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101話 2つの扉

向人(むこうびと)の屋敷を進むドミノとシイナ。屋敷を案内する人物は「去人・ミナコ」や「向人・ユキ」を『向こう側』へ届ける役目を担ったタナカ・シゲルであった。シゲルは、夢の扉について詳しく話し始めた。

※ ※ ※

シゲルは長い廊下の先頭をゆっくりと進んで行った。
ドミノはシゲルの後をついて行く。シイナはフラフラする風の子・マロンを捕まえるのに苦戦している様だった。

「私達は向人としての血筋を守ってきました。しかし、初めにこの世界に迷い込まれた先祖はこの世界の方と交わったのかと。だから、向人の血筋と言いながら少しだけこちらの遺伝子も混じっている。ですから、夢に扉が2つあるんです」

「扉が2つ、ですか?」

「1つは、こちら側と繋がっている扉。そして、もう一つは向こう側へと繋がる扉」

「それは……」

「つまり、私達の夢を通して迷い込まれた向人を『向こう側へと送り届ける為の扉』という訳です」

「なるほど……では貴方も向こう側へ行った事が?」

「いえ。その扉は決して私達には開けないのです」

「どういう事でしょうか……」

「私達はこちらの世界に長く居座りすぎた、と言う事でしょうね……」

「扉を見つけられない……と言う事ですか?」

「いえ、扉のありかは分かるのですが、何故か近づけない……と言うのが正しいですね。扉に触れると目覚めてしまう。自分の夢なのにおかしな話です」

ドミノは首を傾げた。

「場所が分かるのすか?」

「え? えぇ」

シゲルはふと空を見上げた。もう少しで夕刻となる空には1番星が輝いていた。

「あぁ、ありました。あの星の様に輝く星が目標になるんです。こちら側とあちら側の扉の目印」

そう言ってシゲルは空を指差した。それは、一番星。ドミノは驚いた。その一番星は、みんなの夢から盗まれたかつての双子星だった。

「どういう事……?」

ドミノは腕を組んで考えた。ラルーの言葉、古い文献、墓守の記録手帳。全ての記憶を手繰り寄せ徐々に表情が険しくなっていく。

ようやくシイナがマロンをつかまえ、腕にグルグル巻きつけてやってきた。

「あ、あれ?」

シイナはドミノの険しい顔に驚き、声をかける事が出来なかった。

つづく

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