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クリームパン(ショートショート)

 巨大なクリームパンが大挙、地球に向かっていた。地球では早くもそれを察し、攻撃態勢を整えた。
 地球は船団に対し警告を行った。これ以上地球に近づくと攻撃すると。しかしクリームパンは言葉が通じないのかその警告を無視した。
 クリームパンの集団は、大気圏を突入して中に入ってきた。そしてUN本部のすぐそばの空中で止まり、一機のみ、そのまま着地した。地球側は警告は発したものの、攻撃はせずに様子を見た。
 地球は大パニックだ。異星人が攻めてきた。空はクリームパンで覆われた。
 クリームパンから異星人が出てきた。見た目は地球人と変わらない。早速国連事務総長とアメリカ大統領が会見することにした。言葉が通じないと思われていたが、彼らの持つ翻訳機が優秀で、すぐに地球の言葉を認識して、会話は成立した。
 彼らの狙いは地球の一部を租借することだった。
「これは侵略の第一歩であろう。決して租借など許してはならぬ」
 アメリカ大統領は強気で発言した。
「決して迷惑はかけません。宇宙の貿易の拠点にしたいのです。地球にも利益を与えます」
 宇宙人の使者はそういった。その言葉にアメリカ大統領は興味を示した。商売になるかどうかが課題だった。地球では議論が盛んになった。
「連中の狙いが地球の征服であれば、土地を租借するのは危険な行為だ」
「貿易は大いに魅力がある。全世界が潤うチャンスだ。もしも宇宙の大国が攻め入った時に貿易をしていれば、何かと便利だ」
 だがここで問題が起きた。彼らが乗ってきたクリームパンが真っ黒になっていた。どうやら蟻の大群が覆いつくしているようだ。蟻だけではない。ありとあらゆる動物が集まってきた。空を飛んでいるクリームパンには烏の大群が襲い掛かってきた。
 クリームパンは連中に食いつくされていった。
 クリームパンは本当にクリームパンだった。これで宇宙を飛び回っていたのが、信じられない。
 クリームパンで飛べるものはみな宇宙へ逃げていった。使者は取り残された。
 後日、パン屋で巨大なクリームパンを作り、使者は感謝して、宇宙へ去っていった。

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