【実話怪談】『お荷物』&『ホス狂い』
『お荷物』
中嶋さんが荷物を預けようと某ターミナル駅のコインロッカーの取っ手に指をかけた瞬間、真っ黒焦げになった赤ん坊が顔を外側に向けた状態で、ぴっちりと二つ折りにされてロッカーにしまわれている鮮明でリアルな映像が頭の中にパッと浮かんだ。
胸のざわめきを抑えながら扉を開けたが、中は空だった。
中嶋さんの妊娠が確認されたのはその次の日で、相手は不倫関係にあった妻子持ちの、会社の上司だった。
堕胎を即決したそうだ。
『ホス狂い』
とある日、デリヘル嬢の坂下さんは、歌舞伎町にあるお店の待機所へと徒歩で向かっている道中、
「風邪をひいたときの一億倍くらいかな?」
という体感の、とてつもない悪寒に突然襲われ、その場にしゃがみこんでしまった。
ガタガタと震えが止まらない。何かの病気か。最初はそう思ったが、霊感のある坂下さんはそうではないとすぐに思い直した。
今しゃがみこんでいる場所が、自殺の名所として有名なラブホテルの前だと気づいたからだ。
「私はお前らみたいなぬるい覚悟でホス狂いやってねぇんだよ!悲劇のヒロインぶるな!キモいんだよ!」
必死に心の中で坂下さんはそう叫んだ。すると嘘のように悪寒は治まった。
「担当に貢ぐのが私の生きがい!今日も稼ぐぞ!」
そう気合いを入れ直し、その日も元気に出勤したそうだ。
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