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喘息の話

 妻は絶対イヴである。私がアダムというわけではない。解熱鎮痛剤の話だ。イヴA錠を必ず仕事先に持って行く。他のではダメなんだそうだ。喘息を持っているので、下手に強い薬を使うと、アスピリン喘息を起こしやすい。それならイヴも危険ではないかと思うのだが、イヴは平気のようだ。
 人によってあうあわないもあるのだろう。北九州人は喘息持ちが多い。工場の街だからか。今は随分空気も綺麗になっているとは思うのだが。
 最近は花粉症や黄砂のせいもあってか、毎朝調子が悪いようである。寝ている時は空気清浄機があるので、それで大丈夫なようだが、空気清浄機から離れると、喘息の強い薬を吸引することになる。ステロイド系のやつだ。1日2回までと決まっている。心臓に負担がかかるのだ。
 10数年前に僕がホームセンターの店長をしていた時に、従業員がその薬を多用してトイレで亡くなったことがあった。喘息持ちで、調子が悪くて、ついつい使ってしまったのだろう。丁度僕が休みの日で、電話が掛かってきて呼び出された。最初、何を言っているのか理解不能だった。「シンパイテイシです」シンパイテイシ?心肺停止。
 救急車と警察が来て、現場検証が行われた。僕は病院に行ったが、既に亡くなっていた。
 喘息は恐ろしい。妻も何度か危ない時があった。1度、入院している。朝まで待って病院に連れて行ったが、救急車を呼ぶべきであった。一晩中苦しかったようであった。
 喘息は環境が変わると治るともいう。従妹が小さい頃、北九州から大阪に引っ越したら、喘息が治ったことがあった。不思議なものである。
 北九州の酒場で飲んでいると、むこうのほうで、飲んでいるいかつい男たちが盛り上がっていた。耳をそばだててみると、どうやら自分たちの喘息自慢をしているようだ。とにかく北九州人は喘息が多い。


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