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79話 ルール

満天の星空ほどある夢の箱。コントラのドミノとシイナは、自分達の夢もあの数ある星の中の1つに過ぎないと知り言葉を失なった。それは想像していた夢の数より遥かに多い存在だった。

※ ※ ※

守護柱・リスのラルーは1つ息を吐き、気持ちを整えるとクルリと振り返って声に張りを持たせた。

「よし。ここからが本題じゃ。夢に入る為にはいくつかルールがあると言ったのぅ。それを今から伝えるぞ」

ドミノとシイナは夜遅くまでそのルールを理解するために机に向かった。

まず、夢に入る為には5つの決まり事がある。それをドミノは几帳面に自前の手帳に記していった。墓守だった頃からの癖は今でも健在だ。

①夢には必ず入り口となる扉がある。その扉を見つけたら必ず「3回」ノックしてから入ること。そうしなければ帰りの扉を見失う。夢主はこの3回のノックの音を合図に訪問者を受けいれ、介入許可を無意識で行うという。

②夢の中には夢主の他に夢人が存在する。夢主が作り出した人物達だ。夢主含め夢人にも「扉」(入り口、出口)を知られてはならない。この夢人が「面」の場合もありうる。面を夢の外に出してはならないのは暗黙のルールである。

③夢の中でコントラは「夢人」として振る舞うこと。出口を教えてはいけないと同時に、自分達の事を話してはいけない。友人のように接してくれば友人の様に、兄弟の様に慕ってくれば兄弟の様に振る舞う事。夢は夢主の箱である。けっして自分の物にしてはいけない。

④「夢のカケラ」は風の子が夢主から「分けてもらう」という風に考える事。夢主から貰えるのは1日に1つのみ。それ以上は夢が歪みだすので欲張る事は禁止する。

⑤もし夢の中で迷い、扉を見失ったなら「空」を見よ。夢の中には必ず共通する星を皆持っている。その星は双子星といわれ、2つの星を線で結びその方角に扉はある。しかし、現在その星の輝きは1つのみ。扉近くに強く輝くそれが片割れ星である。必ず夢主が目覚める前に扉から出る事。

・その他に、扉には必ず「name」(ネーム)と言われる夢主の存在を記すプレートがある事を確認する事。

・「name」(ネーム)の無い扉は夢主も夢人も誰もいない「空夢」である。この空夢は様々な問題を起こすので壊人・ファミリーの解体対象となっている事。

・夢主の目覚めは覚醒する約3分ほど前から兆候が見られ夢に変化がおきる。それは皆同じで夢の中に目覚めの「風」が吹く。その風の合図が鳴けば夢のカケラの採取がまだでも、扉に向かう事。

・夢の中で決して風の子とはぐれてはならない。風の子はコントラとして重要な鍵を握っている。必ず自分の風と尾を結び離れぬ様気をつけよ。

「お、覚えることが多すぎるぅ……」

シイナは頭を抱えて机に突っ伏した。ドミノは苦笑いしながら、まだ疑問に思っている事を口にした。

「双子星と言うのは? 何故今は1つなのですか?」

「うむ。やはり気になるかの?」

「わ、私たちの夢にもその星ってあるって事なの?」

シイナが顔を上げて窓の外に向けた。満天の星空は今もそこにある。その中にひときわ輝く星を見つけた。

「ま、まさか……あれだってりして〜」

シイナは輝く星を指差して冗談っぽく笑った。その、まさかじゃよ、なんていう答えが返ってくるとも思わずに。

つづく

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