105話 ドミノの思い
向人(むこうびと)の屋敷で夜空を見上げるドミノとシゲル。シゲルは1つしか夢を見ない事を悲しく思っていた。できる事なら、皆んなと同じように様々な夢を見たいと。その思いをドミノは真剣に受け止めた。
※ ※ ※
瞬く星達を見つめるドミノ。そのドミノを見つめるシゲルは再び視線を宇宙へ戻した。
私は…ドミノは言葉を探しながら自分の思いを口にした。
「私は、この世界には真実が隠れている。そう思えてなりません」
「真実……ですか?」
「どうして夢のカケラが必要なのか。どうして王達の後継者が今も存在しその役目を働いているのか。悪夢は王達の時代から始まっているのでは……とさえ感じています」
「それを言うと貴方達の存在が否定されてしまいますよ」
シゲルは笑って眼鏡奥の目を細めた。
「それでも私達は生きてきました。見て見ぬふりをし、自分の時間を当たり前のように。そして、これからも生きていかなくてはなりません。悪夢に恐怖し、何を守っているのか分からいないまま時間だけが過ぎていく。……私はただ、その真実を知りたい。そう思っただけです」
ドミノの視線は真っ直ぐだった。墓守の時とは違う、生きる目的をみつけた瞬間だった。シゲルはドミノの顔を見つめ観念した、とでも言うよな表情を見せた。
「強いですね、あなたは」
「強い?」
「自分の夢をちゃんと持たれている。この世界で生きる意味も、その役目も見つけている、とう顔だ」
ドミノはどう答えていいのか分からず、視線を足元に落とした。いつも見慣れた自分の足元。
「私には……考える時間がたくさんありましたから」
持て余していた程の墓守の時間を、ドミノは今取り戻そうとしている。この足で行きたいところにも行き、会いたい人にも会える。しかし、今は本当の世界の形を確かめたい。推測が推測で作り上げた仮説をドミノは、確かめに行くのだ。
「世界の形……ですか」
シゲルは遠い目をして呟いた。ドミノもその後に続いて呟いた。
「私も見てみたいです。向こう側という世界を」
「意見が合いましたね」
ドミノとシゲルは目を合わせてクスリと笑った。お互いが見る夢は違えど目的が同じになると仲間意識が芽生える。
「い、いい匂い」
そう言ってシイナは長い行列と一緒に戻ってきた。それはお膳立てされた食事の数々だった。
「参りましょう。食事と一緒に」
そう言ってシゲルは廊下の先の障子戸まで進んで行った。そこには、かつて門から中庭を案内してくれたヤマダ・ジョウの姿がすでにそこにあった。
「お待ちしておりました」
そう言って障子をゆっくりと開いた。
つづく
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