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84話 シイナと火影
コントラのドミノとシイナは、いよいよ「夢のカケラ(egg)」を集める為、夢の集まる場所「8の巣」の中心へと向かっていた。途中出会ったファミリー・火影に「コントラ様」と言われたのはそれなりの理由があった。
※ ※ ※
ドミノとシイナはファミリー・火影の大きな背中を追って、8の巣の中心へと向かっていた。長い廊下はまだ続いている。途中、ファミリーの役人達が何とかすれ違い火影に頭を下げていった。
「コントラは俺たちと違って夢を汚さねぇ。夢自体も自分自身もな。毎回こんなススだらけになる俺たちにとっちゃ、憧れの仕事って訳だ」
そう言って火影はススだらけのローブを肩に引っ掛け、歩幅を緩めてゆっくりと歩き始めた。
「で? いよいよ、初陣って訳か?」
火影はドミノとシイナ、と言うよりはドミノの頭上から顔を出す守護柱・リスのラルーへ向けて話していた。ラルーはドミノの頭から火影の方へと飛び移った。
「うむ。少しばかり穏やかな夢を探してはもらいたいんじゃが」
「デカさは? 一緒に入るのか? こないだちょうど良さげな夢を見つけたんだ。それ、使ってみるか?」
火影とラルーはしばらく話し込んでいた。ドミノとシイナはそんなやりとりを静かに見つめながら歩いた。
ドミノは、火影はどこまで夢を把握しているのだろうと疑問に思った。
これまでどんな夢に出会い、どんな思いで役目を果たしてきたのだろう。墓守と比べて孤独ではないとはいえ、そのススだらけになる姿や、疲労困憊した他のファミリー達をみると楽な仕事ではないのが分かる。
それぞれが抱える思いを、いつか語り合える日が来たらきっと、王達の知っている元ある世界に戻せるのではないだろうか。
「んじゃ、用意すっからちょっと待ってろ」
火影は、前方に見えてきた扉に大股で近づいていった。
「ね、ねぇ。もう、夢の中に入っちゃうの? 私まだ……もう少し練習したいって言うか……」
シイナは小声でドミノに不安をこぼした。
その声が聞こえていた火影は立ち止まり、クルリと振り返ってシイナをじっと見つめた。シイナは何か悪い事でも言ったのかと不安になり、再びドミノの背中に隠れた。
「ちょっと、いいか?」
火影はドミノの背中に隠れたシイナに向かって手招きする。
「え?」
「いいから、来い」
シイナは不安を抱えながらゆっくりとドミノの影から出てきた。
シイナを見つめていた火影は、シイナに近づくとぐいっと顔を近づけた。
すると急にニカっと笑い、シイナに近づいてその頭に手を置いた。まっすぐと不安そうなシイナの目を見て、
「何。心配いらねぇよ。お前達はこの世界にとっちゃ大切なコントラ様だ。無理な所や危険な場所は出来る限り俺たちファミリーもフォローする。安心してeggの回収すりゃぁいい。大丈夫だ」
シイナは頭に置かれたススだらけの手のひらを嫌だとは思わなかった。
シイナはこれまで、大人と視線を合わすと怒られてばかりだった。ただそこに居るだけでも邪魔と言われ、段々と居場所をなくしていったのだ。
「あ、ありがとうございます」
自然と声がもれた。
「おう、頑張れよっ」
火影はシイナの頭から手をのけると、今度こそ背を向けて扉に近づいていった。
シイナは、さっきまで頭上にあった重さを噛みしめ嬉しくなった。ありがとう、と言葉がもれたのも、頑張れと勇気づけられたからではない。私の事をちゃんと見てくてありがとう、そういう思いの方が強かった。火影は大人の中で2番目に好きな人だとシイナは感じた。
「大丈夫ですよ。私たちにはこの子達も付いています。私も不安が無いわけではないですが……きっと大丈夫です」
シイナの1番好きな大人のドミノ。ドミノは、の優しい笑顔に、シイナも笑顔になった。優しい大人達に出会って、大人なるのが怖くなくなっていくのを感じていた。
「よし、入っていいぞ」
火影は扉に両手をかけて、力強く押した。風が吹き込んで来る。
ドミノは弟・ドムと訪れたあの景色をもう一度見られると思うと胸が高鳴った。
招かれてドミノとシイナはブースの中心フロアへと足を踏み入れた。
そこはガラス窓の向こうに宇宙広がっている場所だった。
つづく
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