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87話 黒い腕

ドミノとシイナは、コントラとしての決意を胸に、夢への介入を始めようとしていた。それは、夢の壊人・ファミリー・火影が数ある夢の中から比較的穏やかな夢を、と用意された夢だった。

※ ※ ※

ドミノとシイナは、8の巣の中心フロアの壁沿いを歩き火影へと近づいていった。

火影はつい今ほど戻ってきたファミリーの一団を迎え入れ、報告を受けていた。

5人ほどのグループの一団は、火影達の時とは違い特に汚れている様には見えなかった。よくよく観察すると、ファミリー特有の大きな体とは異なり小柄な者が多い気がした。

長めのローブに頭上のフードを下げ、肩には使いこまれた鎖(チェーン)を担いでいる。終始困った顔で火影に何かを訴えている様だった。

「な、何かあったのでしょうか」

シイナは心配そうに見つめるドミノに声をかけた。

「あいつら、仕事を放棄してきたんだってよ」

「またかよ。これで何回目だよ」

「どうやら、怪しい煙に巻かれて道を見失う所だったらしいぜ」

周囲のファミリー達が小声で噂している声が聞こえてきた。何か問題があったのは確かだったらしい。

「じゃぁ、何か? おメェらはその煙の中に顔を見たっえて訳か? それも夢の中じゃなく、トンネルでってか?」

火影の声が大きくなる。

「いや、顔だけじゃないんですってば! あいつなんか煙から伸びてきた腕に掴まれたちまって……」

そう言って使いこまれた鎖を担ぎ直した人物は、壁に貼り付く様に体を縮める者を指さした。
どうやら、この一団の仲間だったようだ。震えながら壁にブツブツ何かを呟き、頭を抱えている。

「誰か、救護班を呼べ! 体を洗浄してやれ!」

様子を見ていた他のファミリーの一団から、はい!という声が響きわたると、その場は騒然と忙しくてなっていった。

「あいつは、もう使いものになんねぇかもしれません」

鎖を担ぐ人物がボソリと火影に告げ口する。その者の顔は、自分じゃなくてよかった、という安堵の笑顔が浮かんでいた。

それが火影には許せなかったらしい。その人物から鎖を取りあげると大声で叫んだ。

「すぐに会議を始める! みんなに声かけてここに集合! 仲間が1人病みかけてんだ。そいつを笑う事なく、仲間と思う奴だけ集まれ!」

火影は、笑った者を睨みながら見下ろし背を向けた。

「え? あ、火影様?」

鎖を取り上げられた人物は、口を滑らせたのだ。他人事の様にしてしまったこの事態で、自分自身を追い込んでしまった。結果、今職を失ったのだ。

急に地面が揺れ出した。

細かい揺れはファミリー達だけでなく、その場にいたドミノとシイナにも伝わり緊張感が張り詰める。

……揺れた止まった途端、ファミリーが夢へ続く「トンネル」を繋ぐ扉が破壊されんばかり大きな音を立てて開き、ファミリー達が転げ出てきた。
大きなハンマーを担いだ大男達は、ボールの様に跳ね転がり地面へと落ちた。

「ね、ねぇ、あれ」

シイナの言葉に一同は開かれた扉に注目した。

まるで意志のある煙がモクモクとうごめき、そこから見たことのない長くて黒い腕が何本も伸びていた。

「奴らだ! 閉めろ! 扉を今すぐ閉めろ!」

火影は叫びながら一目散に扉に向かい閉ざそうと試みる。しかし、力が強く思うように扉は閉まらない。それどころか、大男達が何人も扉に集まり奴らを押し戻そうとするが叶わなかった。

「シイナ、ここを離れましょう」

ドミノはシイナの腕を掴んでそこから非難しようとした。ドミノは驚いた。掴んだシイナの腕が有り得ないほど発熱しており、小刻みに震えている。
シイナはまっすぐ、扉を睨みつけ叫んたわ

「わ、私行ってきます!」

「シイナ!?」

シイナはドミノの腕を払い、黒い腕がで伸びる扉へと駆けて行った。

つづく

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