軽部謙介『ドキュメント 強権の経済政策――官僚たちのアベノミクス2』読んだら精神を病んだ

先日の軽部アベノミクス本の続きです。

前篇はこちら。

軽部氏のアベノミクスまとめ本第2弾は新型コロナによる緊急事態宣言が解除されたころに出版されている。いくつか興味深いところがあったのでまずはそれらに言及する。

前作の終章で、かつて日銀の独立性や通貨の信認をめぐって政府とやりあってきた日銀OBと、政府(というか官邸)と協調して仕事をする現役日銀マンの温度差について触れられていた。
本作のプロローグでも同様に財政均衡にこだわる財務省・大蔵省OBと、政権に忖度しがちな現役官僚の世代間隔絶に触れられている。それに対して財務省が凋落したのはあなたたちのせいではないかという現役の声が載せられていてうける。

第2章は忖度のもととなったとも言われる内閣人事局についてで、面白かったけど省略。「法が整備されて透明性があるだけまだまし」、「官邸が強いければどうやっても介入してくる、官邸が弱ければ他の自民党の議員が介入してくるだけ」、「90年代後半に始まった官邸主導の仕上げと見るべき」といったようなことが書かれていて、まあそうなんだろうなと思った。

第1章は非常に話題になった政権の賃上げ介入なのだが、当初のアベノミクスには賃上げがビルトインされていないこと、賃上げがないとデフレ脱却できないこと、労組の協力なくして賃上げは動き出さないことを官僚らがよく理解していたことにやや驚いた。

第3章で賃上げ介入をめぐる具体的な攻防の記述になる。すごく雑にまとめると、経産省は復興特別法人税廃止の前倒しで企業を後押ししようとした。また財務省に対しては、翌年に控えていた消費税増税と復興特別法人税廃止の前倒しをバーターにしようとしていた。それぞれに立場があるからこういう落とし所になるんだなあと思ったのであった。
またアベノミクスに批判的だった自称ケインジアンの吉川洋をなんとかチームの座長にすえて賃上げを促そうとしたのも興味深い。

第4章は、そういういきさつがあって消費税が8%に増税されたあと。増税の破壊的な影響が明らかとなり、再増税延期へと官邸が傾いていく時期についてである。

ここで久しぶりに怒りが爆発してしまい、筆が乱れてしまったので以下有料にします。

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