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夏物語

夏物語
著者 川上未映子

主人公 夏目夏子
姉巻子
姉の娘緑子
夏子の周囲の人々

※ネタバレを含みます。



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苦労して育った小説家志望の30代の夏子が主人公。パートナーなしの妊娠、出産を選ぼうとする夏子の物語。

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※カトリックを信仰していて、娘がいるという父親視点からの説教臭いし前衛的な主人公の在り方に共感できない保守的な感想になる。

※以下ネタバレを含みます。


📝
満たされず生きてきた夏子
セックスしたいとは思えず、けれども愛を渇望していたのか。

30代で自己中、傲慢ってどうなんだ?
作品の中ではえらい苦労して育ったという設定の割に大人になりきれていない主人公。

汗水垂らして明日生きることに必死だったら、大方報われないことが当たり前で何とかそれでも自分を納得させて、現実に身をすり合わせて生活するようになるのでは?正直言って、主人公がかなり自己中心的に見えてしまい、夏子は30代後半だから40年近くモラトリアムな生き方をしてきているかのような人物にも見えた。そんな主人公に対して、あまりにも賛同し難く、何度も反吐が出そうなくらいに嫌気がさしてきて、読むのを何度も中断した。

著者自身フェミニストとされているが、フェミと子どもの出生のあり方を混在するのはとても難しいと感じる。
フェミは自身の在り方でしょ?
子どもの人生は、親の人生ではない。

けれども、この作品読んでいると、女性としての自身の在り方と、子どもの出生の在り方を混在させているから、とても受け入れ難い何かがあった。
かと言って、切り離すこともできない。

子どもは親を選べない。
親は子どもを選ぶわけ?

は?!

俺は、親が子どもの出生や育成環境をただ、ほしいからといった綺麗事のような形で選ぶといった考え方に賛同出来ない。自分の娘には俺と妻とそこに関わる人々全てと苦楽を共にしながら成長してほしいし、家族みんながそうして成長しあっていきたい。

そもそも、主人公は母に「なった」のではなくて、これから子どもと共に母に「なってゆく」わけだが、その「日常」に「父」が居ない可能性を選んだに等しく見える。家族というのは日常であって、特別なイベントではない。泥臭いのが当たり前で、売れ始めた中年女作家が、シングルマザーを決意して妊娠してみました的な絵空事のようなサラサラしたものではないし、子孫を残すというのは、ある種、人間の最大の使命のひとつのようなものでもある。そして人間は社会と関わりながら生きていく。その社会の一番基礎的な部分が「家族」だろう。子どもは女性ひとりでは産めない。そこには必ず父親という役割を果たさなければならない家族の一員がいるのが家族構成の基本だ。両親の勝手なエゴによって、子どもからどちらかを排除したような歪な家族構成を、生まれてくる時から決めてしまうのはあまりにも、傲慢に感じる。

様々な事情があって子どもを持てない方々からは非難されるだろうけれど、やはり、我が子は無条件で可愛い。そこに理屈などないし、恐らくその愛は萎む事なく永遠のものだ。親になってそう実感している。

万が一、あり得ないが、遺伝的に俺と繋がっていなかったとしても、俺は無条件でもう愛してしまっている。とにかく、理屈なんてない。

子どもは神さまからの贈りもの。
俺はクリスチャンだから、そう信じる。

ひとりの家族の人生を身勝手な傲慢さで決定付けるのはあってはならない。

パーフェクトな家庭でなくて当たり前だ。
未完成でドタバタ劇場で、でも他人からしてみたらどうってことのない平凡な、そんな普通の家庭を俺は望む。

突拍子もなく劇的でドラマチックな展開の連続のような家庭やら人生は本や映画だけで充分で、つまらない平々凡々な、うだつの上がらない父親と不満げな母親と、テレビやら何やらをぼけっと見て、ご飯を食べ、また同じような明日を生きる。
そういうので俺は充分だな。

パートナーのいない方々や夏子と同じ考えの方には申し訳ないが、愛を渇望したらやっぱセックスしたいってのが俺はあるし、妻もそうだし、それ以外受け付けられない。

たしかに俺の考え方は家族の在り方の多様性に寛容ではない。

父親がいて、母親がいて、子どもがいる。
足りないものをお互いに補い合って生きたい。

男には男の役割があるし、女には女の役割があると思うから、俺は多分フェミニストからは嫌われるかもしれないし、ましてや家族は助け合ってなんぼでしょ?

最後の決断も親のエゴの押し付けやん。
くだらねーなと思いながらも何しろ、色々考えた。

とにかく、過程はどうであれ、我が子は可愛い。
過程なんて関係ない。それは確かだし、我が子の出産には出来ることなら立ち会った方が良い。理屈抜きに、可愛いし、しつこいが、家族ってのは助け合って生きている。

ひとりで生きて死んでいくのもその人の生き方だろうけれど。夏子のようにエゴの強い人はひとりで生きていく覚悟しているのだろうけれど、そこに子どもを巻き込むのは論外だと俺は強く不快感を読んでいて感じた。

願わくば、夏子と子どもが、子どもの父親とともに笑いあり、涙あり、時には喧嘩あり、家族賑やかに平々凡々と暮らせてくれたら良いなと想う。

そして、その平々凡々な生活というのは、計り知れないほど大切で尊い。

色々と思うところのある小説だった。

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