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ソーシャルディスタンスとコミュニケーションスキルとの関係を、自分なりに考えてみた

ソーシャルディスタンスと言われてから、もう1年。

先日、こんな記事を見つけました。


パーソナルスペースの広さは、国や文化によって違うよ、という話です。

パーソナルスペースは、他人に近づかれると不快に感じる空間のこと。英語では、"personal bubble"ともいいます。人はだれしも自分のまわりに、目には見えない結界のようなものを張っています。

この記事によると、パーソナルスペースの広さには文化圏が影響しているらしい。2017年の “Journal of Cross-Cultural Psychology”に、ある研究結果が発表されています。

その研究は、42ヶ国で暮らす約9,000人を対象として行われたもの。その9,000人が、知らない人・知り合い・親しい友人と、それぞれどれくらいの距離を保てば快適と感じるか、を実験したそうです。

アルゼンチンやペルーなど南米に暮らす人は、知らない人と76cmの距離まで近づいて話をしても大丈夫だ、と感じたらしい。

新聞を広げたときの幅が約80cmなので、知らない人と76cmって結構近い。パーソナルスペース、狭いですよね。

東ヨーロッパのルーマニアで暮らす人は、知らない人とは1.4mの距離を取りたがったとのこと。

そのほか、ハンガリーやサウジアラビアに住む人も、ルーマニアの人と同様にパーソナルスペースを重んじていて、パーソナルスペースを広めにとる傾向、という結果が出たそうです。

日本はこの研究対象には含まれていませんが、日本人のパーソナルスペースはわりと広いんじゃないかな、とわたしは思っています。

国や文化のほか、気温もパーソナルスペースの広さに関係していることが、研究により分かっています。

この研究結果は、いまから約4年前のもの。

この1年、地球のあらゆる場所で、ソーシャルディスタンシングと言われ続けてきました。約2mのソーシャルディスタンスをとりましょう、と。

そう言われ、わたしは最初その距離感にとまどっていました。

そんなに離れないといけないの?って。

ご近所さんと道で会っても、お互いに意識して、距離をとって話さないといけない。レジに並ぶときは、店員さんがお客さんに、前後の人と距離をあけてください、と声かけする場面をよく目にしました。

ところが、“慣れ”とは恐ろしいもの。

ソーシャルディスタンシングと言われ続けて1年、いまでは、人との距離を自然にとれるようになった。これは、わたしだけでしょうか。

つまりこの1年で、わたしのパーソナルスペースは明らかに広くなった。

知らない人が近づいてくると、体のセンサーが敏感に反応するようになった気がします。これって、実は多くの人にあてはまるのでは、と思うんです。

ソーシャルディスタンシングという状況に慣れ、わたしたちのパーソナルスペースは広くなったんじゃないのかなって。

握手もハグもためらう。

知り合いを見かけても、声をかけるのをためらう。

知らないお年寄りが困っているのを目にしても、手助けしてもいいかどうかためらう。

この状況はまだしばらく続くし、人間には適応力があるから、この状態にどんどん慣れていくでしょう。

ソーシャルディスタンシングに慣れて、パーソナルスペースは広がってしまうのかもしれない。

個人的には、パーソナルスペースは心の距離と密接に関係していると思っています。ソーシャルディスタンスを保つ生活を今後も続けることで、心の距離に大きな影響を与えるんじゃないかな、と。

ソーシャルディスタンシング以降に出会った人同士は、お互いの心の距離を縮めるのが、以前よりも難しいのかもしれない。

あるいは、ソーシャルディスタンシングだから、本当に親しくなりたい人とはどうにかして近づこうと、コミュニケーションスキルがアップするのかもしれない。人間は本能的に、コミュニケーションを欲する生き物だもの。

ソーシャルディスタンスが必要なくなった、いまから何年か後の世のなかを想像してみる。

もしかするとその世のなかでは、コミュニケーションスキルが飛躍的に向上した人と、そうでない人とに、二分化されているのかもしれない。

ソーシャルディスタンスの名残りで人との距離を広く保っておきたいと思う人と、ソーシャルディスタンスの反動で濃密に近づきたいと思う人とに、二分化されているのかもしれない。

ソーシャルディスタンシングは、人の心の距離にどんな影響を与えるんだろう。

パーソナルスペースの実験をした研究チームに、”ソーシャルディスタンシングがパーソナルスペースに与えた影響”という研究を、何年か後にしてもらいたいくらいだ。

その結果が、人とのコミュニケーションを深めていけるような、コミュニケーションに希望を感じさせるような、そんなポジティブな結果であってほしい。切にそう願っている。

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