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いい本でした。「あなたの話はなぜ『通じない』のか」

前書きを読んで店主はガッカリしました。「なんだ、以前に読んだ本と全く同じ内容じゃないか」。著者山田ズーニー氏の中で2番目に評価が高い本、「あなたの話はなぜ『通じない』のか」の前書きは、以前読んだ『話すチカラをつくる本』とほぼほぼ同じ内容でスタートしました。

しかし、そこは粘り強い店主です。苦しい古書店業界にへばりついて生きてきた自負がある。前書きが面白くないというだけで、本を放り出すわけがありません。そのまま徳川埋蔵金を探す糸井重里氏の如く読書を進めることにしました。

すると、さっそく第一章で「おお!?少し面白いかも」と好感触。整った文章に惹きつけられました。そして運命の第二章に突入します。読書のスピードと納得感が加速したまま、この本の最大の見せ場である「意見となぜ」の紹介となりました。

つまり、自分がいちばん言いたいこと(=意見)をはっきりさせ、なぜそう言えるか(=理由)を筋道立てて説明していく。ゴールは相手に「なるほど!」と思ってもらうこと、つまり「説得」だ。
「意見となぜ」は、論理的なコミュニケーションの大原則だ!

ここで試しに店主は「テニス部の指導で自分が伝えたいこと」を考え、それを「意見となぜ」を使って脳内で説明してみました。すると、日常の指導で使っている言葉より、わかりやすい説明ができました。これは面白い!言葉の枠組みを意識するだけで、伝え方って変わるのか!

そして、さらに「考える」ということについて書いてありました。考えるということは「問い」を立てることで、沢山の「問い」を立てると沢山の「考える」ができる。さらに、「問い」を10個立てるならば、簡単な質問を前に置き、抽象度が高い質問を後に回すことで、よりいい答えが生まれやすくなるのだという。これにも首を縦に振りました。

さらにもう1つ。「問いスクラップ」というものが紹介されました。それは、自分が面白いと感じた記事をよく読んで、「どんな問いによって書かれた文章なのか?」を考えるというものです。そして、もし問いが書かれていなかったら、意見から逆算して推測する。この発想も面白い!こんなことは試したことがないし、やれば確実に考える力が身につきそうです。

という感じで、この本は本当に面白かった。山田ズーニー氏と言えば、「伝わる・揺さぶる! 文章を書く」という本が有名です。そして2番目に有名なのがこちらの本。評判はダテじゃなかった。

ここで俯瞰して考えます。店主が以前読んだズーニー氏の埋もれた別の本と重複した部分があったにも関わらず、こちらの本の方が面白かったし勉強になりました。これが何故かと考えると、これこそが編集者やレーベルの力の差というものなのかもしれません。ちくま文庫って割と人気ですよね。読んでよかったので、多くの方にこの本をすすめたいと思います。



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