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格ゲー歴30年

どうも。格闘ゲーム歴約30年、帽子屋・お松です。

30年…。恐ろしい年数ですね。そんなにも長い間、波動拳だのヨガファイヤーだのやってるんだもの。もうリアルで出せてもおかしくない。

年月を経て変わったのは。

ゲーセンでやるのが当たり前だった対戦がオンラインに変わったこと。

「そんなん夢中でやってどうなるの?」「目が悪くなる」「頭が悪くなる」「無駄」と罵られたゲーマーがプロ化されたこと。

知る人ぞ知る、伝説的ゲーム上手いちゃんが、今じゃe-Sportsアスリート!

30年は世界が変わるに十分な年月だということ。

プロゲーマーを目指しちゃいませんが、昔と変わらずゲームはしてる。


初めて格ゲーに触れたのは、歴史的名作「ストリートファイターⅡ」

そのスーパーファミコン版。ゲーセンに行く勇気の無かったお松少年。

それはそれは夢中でやりましたさ。

最初の相棒はブランカ(体が緑のバケモノみたいなやつ。電気出すやつ。本名はジミー)理由は技が出しやすい。強い。

最初はキャラが動くだけで楽しかったけど、段々勝ちにこだわるようになっていきます。当時はネットも無かった時代。友達と対戦し、動きを読み、嫌がる行動を選択するようになっていきます。

ローリングアタック!ローリングアタック!ローリングアタック!投げ。

これ、めちゃ強い行動です。

ゲームは娯楽。勝てなきゃつまんない。対戦拒否が多発していきます。

身内に相手がいなくなった僕は、獲物を求めて禁断の地に出向くことを決めます。そう、ゲームセンター。

当時のゲーセンは今とは違い、殺伐につぐ殺伐。具体的に言うとケンカとカツアゲの温床。お父さんお母さんが心配する通りの場所でした。

しかし僕は、勝ちに飢えた僕の空腹は、そんな危険に蓋をする。


お小遣い支給日の夕方。若干背が高く、肉付きのいい学友と連れ立って、魔窟に乗り込んだ。

薄暗い照明、耳をつんざく音音音、窒息しそうなタバコの煙。また今度にしよう、そう言いかけた瞬間。

「波動拳!!!」いや、正しくは「はどゥお~けん!!!」

爆音の中、確かに聞こえた必殺技。↓↘→+P。ストⅡが、ある。

僕は誘われるまま、声のする方へ小走る。


いた。白い道着に赤いハチマキ。ストⅡの主人公、リュウだ。

波動拳を連発し、ザンギエフを苦しめている。


…変だな。違和感を感じた。だってそのリュウは、明らかに人がプレイしている動き。

よく見ると、向こうに人がいる。その人の動きと、こちらの画面のリュウは、リンクしている。

※説明すると、当時のゲーセンではまだ一台のマシンに隣同士に座って対戦することが普通(下の画像の台に隣同士で座ります。これ、かなり気まずい。狭いし肘とか当たるし、何よりプレイしてる他人の隣に座ることがもう無理。無理ゲー)

画像1


向かい合わせた2台を置いてるこのゲーセン、当時最先端の対戦推奨店。

※向かい合わせた状態でゲームが出来る。快適すぎる。

画像2


しばらくプレイを眺める僕に、学友が言う

「これ、こっち側でゲームしたらどうなるん?一人用?二人用?」

「どうなんやろ」

「やるんやんな?」

「やりたい、けど…邪魔すんなとか言われん?」

「わからん。やるんやったらやりぃや。やらんのなら早よ帰ろ」

「…やるわ」


ポケットから50円を取り出し、台に投入。

…カチャン。再び投入。…カチャン。入らない。何で?壊れてる?

「100円って書いてるで」

は?…よく見ると確かに「1PLAY ¥100」の文字。マジかよ無理やって1回100円って何やねんバカ儲けやんけ

「無いんちゃうん?」

「あるし」

入れた入れた即入れたありえんありえん小遣い消し飛んだ

「これ対戦やん!1P、2Pって書いてるもん!」

「ほんまや」

「ブランカブランカブランカ!」

「わかってるから!」

震える手でブランカを選ぶ。緊張もあるけど、ちゃうねん。ずっとスーファミでやってたから、コントローラーが違うねん。これ何か出っ張ってるんですけど!?レバーっていうんですか!?触ったことないんですけど!?

「始まったで!」

まずはローリングアタック!その次もローリングアタック!その次もローリングアタックじゃあ!

…出んし。こうやって…こう!違うって!パンチじゃないんよ!ウオー言うて飛んでけや!

あちらのリュウはジャンプした!ガードや!ボグヌ!当たってるし!

またジャンプ!ガードやて!ボグシュ!何で当たんねん!もうええわ!ガードいらん!攻撃や!とりあえず強攻撃!…どのボタンやねん!どれがどれじゃ!書いとけや!とりあえず押しまくれ!

典型的ガチャプレイ。向こうの人(20代くらいのヒョロい人。小学生やったけど、多分リアルなら勝てる)が、ちょっと笑った気がした。

バカにすんな!上手いから!家やったら絶対お前より上手いから!

しかし現実は、目の前の画面では、死ぬまでジャンプ攻撃を受け続けるだけの木人形(デク)。

まともにガード出来ず、ローリングアタック(ウオー!)は一度も聞けず。僕の100円は20秒もたずに、消えた。呆然とする僕に、学友が言う。

「…相手、上手かったな」

「上手ないし!勝てるし!」

「ボコボコやったやん」

「こんなん触ったことないもん!」

「帰ろや」

「…うん」


ゲーセンデビューは僕から自信と100円(現代換算で2万円)を奪った。

苦い苦い、今も鮮明に思い出せるほどに新鮮に重苦い体験。

二度とゲーセンなんか行かない。そう誓った。

しかし次の日

「1回30円でストⅡ出来る店あるで!」

30円!?

「どこどこどこどこにあるん!?」

「主婦の店(スーパーの名前です)の屋上!チャリで1時間くらい!」

…余裕!


それからの僕は、そこらの主婦よりも主婦の店に通い、1回30円のストⅡを死ぬほどプレイした。

絶対1個はボタンの効かない台で。右のスピーカーが壊れてて、端に行ったら無音になる台で。3回に1回くらい、コイン投入口から電気バチッ!を食らう台で。ブランカ→ダルシム→ガイルと浮気を繰り返しながら、ストⅡライフを満喫した。

対戦はというと。

ストⅡから始まった格ゲーブームで、対戦が当たり前になっていき、人口が増える。相手に困らないのは良かったけど。民度が。地域性もあいまって、どんどんカオスに。

いわゆる灰皿ソニック(向こうの台から灰皿が飛んでくる)は当たり前。

顔面パンチは日常茶飯事。横っ腹キックなんかで済めばラッキー。

ゲーセンの台は画面が斜めになっているんですが、向こうから滑り台のように滑り降り、そのまま顔面に蹴りもチラホラ。

それでも行ってしまう魅力が、当時のゲーセンにはあったわけですが。


そこで手に入れたものは、およそ中学生が持つようなものではない

「洞察力」と「接待力」

対戦相手がどの程度のヤンキー度か?人数は?

勝つとやばいな。「ハメんな!」と言われ、殴られる。

とはいえ、明らかに手を抜くと「ちゃんとやれや!」と殴られる。

ここは適度にいい勝負と見せかけ、最後にわざとスキを作って、いい気持ちで勝ってもらうのがベスト。

なんでそこまで?と思うかもしれないませんね。お金使って対戦してるのにって。知らんから言えるんよ。

相手を見誤り、圧勝してしまった学友は「泣くまでツバかけたるからな」と言われ、早めに泣いてたのにツバで涙が見えないせいで相手が「喉乾くわ!」と立ち去るまでジッとしてたんです。

そんなん見たことありますか!?相手と立ち回りを間違うと、そんな目に合うんだよ!?対戦ってのはそういうこと!


相手のクセを見抜き、ここでこう来るからこう技を受けて、体力を調整して、当てすぎない程度に技を当て、ミスをした!というのをわかりやすく提示。向こうに気持ちよくなってもらう。

そんなスキルが、当時のゲーマーには必須とされたんです。

同時に。

この時にこうすると、絶対当たるな。あ、今相手はこう動きたがってるな、とかが見抜けるようになるってことでもありました。

負ける技術は勝つ技術に直結していた。気付いたのは、そこから15年後。ストリートファイターⅣになってからでした。


そして今、ストリートファイターVがラストシーズンを迎えた。

ストリートファイターⅥもおそらく出るでしょう。絶対にやる。


格闘ゲームには、人生が詰まっている。そう言い切れます。


「たかがゲーム」から「e-Sports」へとある意味格上げされたゲームですが、僕はいつまでも「たかがゲーム」のまま、人生を学び続けようと思います。

台パン、怒号を上げながら。


ちゃっかり配信はしてるので、深夜ラジオのような気持ちで覗いてみてくださいな。

お松がゲーム配信