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新兵器(ショートショート)

「警察官の拳銃による事件を未然に防ぐために、新しい銃を開発しました」
 警察庁の一室で、男が言った。確かに銃の盗難、紛失等の事件が年に何件かあり、滅多にはないが、その銃を使われて事件に発展することもある。
「この銃は殺傷能力はありません」
「では瞬時に相手を催眠状態にするとか」
 話を聞いていた警察幹部が質問した。
「そんなこともできません。人によってはそれで死に至ることもありえますからね」
「それでは使い物にならんではないか」
「いえいえ高性能の電波を発射して、相手のズボンとパンツをずり下ろします」
 ああやっぱりそっち方面か。少し下品な下ネタが増えているな、と警察幹部は思った。
「そういやな顔をせずに、実際現場で使ってみてはいかがですか」
 男は言った。男は警察や自衛隊に武器を都合するメーカーの社員である。
「しかしまて、相手が女性だった場合、後で、問題が起こるかもしれんぞ」
「そうでしょうか。銃を向けるほどの犯罪者じゃないですか。問題ないでしょう」
「ある意味、その銃が盗まれたら大変なことになるじゃあないか」
「ああなるほど、そういうことですか。大丈夫です。高性能の電波は男女を区別して男性にしか反応しないように細工をしますので、問題はありません」
「そこまでいうのなら一回使ってみるか」
 そういうことになって、一部の派出所にその拳銃は配布された。そしたら字数の都合で早速事件が起きた。
 派出所勤務の警官が3人現場に向かった。本署からも大勢現場に向かった。
 古いアパートの一角で、酔った男が、包丁を持って、1人のセーラー服を着た女性を羽交い絞めにして、何やら叫んでいた。
 本署から来た刑事が裏手に回って、隙あらば、突っ込んでいく準備ができた。警察隊のリーダーである署長は「今こそは」と派出所の警官に例の銃を相手目掛けて一斉に撃つように命じた。
「ズドン」「ズドン」「ズドン」
 3発の銃弾、といっても空砲で、特殊な電波が犯人に向かって撃たれたのである。
 ズボンとパンツがずり落ちて、犯人は狼狽したが、同時に拘束されていた女性も悲鳴を上げた。スカートとパンツがずり落ちたのである。
 後ろに回っていた刑事が犯人を捕まえた。女性は保護された。
「なんだ、女性には反応しないといっていたじゃないか」
 そういう署長に派出所の1人が言った。
「署長殿、銃は正確でありました。セーラー服を着た者もスカートとパンツをずらしたら、そのう、ないはずのものがあったのであります」
 

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