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【オンラインショップ更新】特集 エルサ・ベスコフ

こんにちは!

古本とがらくた paquet.オンラインショップ更新のお知らせです。

商品はすでにショップに掲載されていますが、購入可能になるのは今夜21時です。

今回は日本でも人気の高いスウェーデン出身の作家、Elsa Beskow(エルサ・ベスコフ)を特集します。

1874年にストックホルムで生まれ、小学校の美術教師を経て絵本作家となった彼女は、6人の子どもを育てながら約40冊もの絵本を出版しました。
イラストレーターとしても活躍した彼女の代表作である可憐なお花の妖精の絵は、彼女の死後もたくさんの企業とコラボレーションしたグッズが発売されつづけているので、絵本をしらなくても絵を見たことがある、という方も多いかもしれません。

わたしは彼女の絵本作品が好きで、邦訳版が出ているものはほとんど読んでいると思うのですが、とくに好きな点をひとつ挙げるなら、北欧らしい豊かな自然を舞台とした素朴(というよりナチュラルな雰囲気の)ファンタジーであるところ。
彼女の作品には妖精や小人、トロルなど、現実の世界にいないいきものがよく登場するのですが、よい意味で“おとぎ話感”みたいなものがないというか……自分が子どものとき実際にしていた空想みたいなナチュラルさで彼らがそこにいる感じがするところがたまらなく好きです。

今回はベスコフらしい魅力にあふれた5冊の絵本をお届けします。
最後の1冊は洋書ですが、邦訳版とは表紙のデザインがちがうのでコレクターの方にはきっとときめいてもらえると思います。

それでは紹介していきます!

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「ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん」

 おのでら ゆりこ 訳

1977年5月25日 福音館書店 発行


スウェーデンでは1901年に出版された、ベスコフの初期のころの作品です。

主人公の「プッテ」はおかあさんの誕生日にブルーベリーとこけももを贈りたくて、森へ探しにでかけます。見つからなくて泣いていると小人があらわれて、プッテを「ブルーベリーもり」へ誘います。小人がくちぶえでりすを呼べば、かわいいぼうけんのはじまりはじまり。プッテは無事に贈り物を手に入れることができるのでしょうか。

金のショートヘアに赤いぼうしをかぶり、しましまの服を着たプッテ。プッテはブルーベリーもりで「おとこのこ」にも「おんなのこ」にも出会いますが、プッテ自身の性別はどこにも書いていないところがわたしは気に入っています。男の子も女の子も、そのどちらでもない子も、思い思いにたのしめるということだから。

来年で出版から120年。母校で美術を教え、6人の子のおかあさんだったベスコフがどんなふうに子どもの空想をとらえていたかわかる気がするやさしい雰囲気の作品です。


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「もりのこびとたち」
 
おおつか ゆうぞう 訳

1981年5月20日 福音館書店 発行

おおきな岩のむこうからこちらを見ているのは森に住む小人の子どもたち。
この絵本には、赤地に白い点のある、きのこみたいなぼうしをかぶった彼らの一年が描かれています。

見どころは、そのうらやましいくらいの、ゆたかな暮らしぶり!
森には動物の友達がたくさんいるし、ユニークなできごともいろいろおこります。みんなで協力して冬仕度をし、たき火をして春を待ちます。読者はかわいらしい小人の家族といっしょに森の暮らしを体験することができます。

ネタばれは避けますが、ベスコフはこのお話の最後にあるしかけを用意しています。
わたしたちがずっとたのしい森でいっしょに暮らせるようにするしかけです。
未読の方はぜひこの機会に読んでみてください。
彼女ならではのナチュラルなファンタジーの世界に入り込める、個人的にいちばん好きなベスコフ作品です。


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「ペレのあたらしいふく」

おのでら ゆりこ 訳

1976年2月3日 福音館書店 発行


ずぼんを履こうとしているペレ、窓のむこうにはきれいな緑の風景と、ペレを見つめる一匹のこひつじ。ロマンティックな空色の表紙のこの絵本はベスコフ作品のなかでもとくに有名な一冊ですが、彼女が遺した多くのおとぎ話とは少し毛色がちがいます。

あたらしい上着が欲しいペレは、自分で育てたこひつじの毛を刈りとっておばあちゃんのところへ行き、毛を梳いてくれるように頼みます。もちろんただでは請け負ってもらえません。ペレは毛を梳いてもらうかわりににんじんばたけの草とりをします。
ペレはその調子であたらしい服の材料を持っていろいろな大人をたずね歩き、言いつけられた仕事をするかわりに服作りの一工程ずつをやってもらい、すてきな上着を仕立てあげます。

ペレがえらいのは、自分でできることは自分でやり、できないことだけをそれができるだれかに、労働という対価を払ってやってもらっているところ。

あたらしい上着をつくるために「はたらく」ようすを描いたこの絵本は、まだ自分ではたらいて何かを得た経験のない子どもたちにどんなふうに映るのでしょうか。

また、大人が読んだら──仕事観は人によってちがうので一概にはいえませんが、なにかと悩みがちなわたしは、はたらくことは本来とてもシンプルなものだったな、と思いました。欲しいものを手に入れるためにはたらく、それだけでひとまずオーケー。多くの人に響く、きびしくやさしい作品だと思います。


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「おりこうなアニカ」

いしい としこ
 訳

1985年5月30日 福音館書店 発行

次は、スウェーデンで1941年に出版された、ベスコフの絵本のなかでは比較的後期の作品です。
(実はここまで本国での出版順にならべて紹介してきました。ファンの方には気づいてもらえていると嬉しいな〜。)

ベスコフは子どもの空想を描く作風でしられていますが、本作も彼女らしい魅力がぎゅっとつまった本当にすてきな作品です。絵本に限らず、古典となっているような作品や作家について考えるときいつも思うのは、戦争があり(ベスコフの生きたスウェーデンは第一次、第二次世界大戦下でも中立を保ち、1815年のナポレオン戦争終戦から現在まで一度も戦争をしていないことをここに記しておきます。)とくに女性には今ほどの自由も選択肢もなかったであろう激動の時代に自分の描きたいものを貫くことはどれくらいむずかしかったのだろう、ということ。同時に、彼らはわたしには想像もつかないほどの切実さで、みずからの表現を心の拠りどころにしていたのだろうなあとも思います。

なんだか重くなってしまいましたが、「おりこうなアニカ」は人と動物と小人が対等に心を通わせあうようすを描いた本当に軽やかでかわいらしい作品です!
無条件に愛された子どもは他者にやさしくすることができるという理想を、けっして押し付けがましくなく、かわいい物語にして世に送り出したエルサ・ベスコフの仕事には拍手を贈りたくなります。

わたしたちのいる世界には未解決の問題が無数にあり、枠におさまらない悲しみだって依然としてあるし、理想を語ればきれいごとだっていわれるかもしれないけれど、絵本にさえしあわせな子どもを描けなくなれば本当におしまいだと思う。ベスコフをはじめとする世界中のすぐれた作家たちの作品が時を超えてその役割を担いつづけてくれていること、その読者たちが大人になって、さまざまなかたちでその役割を引き継いでいくこと。
それは、たとえばわたしが古本屋さんになって、こうして絵本をだれかに手渡していくということです。作り手にくらべたらスケールとしてははるかに小さいのかもしれないけれど、これがわたしにできる少し先の世界を僅かにでもあかるくするための行動だと思います。

さて!最後は先週に引き続き洋書を紹介します。英語が読めなくても目でたのしめる、絵本って本当にすてきです。

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「The Flower's Festival」

 
1991年 Floris Books(イギリス)発行



スウェーデンでの初版発行は1914年、日本では「リーサの庭の花まつり」という題で翻訳出版されているベスコフの代表的な作品です。

夏が短く、キリスト教徒が多く住む北欧諸国では、夏至を「移動祝祭日」として盛大に祝う習慣があります。
本作は夏至まつりを舞台に、主人公リーサの庭に咲くたくさんのお花が妖精のすがたとなって登場するファンタジックなストーリー。
物語に添えられたうつくしい詩の調べにスウェーデンのゆたかな自然を思います。

邦訳版もすばらしいのですが、英語版は表紙のデザインがちがううえに、背表紙が黄色の布張り!
背表紙には題字とスコットランドの出版社、Floris Booksの鳥のマークがスタンプされています。本好きの方にはときめく仕様なのではないでしょうか。
ずっと本棚に飾っておきたくなる一冊です。

今回はオンラインショップをはじめたらやりたいと思っていた作家ごとの特集の第一弾として、エルサ・ベスコフの作品を紹介しました。
少しでも気になっていただけたらしあわせです。

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