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タイトルに射抜かれる

知財を身近にするメディア「Toreru Media」に、記事を寄稿しました。


ほかの業界とおなじく、翻訳業界にも「AIの波」がきています。AI翻訳や機械翻訳の影響は大きい。

寄稿記事では、特許翻訳歴17年の私が機械翻訳を使ってみてなにを感じているのか、機械翻訳についてどう思っているのか、をぶっちゃけてみました。読んでいただけると嬉しいです。

文章を書くときに、いつも悩むのが「タイトル」。この寄稿記事のタイトルを見てください。これは、編集者さんの提案です。編集者さんは、やっぱりセンスがありますよね。

私は、タイトルのセンスがなくて・・・

noteのタイトルも悩みますが、noteは自分の書きたいことを書きたいように書く「自分の部屋」のような感覚なので、タイトルのために何日もウンウンうなったりはしません。

でも、メディアで書かせていただくときは、タイトルを決めるのに何日もかけます。それでも、私の頭で考えていることなんてたかが知れているので、キラリと光るようなタイトルは思い浮かびません(残念)。

ようやく絞りだしたタイトルを文章につけ、編集者さんにチェックしてもらうのですが、私のタイトルがそのまま採用されたためしはなく・・・

「ヒキ」が弱かったり、だれに向けて書いているのか分からなかったり、キャッチーじゃなかったりと、そこにはいろいろな理由があります。編集者さんはその理由を説明したうえで「こんなタイトルはどうですか?」と提案してくれるのです。ホントありがたい。

提案されたタイトルを見て、ほほぅー、なるほどー、そうか、こんなふうにすればいいのか、といつも感心しています。

文章のタイトルがどれだけ重要か。それはよくいわれることです。

“文章の鬼100則”では、こう説明しています。

タイトルは文章の顔である。人の第一印象が顔で判断されるのと同じように、文章もまず顔で判断される。

また、“書くのがしんどい”には、次のように書かれています。

タイトルをつけるときは、文章の中身をまったく知らない人、興味がない人でも「なんだろう?」「気になる」と思えるようなものにする必要があるのです。


思いあたることがあり過ぎる。

たとえば、noteのタイムラインにでてくる「あなたへのおすすめ」を読むかどうか。私は、タイトルと最初の1文で、それを判断しています。しかも、瞬時に。

「これ、なにが書いてあるんだろう。気になる!」というタイトルは、つい本文まで読んじゃいます。

自分でもそうしているんだもの。ほかの人も、そうである可能性が高い。文章のタイトルが重要な件については、まったく疑う余地がありません。

このあいだ、同じようなことが本屋さんでもありました。

お目当ての本はどこかなと探しているとき。フラリとはいった通路で、ズラリと並ぶ背表紙が目にはいりました。

通り過ぎようとしたときに、視線の端っこのほうで「んっ??」というようなタイトルが目に入ったのです。この本のタイトルに惹きつけられ、手を伸ばさずにはいられなくなりました。


本を手にとってもすぐには開かず、しばらくのあいだタイトルと表紙をジッと見つめていました。タイトルに射抜かれたのです。心を完全にもっていかれました。

この絵本にはなにが書かれているんだろう。読むまえに「覚悟」が必要な気がして、マスクの下でゴクリと唾をのみこみました。

1ページずつゆっくりと読み進めるうちに、思わずつぶやいていました。

「さすがだ。谷川俊太郎さん、すごい」

1つ1つの言葉が、ストレートで力強い。心にズズンと響き、目が釘付けになりました。

本の内容があまりにも事実で。あまりにも身近すぎて。

この事実を、自分はきちんと認識していただろうか?あたりまえだと思っていた自分の傲慢さに、恥ずかしくなりました。

この絵本のタイトルが、このタイトルでよかった。

そうでなければ、私はこの本を手にとることはなかっただろうし、この本をずっと知らずにいたかもしれません。

タイトルは、やっぱり大切。

自分にとって、未知のなにかを知る入口になってくれるんですから。

世界をほんの少し広げてくれるかもしれない。ちょっと立ち止まって、なにかを考えるチャンスをくれるかもしれない。書いた人と、なにかを共有できるかもしれない。

目の前にある扉を開けるかどうか。その大きな決め手となるのが、タイトルなのかもしれません。

「これはなんだろう?」と思わず立ち止まり、読みたい!と思ってもらえるような、そんなタイトルをつけられるようになりたいです。

もっと精進せねば。

タイトルに射抜かれた絵本「しんでくれた」の朗読を見つけたので、よかったらどうぞ。


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