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43時間。あっと言う間の別れ <夫を亡くして思ったこと #2>

2020年。「新型コロナウイルス(COVID-19)」により、誰もが思いしなかった世の中になってしまいました。
4月7日、7都道府県で緊急事態宣言、16日には全国に拡大。13都道府県が「特定警戒都道府県」に指定されました。

夫の会社も緊急事態宣言を受け、テレワークを導入。フリーランスで仕事をしている私と一緒の時間が増え、それこそ「おうち時間」を共に過ごしていました。
当然ですが、コロナに感染しないよう細心の注意をしていました。手洗い・うがいの徹底はもちろんのこと、外出着はすぐに洗濯機へ。買ってきた食材なども除菌シートで拭いてから冷蔵庫に入れていました。

倦怠感、何かがおかしい…

そんな5月下旬。
「なんかダルいんだよね」と倦怠感を訴えるようになりました。
最初はコロナを疑いました。当時、37.5度の熱がない場合も感染の場合がある、という情報が流れ始めた頃。また味覚・嗅覚の異常や強烈な倦怠感、というのも情報として上がりだしたあたりです。

ものすごくダルい。でも熱はないし、味覚・嗅覚もある。そしてものすごく喉が乾く。一体なんなんだろう。私たちは、もしかするコロナかもしれないから、しばらく「家から一切出ない」を選択しました。

2,3日様子を見て、「昨日よりラクになった」なんてことも言っていました。ただダルさはある。そのため内科受診を勧めましたが、彼は病院に行くことでコロナに感染するのではないか、という考えが先に立ち「大丈夫、大丈夫」、「寝てれば治るから」と、嫌がるばかりでした。

何が起きているかわからない恐ろしさ

ダルいと言い始めておよそ1週間後のある朝、起きると彼の反応はおぼろげ。明らかに息遣いも異なったため、私は半ばパニックになりました。そしてすぐにコロナ相談に連絡。「コロナの疑いは少ないから救急車を」といわれ、救急車を呼びました。今思えばこのとき、“余計なことするな!”というような、ものすごく嫌な顔をされたのが、意思疎通をした最後でした。

最初に搬送された病院でおよそ2時間、私には何が起きているのかわからず、待合室で恐ろしい時間を過ごしました。そして呼ばれ…医師から告げられたのは、「重篤、命の危険がある」と。「重度の糖尿病であり、血糖値が1200もある。こんな数字、見たことない!ドロドロすぎる血で急性腎不全を起こしているし、意識混濁も起こしている」といわれ、私が過呼吸になりました。

高血糖の恐ろしさ

設備が整った大きな病院へと、ある医療センターのICUに搬送されました。ICUの先生からも「糖の海で転覆しかかっている、かなりアブナイ」と。
このとき、病院着に着替えさせられていたこともあり、彼の着ていた服を渡され最後に、彼がほとんど外したことのない結婚指輪が大きな透明のゴミ袋に入って渡されました。

それから気が気でない1日を過ごした翌日の夕方。緊急連絡が。「自発呼吸では難しいため、人工呼吸器をつけていいか?自発呼吸のままでは今晩もたない」と言われました。もちろん人工呼吸器の装着をお願いして…。しかし、22:30頃また電話が入り、「血圧が下がってきている。来られるか」と言われ、急いで駅前からタクシーに乗り向かいました。この時は彼の指輪もはめてもう祈るばかり。

ICUの医師から「こんな見たこともない血糖値を薬で下げてはいるが、下げることでドロドロの血がサラサラになり、今度は内臓が浮腫んでいる状態。脳や臓器をかなり圧迫していている」というようなことをいわれ、「あとできることは人工心肺を着けるか。ただ、人工心肺をつけても助かる確率は低い。どうするか。人工心肺をつけず、自力で回復したとしても、これだけ(脳も)浮腫んでいるので何らかの障害が残るか、言い方は悪いが植物人間になる可能性が高い」と決定的なことをいわれ、また過呼吸になりました。

本人が以前、「管に繋がれてまで生きたくない」と言っていたこともあり、彼のご両親などと相談、人工心肺をつけずにできることをしていただく、としましたが、最期は心臓マッサージの中、手を握り、何度も何度も彼の名前を呼びましたが、戻ってきませんでした。

今日と同じと明日はない

あれだけコロナに気をつけていた人が、まったく違う病気で…。
糖尿病?私にしてみたら寝耳に水。
そんなこと何一つ聞いていない。知らない。
本人も多分わかっていなかったと思います。
ただ、確かにひどい食べ方をする人でした(この辺はまた今度)。

私が「おかしい!」と思ってからたったの43時間。
それまで普通に、昨日と同じ今日を過ごしていました。
でも今日と同じ明日はやってこなかった。
それから今の私のこのツラい日々が始まりました。

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