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古い映画館(ショートショート)

 昔の映画館は映画が始まる前にアイスクリーム屋が中に入ってきて、アイスクリームを売りながら練り歩いていた。映画館の売店ではあんぱんとか売っていた。ポップコーンはなかったような気がするが、定かではない。映画が終ると、売店のそばで、真珠のくじ引きがあって、当たると真珠が貰えるはずなのだが、ネックレスもコミで買わないと貰えないようになっていた。サギまがいの商売であるが、アベックなんかは、男がついつい女に買ってやったりするのである。
 近頃は大きなショッピングモールとかのなかに映画館ができて、そっちのほうが主流になってしまって、街の映画館は次々となくなっていった。それでも一部、今でも頑張っている映画館はあり、細々と営業している。
 俺は暇を待てあまし街を歩いていたら、丁度そんな小さな映画館を見つけたので、入ってみる気になった。ずいぶん昔の洋画をやっているようだ。タイトルに覚えはないので、知る人ぞ知る映画なのだろう。俺はチケットを買って中に入ってみれば、白黒映画だった。既に映画は始まっていたが、初めのほうのようだった。他に客はいなかった。俺一人だ。
 イングリッドバーグマン似の女優が何かを叫びながら、男に向けて、拳銃を向けた。女はチラリと俺の方を見たような気がした。その瞬間、ズドンと音がして、男が倒れた。男の腹からおびただしい鮮血が噴出してきた。白黒映画のくせになぜか血は赤かった。
 男は何と次の瞬間、銀幕の中から映画館の客席に倒れこんだ。俺はびっくりして、そのまま映画館を逃げるようにして出た。
 そしたらそこは既にさっきまで歩いていた街ではなく、古いマンハッタンかどこかの風景だった。
”RUN  AWAY” 突然さっきの女優が横から出てきて、逃げろといった。女優は既にカラーだった。俺は女と一緒に逃げた。なぜ逃げるのかわからないが逃げた。
 どうしてこんな目にあっているのかさっぱりわからなかった。女は銃を持っていた。そのうち警察のサイレンが響き渡ってきた。いったいどうなるんだろう、俺。
 警察に俺と女は見つかった。銃撃戦になった。女はすぐに撃たれて死に絶えた。俺は両手を上げて降参の仕草をしたが、甘くなかった。銃弾がいくつも俺の体に刺さり血が噴き出してきた。そしてそのままあおむけに倒れた。警官が俺のそばにより、わき腹を蹴った。生死を確認したかったのだろう。そして何か英語でいったが、字幕がないのでわからなかった。
 

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