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106話 障子の向こう側

向人(むこうびと)の屋敷を案内されたドミノとシイナ。長い廊下の道中、ドミノとシゲルは同じ目的意識が重なった。障子の前で待つ執事は、運ばれてきた食事と一緒にドミノ達を障子の向こう側へと案内した。

※ ※ ※

畳の部屋には大きな机が1つ。四角くて低いその机の側面には、細かい彫刻が施されいた。正座の大人達は向かい合う様に座っており、その間には会話は無かった。

「おぉ、待っておったぞ」

机上の真ん中で互いの視線の中心にいた守護柱・リスのラルーがドミノとシイナに向かって小さな手をあげた。

「お待たせしました」

そう言ったシゲルは、ドミノとシイナを部屋へと招き入れ大きな机の側へと案内した。

ピンと張り詰めた空気に怖気ついた風の子・マロンはスルリとシイナの腕から離れて首元から服の中へと逃げ込んだ。

「おぉ、これが風の子か」

大人達の注目の的になった風の子・シロイトは、緊張からか固い表情でドミノの腕にきつく巻きついた。

「これはこれは、よく参った。新しい風付きのコントラよ」

1番初めに口を開いたのはドミノ達と1番遠くに座っている和服姿の老人だった。
白髪の混じる老人の頭は薄く、メガネの奥の目はシワと見間違えるほど細かった。

「ここは向人の屋敷。迷い館も言われ迷われた者が暮らす場所」

ドミノとシイナは老人のゆったりとした声に集中した。

「私はタナカ。タナカ・lei(レイ)・ジロウと申す」

ドミノは首を傾げてジロウの言葉を繰り返した。

「lei(レイ)? leiって……確かファミリーの……」

「よくご存じで。さよう。leiはファミリーの継名の1つ。我々ファミリーと共に生きる事を決めた証にこの名を贈ったのだ」

そう言ったのはジロウと向かい合って座っていた恰幅の良い大柄の老人だった。

「私はファミリーの火日(ヒヒ)。今せがれの火影がブースの長と言えば分かるだろ?」

「火影さんの……お父様?」

「さようさよう。私らはもう引退組だ」

そう言って他の、体格のいい5人ほどの老人と笑いあった。 ガハハよ笑うその姿がファミリー・火影と重なった。

「よし、役者は揃った。では、さっきの事案をまとめるぞ」

火日はそう言って、再び向かい側に住むジロウに目を向けた。

___バチッ

え?とドミノとシイナは顔を見合わせた。

どうやら、向人・ジロウとファミリー達は穏やかな話し合いをしている訳っではない様だ。

ドミノとシイナはぶつかり合う視線が鋭い事に、背筋に冷たい物が静かに流れるのを感じた。

つづく

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