各年代別代表を経て、ロシア代表でプレーするCSKAのイルザト・アフメトフが代表例)。タジキスタン年間最優秀選手にも2度(2019年と2021年)選ばれている。
 近年国家の手厚いサポートで有望な若手選手が次々と出現、改革が遅々として進まないウズベキスタンから中央アジアサッカーの盟主を奪う勢いのタジキスタン。そんな多士済々のタジキスタン代表を、一族でエースFWのマヌチェフル・ジャリロフ(確かいとこ)と共に引っ張る優れた選手だ。昨季はイスティクロルから「若手の代表格」MFエフソン・パンジシャンベがナフバホルに加入、高いスキルでチームの攻撃の核になったようにタジキスタンからの「優良助っ人」が密かにブームの兆しだ。
 AGMKでは4-3-3のウイングに入る(インサイドハーフに入ることもあるか)と予想するが、ウズベキスタン1部リーグでもその実力を遺憾無く見せつけてくれるだろうし、チームにとってもまたとない攻撃力アップだ。

 さらに、トレーニングセッションに昨季までヴォルィン(ウクライナ)でプレーしたイラン人MFスィヤーヴァシュ・ハグナザリーが参加中。来期はACLもAFCカップもないので、思い切りリーグ戦と得意の国内カップ戦に注力できる。ピッチ上の戦いぶり同様、オフもチームスローガン"#bizbubiz"を地で行く堅実で計算できる選手を集める補強スタイルのAGMK。華々しくはないが優勝候補と呼ぶにふさわしい陣容を揃えつつある。

 ナサフの移籍禁止処分が解除

 以前の記事で紹介したように、ナサフには2020年シーズン前に起きたフランス人選手、アブドゥライ・ジャキテを巡る移籍トラブルが起きていた。

 そして、彼への罰金(プラス未払いの給与)を期日までに支払わなかった罰則として、FIFAからオフ期間の選手補強禁止処分を受けてしまった。それ以降は各チーム補強にいそしむ中、若手や構想外の選手を他チームに放出した報道がポツポツ出る以外は音沙汰がなかった。

 しかし年が明け、1月も後半に差し掛かった21日、チームから元ナフバホルのソロヴィヨーフの獲得報道があり、同時に移籍禁止処分についてFIFAと交渉している旨の発表があった。ナサフは「罰金の根拠となったジャキテの訴えは一方的なもの」として、リーグ機構の国際担当部と協力して、処分撤回を求めているとのことだった。

 その後は広報からは何のアナウンスもないが、事の顛末がどうなったかは他の報道から何となく漏れ伝わってきている。

 1月26日に先述のソロヴィヨーフと、パフタコルからムヒッディノフの獲得を正式に発表。FIFAとの交渉が実ったのか、単にジャキテに未払い給与を支払っただけなのか不明だが、選手の獲得はオッケーになったようだ(処分を守らず勝手に獲得した可能性もあるといえばあるが)。
 さらに「韓国、ベルギー、クロアチアのチームでプレー経験を持つクロアチア人FW」の獲得を目指しているとの報道もあった。とりあえずは、問題なく補強を行える環境になったようだ。

 そして話が前後するが、FIFAと話し合いを持つと発表した1月21日のリリース中に「今回の件を引き起こしたチームスタッフについては、調査終了後に処分する」という意味深な一節があった。報道に接した際は特に気にも留めなかったのだが、2月に入ってチームに動きがあった。GMのセルゲイ・クチェレンコ氏の副会長兼SDへの人事異動を含む組織変更が行われたのだ。「組織変更」と書いたが、これは明らかに降格人事。後任には社長のアリシェル・ユスポフ氏が就任した。

 2009年頃からチームの編成トップを務め、優れた育成組織を整備したクチェレンコ氏の突然の辞任に、先のリリースをダブらせてしまうのは当然のことだろう。筆者は、問題が解決に伴い調査が行われ、結果フロントの交代が行われたとみている。新体制への移行と相前後して、チームはベルディエフ監督や主力選手との契約延長を済ませ、シーズン前合宿のためトルコに出発した。

 今冬の移籍市場に大幅に出遅れてしまったが、ソロヴィヨーフもムヒッディノフもそれなりに市場価値のある選手。さらにブニョドコルやパフタコルのように主力選手の切り売りを行っていない点を見ると、かねてからチームを悩ませてきた財政難は、今のところは心配ないようだ。昨季途中に報じられたチーム存亡の危機は、スポンサーのシュルタンガズキミヨ社の資金注入でなんとか乗り切ったというが、同社のマーケティング部長であるユスポフ氏が新GMに就いたことからも、引き続き強力なサポートを受けているのかもしれない。

 2022年2月19日、リーグ機構のイモムフジャエフ理事長が、自身のTelegramアカウントにて「ナサフの問題が解決し、リーグ機構に報告書を提出しました。近日中にいいニュースがあるでしょう」と書いた。当のナサフは何をしているのかと言いたくはなるが、SNS上ではあれ、ようやくちゃんとした人からの正式な現状報告があった。来たる「いいニュース」を期待しよう。

 いずれにせよ、遅ればせながら「穏やかな新年」を迎えたナサフ。今年もAFCカップにも出場するため日程は過密、さらに昨季よりライバルが増えた中、どう戦っていくのだろうか。


ブニョドコル解体!?

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 ナフバホルがオフの話題をかっさらう中、別の意味で気になるチームが出てきた。ブニョドコルだ。2019年ごろから財政難がささやかれるようになり、時を同じくして大物補強を一切やめた。その代りにかつて金満だった時代にしっかり投資した育成組織出身の若手を起用するようになり、チームカラーをがらりと変えた。そのブニョドコルで、大規模な選手流出が起きている

◆IN
GKスフロブ・スルトノフ(←AGMK)
DFディルショド・ジュラエフ(←AGMK)
DFファルホド・ミラフマドフ(←ナフバホル)
DFサルドル・フルサンドフ(←アンディジャンからローンバック)
DFウスモナル・イスモナリエフ(←アンディジャン)
MFディミトリイェ・ポブリッチ(←アララト=アルメニア)
MFフランシス・ナー(←スラヴィヤ=ベラルーシ)
FWフサイン・エルガシュボエフ(←ナフバホルU-21)
◆OUT
GKラフシャン・ヤグージン(契約満了により退団)
GKアコビル・カユモフ(→シュルタン)
DFアブドゥッラ・アブドゥッラエフ(→AGMK)
DFウルグベク・アブドゥッラエフ(→スルホン)
DFスンナトゥッラ・アブドゥッラジョノフ(→ネフチ)
MFサンジャル・ラシドフ(契約満了により退団)
MFヌルッロ・トゥフタスノフ(→ナフバホル)
MFルトフッラ・トゥラエフ(→ネフチ)
FWフルシド・ギヨソフ(→AGMK)
FWミルジャホン・ミラフマドフ(→パフタコル)
FWシャフボズ・エルキノフ(→契約満了により退団?)

 トゥラエフは契約が残っていたが、双方合意のうえ解除してネフチに移籍。彼とラシドフ以外の5人(A.アブドゥッラエフアブドゥッラジョノフトゥフタスノフギヨソフミラフマドフ)はいずれも自前のアカデミー出身で、「育成チーム」への鞍替えを機に一気に出場機会を増やし主力に成長した生え抜きの選手。ウズベキスタン代表チームでも出場機会を増やしつつあり、これから全盛期を迎えようとしている面々ばかりなだけに、少々驚いている。数字の面でも、チーム内得点王のギヨソフ(9得点)と2位のミラフマドフ(8得点)を、最多アシストのミラフマドフ、トゥフタスノフ、トゥラエフ(それぞれ5アシスト)を失ったのは非常に大きな痛手と言わざるを得ない。チームから発表はないが、さらに6得点を挙げた貴重なFWトミワエルキノフにも退団の情報がある。ギヨソフに次ぐ6得点を挙げたナイジェリア人選手が抜けたら大変なことになるが、もっとも来期に向けたトレーニングセッションに参加しているため、残留の可能性が高そうだ。

 思えば昨季も比較的大きな規模の選手流出があった。コビロフ、コディルクロフ、アブドゥジャリロフをロコモティフに、アフマダリエフをAGMKに、ジャロリッディノフをロシアに放出しているが、彼らもユース出身の将来性豊かな若手。彼らの代役も下位チームや2部リーグからのリクルートで、掘り出し物のトミワを除けば代替とは言い難いレベル。こんなことを言ってはいけないが、特にオクテパから来たGKヤグージンは酷かった。ほぼフルシーズンレギュラーだったが、筆者にはチームが一体彼の何を評価して獲得したのか、他を差し置いてなぜ彼がレギュラーだったのか、プレーからは全くわからなかった。防げない、取れない、届かない、蹴れない、ポジショニングができないと散々なプレーぶりだった。結局今季はパフタコルやAGMKといった強豪と比べ明らかに見劣りする感の否めない戦いぶりに終始、リーグの「第2集団」に転落してしまった。
 そして今オフも2年続けて同じような大量流出劇が発生、穴埋めの補強は現状AGMKの余剰戦力(スルトノフとジュラエフ)、降格したアンディジャンの主将イスモナリエフ、ナフバホルからエルガシュボエフ(一応昨季のU-21リーグ得点王ではある)。正直、先述のヤグージンの代わりになれるスルトノフ以外は、大きな仕事をしてのけるかと言われると疑問符が出てしまうような顔ぶれ。さらにすでに始まっている新シーズンに向けてのトレーニングキャンプには育成上がりの10代の若手選手が2人呼ばれているだけ。

 情報が少なく憶測でしか語れないが、財政難が予想以上に深刻なレベルに達している可能性がある(2月18日、2021年の業績が約4億円の赤字だったと報じられた)。今季は昨季に輪をかけて苦戦が予想されるが、それ以上にピッチの外で何かが起こる、「弱体化」で済まされないことが起きるような、何とも言えないきな臭さすら感じられる。

 シーズン開幕直前に、セルビア人のポブリッチとガーナ人のナー(アーセナルのトーマス・パーティーの親戚だとか)を獲得した。どうやらトレーニングキャンプに帯同してトライアルを受けていたようだ。大物獲りができない今、成績アップには彼らが救世主となってもらうしかない……のだが、ナーはビザの取得に手こずっており入国できていない。

 ちなみに、以前退団したジャヴロン・イブロヒモフにより未払いの給与があるとして訴訟を起こされている。昨年12月にはこの件が国際スポーツ仲裁裁判所で審理(ウズベキスタンのスポーツ紛争史上初めて)されることが決まった。情報源では「12月15日に裁定が下る」とあったが、その内容を伝える記事は確認できない。とはいえ、すでに抱える問題が表面化しつつあり、やはりチームの雲行きは怪しい。


パフタコルもひっそり弱体化

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 ブニョドコルが大規模に選手を流出させる一方、リーグ戦2連覇を達成した絶対王者パフタコルでもひそかに異変が起きている。こちらも昨季は独走でのリーグ優勝を果たした一方、コロナ禍の中でオーナー会社が経営不振に陥り大規模な給与未払いが発覚、紆余曲折を経てタシケント市の自治体保有に変わる不安定な一年を送った。予算は従来と比べ大幅に減少、副会長のカリモフ氏も緊縮財政を明言しており、その影響は今オフの補強にも如実に表れている。

◆IN
DFスンナトゥッロ・ハミドジョノフ(←オリンピクからローンバック)
DFアレクセイ・ラーリン(←イスティクロル=タジキスタン)
DFカメン・ハジエフ(←ベロエ=ブルガリア)
MFイクロム・アリボエフ(←大田ハナシチズン=韓国)
FWミルジャホン・ミラフマドフ(←ブニョドコル)
FWサルドル・ラシドフ(←クウェートSC=クウェート)
FWオリヴァー・シャルキッチ(←ブラックプール=イングランド)?
◆OUT
DFアンズル・イスモイロフ(→AGMK)
DFイェゴール・クリメーツ(→ナフバホル)
DFアリシェル・サリモフ(→ロコモティフ)
DFマルレン・チョバーノフ(→トゥロン)
MFアサド・ソビルジョノフ(→ナフバホル)
MFシャロフ・ムヒッディノフ(→ナサフ)
MFアブロル・イスモイロフ(→ネフチ)
FWボヤン・マティッチ(→ヴォイヴォディナ=セルビア)
FWドストン・ハムダモフ(→アッ・サイリーヤ=カタール)
FWシェルゾド・テミロフ(→ペルセポリス=イラン)

 何よりも大きいのは、センターバックの核を2枚とも手放したこと。クリメーツは昨季フル稼働できなかったとはいえ国内最強のディフェンダーであり、チームキャプテンでもあった。クリメーツが長期離脱し選手層が薄くなる中、控えのアーザモフとともに奮闘したベテラン、アンズル・イスモイロフも契約満了によりAGMKに電撃移籍。

 FWもごっそり抜けた。早い時期に決まったのはハムダモフマティッチ。自身2度目の国外挑戦はまたも不本意な結果に終わり、2021年7月にアン・ナスル(ドバイ)からパフタコルに復帰したハムダモフ。状態が上がり切る前にシーズンを終え本領発揮とはならなかったが、それでもさすがは代表レギュラープレーヤーという働きを見せた。そして今オフ、3度目の国外挑戦。ロシア、UAEと来て今度の行き先はカタール1部リーグのアッ・サイリーヤ。2022年6月までのローン移籍。あまり強くないチームのようだが、国内リーグにいても特にやることはないので、さらなるステップアップを目指す。鳴り物入りでやってきたマティッチもわずか半年の在籍でチームを去った。ふがいない成績ではあったが、彼は開幕当初エースと期待されたデルディヨクの退団騒動を受けシーズン半ばに急きょ獲得したいわば「代打」の選手。もう少し時間を与えてやってもいいと思うのだが、チームにはそこまで面倒を見られない理由が何かあるのだろう。
 そして、シーズン開幕を直前に控えた2月27日、昨季プチブレイクを果たしたテミロフの移籍も発表された。新チームは、なんと昨シーズンのイラン1部リーグ王者のペルセポリス。昨季終了時の記事でも取り上げたが、準レギュラー扱いながらパフタコルのリーグ制覇「影のヒーロー」となり、今季は定位置獲りに挑み、もう一皮むけて面白い選手になるかも……と密かに期待していた矢先だった。さらに、中盤の準レギュラーを務めた左利きのパサー、ムヒッディノフも古巣のナサフに1年で復帰した。

 さらに、1月14日にブニョドコルから獲得したと発表のあったDFウルマサリエフが、2月1日に一転して元所属先に復帰した。「フリーエージェントだったが移籍金支払いの必要があり、この額にパフタコルとブニョドコルが合意できなかった」ことが理由のようだ。どういう思惑があったかは分からないが「買い叩けなかったから手を引いた」と見ることもできるし、そもそもパフタコルがマーケットでバタバタするのは稀。

 主力選手が抜けまくったが、補強も一応行っている。目玉は韓国でプレーしていたウズベキスタン代表のアリボエフ。高精度のパスと伸びのある球質のミドルシュートが武器の攻撃的MF。そして2月に入って、イングランド3部のブラックプールを自由契約になったFWのシャルキッチを獲得。英国生まれのモンテネグロ人で、アンデルレヒトとベンフィカの下部組織出身という変わった経歴の持ち主。長身かつ足元が柔らかく、チェランにも似たタイプの選手かも(映像が少なすぎてよく分からない)。昨季は途中で4部のマンスフィールドに期限付き移籍、合計9試合に出場。正直ギリギリプロ選手程度のレベルで、某サイトによるとパフタコルのユース上がりの選手よりも安い市場価格になっているが、欧州リーグなど夢のまた夢のウズベキスタンにとってはビッグネーム。一応マティッチの代わりということだろう。
 なお、モンテネグロ代表からはしばらく遠ざかっているが、現在の代表監督のラドゥロヴィッチ氏は、2010年にパフタコルの監督経験がある。

 また、クリメーツ、イスモイロフの代わりとなるCBには、タジキスタンのイスティクロルからウクライナ人のラーリンと、ブルガリアのベロエから同国人のハジエフを獲得。前者はパワフルな巨漢タイプ、後者は左利きで意外と精度の高いパスが出せる便利な感じ。彼らのフィット次第で今期のパフタコルが決まると言っても過言ではない、重要なポジションだ。

 さらに、チームを率いたハイストラ監督がオフに退任。後任には北マケドニア人のスラフチェ・ヴォイネスキ氏が就任。母国はもちろん、トルコやスロヴァキアなど国外キャリアも豊富な若手指導者だが、アルヴェラゼ氏、ハイストラ氏と「大物」が続き、ここにきてややマイナーな人選というのにもチームの緊縮財政を感じさせる。

 幸い、育成環境が恵まれているおかげで、多少の戦力ロスはリザーブチームで研鑽に励む「安価な」逸材で補うことができる。事実、昨季はホルマトフが独り立ちし、ファイズッラエフやホルドルホノフら若手が経験を積んだ。オリンピクに貸し出された大量の若手選手が結果を残し2部リーグを2位で終え、貴重な実戦経験を積んだ。ターンオーバー要因だった若いアズミッディノフが来期はセンターバックのレギュラーに抜擢されるかもしれないし、他ポジションでも大きく若手起用に舵を切る可能性がある。
 来季は中核をなす主力選手の働きにかかっているが、ナフバホルは絶対的エースのチェランや中盤の大黒柱ハムロベコフにも興味を示しているという。彼らまで抜けることがあれば、まさに飛車角落ち。さすがに王者の貫録も余裕もなくなってくるし、リーグの勢力図が一変する可能性が高い。見境のないナフバホルにもっとも戦々恐々としているのは間違いなくパフタコルだろう。


キジルクムが台風の目になるか

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 ここ数年間低空飛行を続けながら最後の最後で1部残留を決める……。スルホンと並ぶ、ウズベキスタン2大「残留力が妙に高い弱小チーム」に定着した感のあるキジルクム(昨季まではマシュアルを含めた「3大〜」と認識していたが、マシュアルは残念ながら降格した)。かつてはリーグ戦を3位で終えたこともある強豪だったが、その姿は今や見る影もない。
 しかし、2020年にレジェンドGKのネステロフを、昨季は開幕前にAGMKのジョージア人コンビ(ヴァツァゼとグリガラシュヴィリ)を、シーズン途中で代表DFトゥフタフジャエフとMFケンジャボエフを獲得し、有力選手を徐々に補強しつつある。結果はついてきていないのだが、今オフもこの路線を継続しつつ、補強の本気度を一気に上げている。スポンサーのNGMK社が本気を出したという感じか。

◆IN
GKジャヴォヒル・イルヨソフ(←ロコモティフ)
DFボブル・ユルドシェフ(←AGMK)
DFオレグ・ゾテーエフ(←全南ドラゴンズ=韓国)
DFシュフラト・ムハンマディエフ(←ロコモティフ)
MFサンジャル・ショアフメドフ(←AGMK)
MFゴンサロ・リタッコ(←デルフィン=エクアドル)
MFアルチョーム・ドミトリエフ(←ジェティス=カザフスタン)
FWアレクサンダル・スタニサヴリェヴィッチ(←ヴォジュドヴァツ=セルビア)
FWテムルフジャ・アブドゥホリコフ(←ロコモティフ)
FWオリフフジャ・アブドゥホリコフ(←トゥロン)
FWアブドゥヴォスィド・アブドゥラシドフ(←トゥロン)
FWポール・コモラフェ(←カプフェンベルガー=オーストリア)
◆OUT
MFイスロム・ケンジャボエフ(→ナフバホル)
MFエルグジャ・グリガラシュヴィリ(→ナフバホル)
MFギオルギ・クヒアニゼ(→トルペド=ジョージア)
DFムフシン・ウバイドゥッラエフ(→ネフチ)

 リーグトップレベルの攻撃力を持つ両翼グリガラシュヴィリとケンジャボエフをナフバホルに両取りされたのは痛手だが、それでも構わんとばかりにウズベキスタン代表経験のある選手をガンガン補強。
 39歳のネステロフにいつまでも頼っていられないGKにはロコモティフからイルヨソフを獲得。競わせる方針か。そしてウバイドゥッラエフが抜けたサイドバックには同じくロコからムハンマディエフゾテーエフを、ウイングにはセルビア1部リーグでレギュラーを張った左利きの実力者スタニサヴリェヴィッチを取ってきた。AGMKから獲得したユルドシェフも、ここ数年のCB積極補強の煽りを受けて余剰戦力となってしまったが、躍進著しいAGMKの堅守を支えたエアバトラー。
 目玉は2人。まずはフォワードで、黄金時代のロコモティフでエースとして活躍、ウズベキスタン1部リーグ得点王経験があり、現在もコンスタントに代表に呼ばれるT.アブドゥホリコフだ。FWの人材不足が深刻なリーグ戦において、数少ないトップクラスのウズベキスタン人選手で、年齢も30歳でまだまだやれる。ついでといっては失礼だが、実弟のオリフフジャも獲得した。実績は殆どないが、2017シーズンに2部リーグ得点王になっている。もうひとりの目玉はショアフメドフ。彼も黄金時代のロコで能力を開花させた選手で、2列目から果敢に飛び出しゴールを狙う、運動量と攻撃力に優れたインサイドハーフ。昨シーズンにマレーシア1部からAGMKに加入するとすぐに主力の座を手に入れ、3位入賞に大きく貢献した。

 国外からも戦力を集めてきた。エクアドルのチームからアルゼンチン人MFのリタッコ、オーストリアのチームからナイジェリア人FWのコモラフェ、カザフスタンのチームからエストニア代表MFのドミトリエフを獲得。戦力アップにつながるか。

 さらに、監督人事に変更があるようだ。昨季までチームを率いたアクタモフ監督が退きフロントに、後任には国外から招聘するか、前ウズベキスタン代表監督のヴァディム・アブラモフ氏が就くとの報道が出ていたが、1月29日にニコラ・ラザレヴィッチ氏の就任が決まった。例のごとくセルビア人だが、近年はタジキスタン代表、フジャンド、イスティクロル、アッ・ターウーンなどアジアで活動している。
 ナフバホルほどではないがインパクトのある補強で、来季は台風の目になりリーグ戦を盛り上げる存在になるかもしれない。


沈黙を破ったスルホン

 昨季は最後の最後で逆転残留を果たしたスルホン。12月に新しいスポンサーがついたことで、大幅な強化があるかも知れないと思っていたが年末から梨のつぶて。結局何の音沙汰もなく年を越した。

 戦力的にも厳しく、あまり芳しくないニュースもあった中でどのようなオフを過ごすのか気になっていたが、1月も半ばになって突然沈黙を破った。

 1月19日のトレーニングセッション開始を目前に、大掛かりなチーム強化が行われたと発表した。昨季までラージョ・バジェカーノのアカデミー統括者を務めていたファンマ・バローゾ氏がSDに就任、監督にはジョルディ・ファブレガート氏、フィットネスコーチにはホルヘ・エレディア氏、GKコーチにアドリアン・マヌエル氏、役割不明のコーチにミゲル・アルバレス氏とマルティン・ルイス氏を招聘。彼らは全員スペイン人だ。

 新加入選手も派手だ。サラマンカからGKのハビ・ヒメネス、ロルカからDFセルヒオ・ロドリゲス、インドのジャムシェードプルからMFのアイトール・モンロイを獲得。そして目玉はスペイン1部のカディスからやってきた元レアル・マドリーのWGルイスミ・ケサダ。もちろん彼らも全員スペイン人。

 顔ぶれは一見豪華だが、ケサダ以外はスペイン2部〜3部リーグを主戦場にしてきた選手たち。どれほどの実力なのかは正直未知数。さらに昨季の残留を支えたサリモフ、ゴフロフ、ノルトジエフ、ヨクボフといった選手がゴッソリ抜けた。若手重視の起用の中で、シャイドゥロフやチョリエフといった選手は現れはしたが、まだ軸になるような選手はいない。
 残った選手で他チームと比べても見劣りしないプレーができるのは、エースのボボジョノフとウイングのピリモフくらいで、厳しい戦力状況だ。他にも目星をつけている新戦力候補はいるようだが、スペインから来たスタッフの働きに全てがかかっていると言ってもいい。

 なお、昨年起きた「エソンクロフ事件」の判決が出て、被害者のエソンクロフとフジャエフを殴打した人物に罰金刑が課されたという。判決をもって当事者に出ていたサッカー活動禁止処分が解除された。エソンクロフは一応スルホン所属選手(フジャエフは事件前に退団している)なのでチームに合流する予定だが、これだけの騒ぎになってしまったこと、自身をリンチした人物がチームの代表を務めることを考えると、出ていくと見るのが自然だろう。

 ※22年1月17日、新しいスポンサーがついたにもかかわらず大半の所属選手に昨季の給与とボーナスの未払いが判明
 また、22年2月5日、新たに招聘したスペイン人専門家のうち2人(エレディア氏とアドリアン・マヌエル氏)が、AFC加盟国の大会で必要なコーチライセンスを所持していないことが判明した。この2人については別の人物に置き換えるとのことだが、なんともお粗末な所を見せてしまった。
 さらに、昨季から続いている問題だが、チームのホームスタジアム「アルポムシュ」には、リーグの基準を満たす照明設備がない。このままいけば、来季は別のスタジアムを使用するか、全試合対戦相手のスタジアムでのゲームとなる。沈黙を破りはしたが、チームの周りには雑音だらけだ。


昇格組も戦力アップ中

 来季から1部リーグで戦う昇格チームにとっても、オフ期間はチーム力を向上させ、来たるシーズンに飛躍するための大切な時期であることに間違いない。 昨季2部リーグを制し4シーズンぶりの1部リーグを戦うネフチとディナモ。州政府とスポンサーの手厚いサポートを背景に強化中だが、ここまでの動きからは、両者とも来季に賭ける意欲が感じられる。

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質も量もいい感じのネフチ

◆IN
DFダニイェル・ストイコヴィッチ(←アティラウ=カザフスタン)
DFフスヌッディン・フサンボイウール・ゴフロフ(←スルホン)
DFミルゾヒド・ゴフロフ(←ナフバホル)
DFムフシン・ウバイドゥッラエフ(←キジルクム)
DFスンナトゥッラ・アブドゥッラジョノフ(←ブニョドコル)
MFルトフッラ・トゥラエフ(←ブニョドコル)
MFシロジッディン・クズィエフ(←マシュアル)
MFアブロル・イスモイロフ(←パフタコル)
FWドニヨル・ナルズッラエフ(←ナサフ)
FWアッボス・グロモフ(←ナフバホル)
FWマルコ・シャリッチ(メタラツ=セルビア)
FWフスヌッディン・エルガシュウール・ゴフロフ(←AGMK)
FWシャフゾド・ウバイドゥッラエフ(←シャフツョール=ベラルーシ)
◆OUT
DFアクマル・ショラフメドフ(→現役引退、ロコモティフのアシスタントマネージャーに)
DFシャフカト・ムッラジョノフ(→契約満了により退団)
DFサイドゥッロ・ラフマトフ(→契約満了により退団)
MFアーザム・アリエフ(→契約満了により退団)
MFシェルゾド・カリモフ(→契約満了により退団)
FWマルコ・オブラドヴィッチ(→契約満了により退団)
FWサルドル・アブドゥナビエフ(→AGMK)
FWルスラン・ロズィエフ(→パフタコル)

 昨季1部リーグでプレーした「ゴフロフ」姓を4人中3人(一人は昨季醜聞の当事者になり、現在はバングラデシュで「禊」期間中)集めた形になるのだが、それはさておき、それなりに実績と実力のある選手を揃えた。
 なかでも目玉はルトフッラ・トゥラエフ。ブニョドコルの項でも少し触れたが、2年契約を破棄してネフチに移ってきた。良く言えば激しい、悪く言えばダーティなプレーで中盤の守りを引き締め、シンプルかつ制度の高いパスで攻撃の展開役も務める闘志あふれる万能MF。2019年に古巣ブニョドコルに復帰すると、強豪チーム(当時のロコモティフやブニョドコル)や国外、ウズベキスタン代表での豊富な経験を活かし、すぐに頼れるベテランとしてチームの中心になり、キャプテンを務めた。新天地でも持ち前の激しいプレーでチームに活を入れ、ピッチ上の監督としてチームを勝てる集団に変えていくことだろう。
 さらに、最近の昇格チームの「お約束」のようになっている、CBのバルカン半島出身者補強も行った。このストイコヴィッチという選手がどれほどやれるのかわからないが、リーグ全体でセンターバックが壊滅状態の中、ここを当たれば一気に上位進出できる重要なポジションだ。昨季の堅守を支えたベテラン選手のムッラジョノフが退団したため、彼に代わる活躍が期待される。
 他にもパフタコルから代表経験のある若手MFイスモイロフ(期限付き)、ナフバホルとナサフの快速ウインガー、グロモフナルズッラエフ、AGMKでレギュラーを張っていたフスヌッディン・E・ゴフロフ、降格したトゥロンで奮闘したアブドゥッラジョノフら、昨季を1部リーグでバリバリプレーした好選手、特に攻撃陣に人材を多数揃えた。2部優勝に貢献した代表経験豊富なベテラン、ショラフメドフが現役引退した右サイドバックも、フスヌッディン・H・ゴフロフM.ウバイドゥッラエフで穴埋め。降格したマシュアルからはキャプテンのクズィエフを取ってきた。センターハーフも中心選手のアーザム・アリエフが退団しているが、彼とトゥラエフでむしろ戦力的にはプラスか。ここまでは、質も量もそれなりの補強ができている印象だ。リーグ優勝5回、2位9回、国内カップ戦優勝2回、1990年代に黄金時代を築いた古豪の、久方ぶりの復権を賭けた挑戦が始まる。

 唯一気がかりなのは、昨季の2部リーグ得点王のオブラドヴィッチを契約満了で放出したこと。ウズベキスタンは、CBと同じく優秀なセンターフォワードを欠く国である。そこそこできる数少ない選手のT.アブドゥホリコフは今オフにロコからキジルクムに移籍したことで、現在市場にはめぼしい選手がいない。国外から調達してくることになるのか、もしくはこのまま既存の選手で戦うのか。当たり前ながらサッカーはゴールネットにボールを入れねば勝つことができない。ここをどうするのかだけが少し気がかりである。
 2月に入って、FW不足が解消された。大物の穴を埋めるのは大物だった。ベラルーシのシャフツョールからS.ウバイドゥッラエフを獲得した。2019年のプロデビュー以来躍進を続け、あっという間に代表にも定着したライジングスターだったが、初の国外挑戦に苦戦していた。チームにとってももちろん最高に嬉しい補強だが、彼自身も地元に程近いフェルガナの町で再起を賭ける。

 なお、ウズベキスタンサッカー協会は新加入の「フスヌッディン・フサンボイウール・ゴフロフ」とされてきた選手に、年齢詐称のかどで何らかの処分を下すと発表した。同選手は1997年生まれとされているが、どうやらこれは弟の個人情報だと確認されたという。換言すれば、丸ごと別人に成りすましていたわけだ。
 この手の不正はこの国では珍しくなく、選手の売値を上げるのに躍起な代理人やチーム関係者の指示で手を染めるのがほとんど。正直「またか」という印象だが、サッカーの正常な発展を妨げる重大な行為に変わりはない。一刻も早い根絶を願うばかりだ。なお、現時点で同選手への具体的な処分内容は明らかになっていない。

「バルカン半島化」が進むディナモ

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◆IN
GKミロイェ・プレコヴィッチ(←ヴォジュドヴァツ=セルビア)
DFミハイロ・ヨヴァノヴィッチ(←アラシュケルト=アルメニア)
DFジュラベク・マンノノフ(←ナサフ)
DFジャスル・ジュマエフ(←ナサフ)
DFサイドゥッロ・ラフマトフ(←ネフチ)
MFイェウヘン・チュマーク(←トゥラン=カザフスタン)
MFアブドゥジャモル・イスロイロフ(←ブハラ)
MFイブロヒム・ユルドシェフ(←スルホン)
MFショフマリク・コミロフ(←ナサフ)
MFサホブ・ラシドフ(←ソグディアナ)
MFジャスル・ウマロフ(←AGMK)
MFトゥルクン・エルガシェフ(←メタルルグU-21)
MFムザッファル・ムザッファロフ(←トゥロン)
FWアレクサンダル・グリシッチ(←アラシュケルト=アルメニア)
◆OUT
GKミルゾヒドホン・ジャリロフ(→トゥロン)
DFオビド・ジュラボエフ(→ブハラ)
DFゴリブベク・サリボエフ(→トゥロン)
DFドミトロ・シドレンコ(→ブハラ)
MFショキル・ユルドシェフ(→ナサフ)
MFオレフ・マルチューク(→ブハラ)
MFイスロム・シャリポフ(→ブハラ)
FWルズィンボイ・アフメドフ(→ブハラ)
FWサルドル・エミノフ(→ブハラ)
FWオイベク・ヌルマトフ(→マシュアル)

 久しぶりの1部リーグを戦うディナモ。計算できそうなウズベキスタン人選手をコレクトするネフチとは対照的に、うまくハマれば大幅強化につながる外国人選手を軸にしたチーム作りを進めている。

 まず派手に入れ替えたのがスタッフ。昨季チームを率いたフザイロフ監督が退任したが、後継者にセルビア人指揮官のプレドラグ・ロガン氏を招聘。長くセルビア1部のチームの監督を務めてきた指導経験豊富な人物だ。さらに、母国の年代別代表を率いた経験のあるセルビア人イヴァン・イェヴィッチ氏(昨季はモンテネグロ1部リーグのOFKチトーグラードの監督)がアシスタントコーチ、かつてディナモの選手だったミハイル・ナウーモフ氏がGKコーチに就任。そして昨季途中までメタルルグを率いていたアンドレイ・シピーロフ氏がSDにそれぞれ就任した。

 次に選手だが、現時点でR.アフメドフ、シャリポフ、エミノフ、ジュラボエフといった昨季の主力選手4人が2部リーグのブハラに移籍、昨季守備の柱に成長し、2部所属ながらU-23代表に選出。1部リーグでも通用するかが期待された2001年生まれの若手ハムラリエフがオリンピクに参加。さらにチーム内得点王の21歳アブドゥラフモノフにベラルーシ行きの噂があるなど、手痛い戦力ダウンも。(結局、アブドゥラフモノフはエネルへティクBGUに移籍)

 退団の報道が先行し「このままで大丈夫か?」と思っていたが、1月半ばから徐々に入団のニュースが入るようになった。獲得選手の多くはロガン監督と同じバルカン半島諸国出身で、目玉はセルビア1部リーグのチームで2年間正GKを務めたセルビア人GKプレコヴィッチ。昨季所属したヴォジュドヴァツを率いていたのはロガン氏で、いわば彼の「教え子」。さらにアルメニアのチームから2人のバルカン半島出身者、セルビア人DFのヨヴァノヴィッチとボスニア・ヘルツェゴヴィナ人FWのグリシッチを獲得。さすがにプレーを見たことがないのでどんな選手かは分からないが、自国にロクな選手がいないGK、DF(特にセンターバック)、FWの人材を国外に求めるのは悪くないアプローチだ。
 またバルカン半島だけでなく、以前ウズベキスタン1部(ブニョドコルとメタルルグ)でプレーした経験を持つウクライナ人MFチュマーク、昨季ナサフの準レギュラーを務めたMFコミロフ(ローン移籍)とマンノノフを獲得。昨季コミロフは異常に層が厚いナサフのMF陣に阻まれ出場機会が限られたが、1.5列目からアシストにゴールにマルチな働きができるそこそこ優秀な攻撃的MF。マンノノフも右サイドバックの控えだが、馬力のある突破力が持ち味。ムザッファロフはプレースキックのスペシャリストで、30メートルまでなら射程圏内。戦力ロスをカバーし、さらにプラスになる補強ができている。

 実力未知数の外国人選手をチームの柱に据えるのはリスクもあるが、同郷のロガン監督の元で実力を発揮できれば大幅な戦力アップにつながるし、1桁順位も見えてくる。近年ウズベキスタンのチームではセルビア人選手の力を借りるのがちょっとしたブームになっているが、コーチングスタッフまで揃えるのは珍しい。着々と1部リーグ仕様に衣装替え中のディナモだが、残留の鍵を握るのはやはり新戦力。とりわけ「バルカン・コネクション」で加わった外国人選手たちだ。


【決定】ドニヨル・アブドゥマンノポフ

エネルヘティクBGU(ベラルーシ)→ ソグディアナ

 一昨シーズンにアンディジャンからプロデビュー以降、全く無名の選手ながら高速ドリブルと鋭いカットインで評価を急上昇させた若き右ウイング、アブドゥマンノポフ。昨季もチームは低調な戦いを続ける中で開幕から元気なプレーを見せ、U-23ウズベキスタン代表にも召集。国内屈指のタレントと目され、さらなる飛躍が期待されていた折の昨年7月にベラルーシのエネルヘティクに驚きのステップアップを果たした。同胞のアブドゥホリコフやウバイドゥッラエフが所属し、過去にはヤフシボエフ(シェリフ)やウマロフ(BATE)も在籍、「ウズベキスタン人選手の前哨基地」となったエネルへティクで欧州挑戦の足がかりを築くかと思われたが、加入後は負傷もありトップチームのメンバーに割って入ることはできず。カップ戦1試合とリーグ戦1試合、合計90分間のみのプレー。悔しいシーズンになってしまった。

 当初より1年契約だったため、シーズン終了後に契約満了になり退団していた。そこにいち早くオファーを出したのがソグディアナ。昨季は過去最高順位の2位でリーグ戦を終えたバコエフ監督率いるチームは、中盤と最終ラインがうまく連動した強固な守備ブロックが最大の武器。総失点は26試合で驚きの15(全チーム中最少)。接戦をものにする強さと裏腹に総得点もまた28と非常に少なく、エースのノルホノフが10得点を挙げたが、彼以外に2得点以上した選手はわずかに3人(カフラモノフが4点、ジュラベコフとボルタボエフが2点、ボルタボエフはナフバホルに移籍)。攻撃力のアップが目下最大の課題となっている。

 ノルホノフは小柄だがクイックネスがあり、嗅覚が冴えるタイプのストライカー。ここ2年間で国内トップレベルの選手に成長しており、能力は非常に高い。しかしチームが3トップを敷いているため、ポスト役やエアバトルなど身体を張る不慣れなプレーを余儀なくされている。昨季途中にトゥロンから長身FWハキモフを獲得したことでそのタスクも軽減されるかと思われたが思ったようにフィットせず、結局最後までセンターフォワードとしての役務を続けるハメになった。2トップにすれば彼の持ち味もフルに活かされこの「宝の持ち腐れ」状態は解消するのだが、中盤を厚くして守りを固めるチームの武器を手放すことにもつながり、ノルホノフにとってもチームにとっても痛し痒しとなっている。現役時代は頼れるストライカーだったバコエフ監督だが、チームの戦術は意外にも現実的だ。

 それでも、昨季ウズベキスタン代表にも選ばれ飛躍したカフラモノフ、百戦錬磨の大ベテランでいまだに若手のようなプレーを続けるジャスル・ハサノフの強力な両翼に、さらに新たなピースが加わった。もっとも、今年39歳になるハサノフの後継者といった位置づけと思われるが、彼の加入で攻撃力は間違いなくアップした。まだ21歳と若いアブドゥマンノポフ。すでにチームのトレーニングセッションにも参加しており、来たるシーズンへの準備も進んている。プレーさながらに自らのキャリアもここからガンガン切り開いていきたいところだ。


【決定】ジャスル・ジャロリッディノフ

ロコモティフ → カイラト(カザフスタン)

 ウズベキスタンの将来を担う至宝ジャロリッディノフ。リーグ史上最年少の16歳80日でデビューし国内に驚きを与え、英紙「ガーディアン」が選ぶ注目の10代選手にも選出。「ウズベキスタンのメッシ」などと加熱気味に騒がれる中、2020年にブニョドコルからロシアのロコモチフ(モスクワ)に挑戦。しかしながらチーム構想に合わない移籍からラインナップに入ることもできず。タンボフに期限付き移籍するがここでも状況は変わらず、自陣に引きこもり「ロングボールで何とかしてくれ」的な戦術に、運動量が少なくボールを保持してこそ輝く彼の居場所はなく、フィットネスを崩した。さらに代理人のベロウース氏をめぐる不透明な資金の流れなど、移籍にまつわるトラブルもあった。

 2021年シーズン開幕直前にロコモチフと契約を解除しアンディジャンに電撃加入。弱小チームへの移籍で周囲を驚かせたが、フィットネスも上がりきらない中さすがのプレーぶり。最終的に降格したチームにおいて、FWブアチーとともに攻撃を引っ張った。そして中断期間明けにロコモティフに加入。アンディジャンを「踏み台」にしたことで状態も上がり、実力者が揃うチームで復活の兆しを感じるプレーを見せた。
 この1年強で目まぐるしくチームを変え、落ち着かないシーズンを過ごしてきた。20歳前後の「さらなるステップアップ」のための時間をやや不本意に過ごしてしまったのは残念だが、ようやくロシアで狂った歯車が元通りになってきて、ここから再び挑戦が始まる……。そんなシーズンとなった。

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 そんな中、2月6日に突然移籍のニュースが入ってきた。次の戦いの場所はカザフスタン。チームはカイラト。最大都市アルマトイに本拠地を置き、ソ連時代はパフタコルのような「国家代表チーム」の立ち位置を務めた伝統あるチーム。1992年のカザフスタン独立後は圧倒的に強い、というわけではなくリーグ制覇は3度だが、近年は安定して上位に入る強さを取り戻している。昨季はトボル、アスタナの後塵を拝し3位。また、パフタコル同様に充実した育成組織を持っており、有力戦手を世に送り出す役割を持っている。

 カザフスタンといえば、トボルでウズベキスタン代表FWのセルゲーエフがプレー中。昨季からアクトベに加入してカザフスタンでのキャリアを始めたが開幕から大活躍し、シーズン途中でトボルに移籍すると、リーグ優勝に大きく貢献した。かつては名FWウルグベク・バコエフがレジェンドとなったが、隣国にも関わらずあまりリーグ間の交流はない。(一応)欧州に直結しておりレベルもそこそこなので、もっとカザフスタンに活路を見出すウズベキスタン人選手が増えていけば、両国にとってプラスになるのにと思う。

 ジャロリッディノフとロコモティフは2023年まで契約が残っているため、カイラトへはローンで加入する。カイラトは「ネクスト・メッシ」を密かにコレクトしており、筆者がこっそり注目するキルギスの若きエース、グルジギト・アルクロフや、すっかり伸び悩んでいるが、カザフスタンの未来を担うと騒がれたイェルケブラン・セイダフメトといった技術の高い若手選手が揃うチーム。中央アジアの逸材たちがどう融合するか楽しみだ。またチームを率いるのは中央アジア屈指の名将グルバン・ベルディエフ氏。
 その能力と前途に広がる可能性を見るに、彼は中央アジアに収まるスケールの選手ではない。いちファンとして、彼の挑戦が新局面を迎えるきっかけになるほどのプレーをカイラトで披露できるか、期待している。


【決定】アズィズ・アモノフ

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ロコモティフ → エステグラール(イラン)

 アモノフは左利きのウイング。快速でタッチライン際を疾走するタイプではなく、力強く大胆に中央へと切り込んでいく得点力の高い逆足サイドタイプ。パンチ力と精度を兼ね備えたシュートも魅力で、長身を活かしセンターフォワードとしてもプレーできる。
 2017年頃から少しずつトップチームでプレー。年代別代表にも選ばれてきたエリートだったが、なかなか主力に割って入れない時期を過ごした。それもそのはず、ポリバレントさが災いしてサイドバックやセンターハーフを含むありとあらゆるポジションで起用されてきたからだ。2020年にはブハラへの期限付き移籍も経験するなど苦しんだ。
 しかしウイングに固定されると、2021年シーズンに能力が開花。26試合8得点4アシストの活躍でウズベキスタン代表にも初招集された。さらにシーズン後にはリーグのベストイレブンにも選出されるなど、飛躍の1年を過ごした。

 さらなる飛躍が期待される中、彼もプレーの場を国外に移す決断をした。新天地は、イランの首都テヘランに本拠地を置くエステグラール。リーグ戦優勝8回を誇る強豪で、イラン代表選手も数多く擁する。ホームスタジアムのアーザーディーはイランのナショナルスタジアム。近年安全上の理由から70,000人台のキャパシティに低減されたが、かつては10万人以上を収容し異様な雰囲気を醸し出していたスタジアム。
 契約は2年半で、すでに書面にサインしにイラン入りしているという。

 イラン1部からはアーズムーン、ターレミー、ジャハーンバフシュ、アンサーリーファルドら欧州でプレーする名手も多く輩出する。
 サッカーのスタイルはウズベキスタンに比較的似ているが、攻守に拙いウズベキスタンとは比べ物にならないほどよく組織され、持ち前の強度だけでなく、中東寄りのスピードと、アジアフットサル王者でもあるように技術もアジア屈指。文化的にも近しいことから、2010年代半ば頃まではウズベキスタン人選手もちょくちょく挑戦していたのだが、2017年のセルヴェル・ジェパロフを最後に(ちょうどウズベキスタンがかつてほど強くなくなった時期と一致する)交流が途絶えていた。
 パワフルさが売りのアモノフはややもすれば屈強なイラン人に埋もれるかもしれないが、元から彼は「うまさ」より「怖さ」で勝負する実戦向きのタイプ。彼らに揉まれてより強くなればおもしろい。より具体的な話をすれば、おそらくエステグラールは3トップを採っていないので、CFでやるかサイドハーフでやるかで、今後は大きく変わってくるだろう。

 ウズベキスタンではここ10年ほど、「フィジカルに売りがあり、逆足サイドで切り込んでいくテクニック系のウイング」が頻繁に出現する。ラシドフから始まり、ハムダモフ、ヤフシボエフとやや渋滞気味。慢性的なFW不足が続く中、アモノフの成長が代表チームの鍵を握るかもしれない。

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2022年1月6日:記事立ち上げ
2022年1月10日:ナフバホルの項に加筆、ネフチの項追記
2022年1月16日:キジルクム、ディナモの項追記、ブニョドコルの項加筆
2022年1月18日:AGMKの項加筆(ジャリロフ)
2022年1月22日:ディナモの項加筆
2022年1月24日:スルホンの項追記
2022年2月4日:ナサフの項立ち上げ
2022年2月6日:ジャロリッディノフの項立ち上げ
2022年2月9日:アモノフの項立ち上げ

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